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作付けと収穫と

「「「「できたぁ!」」」」


「おぉ!よく肥えた土だと言うことが分かりますぞ!以前のものは畑に非ず。これぞ畑!儂の領地の畑よりも立派に見える!」


ストルネ殿・・・感動してるなぁ・・・。ここまで皆で頑張ってきたし、その結果として小さくても、畝を四本作った栄養豊富な黒土の畑ができあがった。4米四方であっても、収穫量は以前のモノとは比べものにならないと思う。ここからが始まり!沢山作って、当座の食糧確保だ!


『「pHノチョウセイモウマクイッテイマス アルフレッドサマノマホウモヨクナジンデイマスネ コレナラアト サンジカンホドデシュウカクガデキルデショウ」』


「へぇ!そんなことまで分かるんだ。ぺーはーと言うのは余り分からないけれど、収穫までの時間が分かるのは良いね!」


「「まてまてまてぇい!」」


「どうしたの?ストルネ殿にプルーナさん?」


「またやりましたよ・・・アルフレッド様」


「非常識アルの再登場じゃな」


「収穫まで3時間とは・・・普通は・・・」


「季節をまたいでの収穫になるからのぅ・・・あり得ないことなのじゃ」


「えぇ。まったく」


「そこ!聞こえてるよ!大体、成長魔法を使ったんだから当たり前でしょ?」


「いやいやいや!アルフレッド殿!普通はここまでいきますまい!」


「そうだよ!普通は少し美味しくなるとか、実が大きくなるとかくらいだよ?それが・・・日数の短縮なんて聞いたことがない!」


『「サラナルタンシュクモカノウデスヨ」』


「「へっ?」」


プルーナさんとストルネ殿・・・同じ顔だ。本当に親子じゃないのって位反応が似ているよ・・・思わず笑いかけたら、カレンに肘でつつかれてしまった・・・面目ない。


「それで、時間の短縮はどうするの?」


『「アルフレッドサマノ チユマホウヲ ハタケニカケテイタダケレバ ヂリキヲイヤシナガラセイチョウノソクシンガカノウデス」』


「なるほど!」


「土に治癒魔法なぞ考えもつかなかったのぅ!素晴らしいことなのじゃ!」


「なぜです?」


「戦時中の治癒魔法士は、溢れんばかりの仕事が有るのは分かるな?カレン」


「ええ。外傷を負う者が多いですからね。ですが・・・あぁ。平時は───」


「そう。仕事が少なくなる。治癒魔法は怪我に効くが、風邪などには悪手となる。そのため、平時に活躍するのは専ら薬師達となる。戦時中の両者は協力体制をとるが、平時ともなると治癒魔法士の仕事はなくなってしまうからのう」


「なるほど。治癒魔法士の授産となると言うことですね」


「その通りじゃ。これは良いことを教えてもらったのじゃ!」


『「エレンサマ オヨロコビノトコロ ミズヲサスヨウデモウシワケナイノデスガ」』


「なんじゃ?藪から棒に」


『「アルフレッドサマ ドウヨウノマリョクガナケレバフカノウニチカイノデス」』


「なぬ!それは真か」


『「ハイ マリョクガスクナイモノガジッコウシマスト ダイチニチカラガスイトラレマス マタ

コノスキルニヨッテ トチノヒロサモセイゲンデキマスガ タノトチハ ヒロサノセイゲンガナサレテオリマセンノデ サイアクハ 」』


「大地に術者の魔力を吸い取られ、潰えると」


『「ハイ」』


「むぅ・・・」





「ふぅ。さんちゃん終わったよ。どうしたのエレン?そんな難しい顔をして・・・」


「ん?あぁ。夢中になって聞いておらんかったのか。実は────」




「へぇぇ!成る程ね。それは面白いよ。確かに治癒魔法を使ってたら、有る一定の広さまでしか魔法が広がらなかったのはそう言うことだったんだ・・・それならさ。魔道具作るよ」


「なぬ!」


「なんと!魔道具を作ることも可能か!であれば────」


「ストルネ殿。些か欲張りかと。貴方様はアルフレッド様の客将です。お立場を弁えていただきたく」


「・・・これは失礼した。カレン殿の仰る通りだ」


「・・・まぁまぁ。確かに今は、この国の課題が最優先であることは当然なんだけど。今はストルネ殿達も我が国の国民・・・国籍は違うけど・・・だからさ。カレンも堅いこと言わないの」


「・・・出過ぎた真似を。申し訳ありません」


「大丈夫。カレンなりにこの国を思ってのことだからさ。責めたりなんかしないさ」


「ありがとうございます」


「それで?ストルネ殿は何を?参考までに聞かせてはいただけないかな」


「───ご厚意痛み入る。実は時々魔力を抑えられない子どもが産まれてくることが有ってな。それ故に、魔力を制御する魔道具があれば、暴発による不幸を減らすことができると考え・・・」


「なるほど。本国に行けば沢山有るから今度融通できるか聞いてみるよ!」


「なんと!それは───」


「ただし!」


「──?なんでしょう」


「改造と分解の禁止と子どもへの魔法教育の徹底。これらを国同士でお約束できるのなら。融通いたしますよ」


「それは勿論!国に戻ることが叶いましたら是非に!」


「・・・ねぇねぇ提督」


「なんだ?」


「アルくんってさ・・・何者?」


「へっ?ストルネ殿?」


「!あぁ!ついうっかりしておった!アルフレッド殿は、アルベロ王国の第一王子だ」


「ふぅぅん・・・え゛っ!」


ギギギと錆びた音を立てていそうな雰囲気でこちらに顔を向けるプルーナさん。もしかしなくても私の身分を知らなかったらしい。


「まぁ。アルを知らなくても無理はない。宮殿から殆どでんからのう」


「うわぁ・・・アタシ・・・失礼な態度取りすぎ・・・」


「うぅん・・・自然体で居てくれたから話しやすいし・・・そのままで良いよ?」


「うぅうぅ・・・酷いよていとくぅ」


「すまんすまん。申し訳なかった」


「くすん・・・」


少しばつが悪そうなストルネ殿と涙目のプルーナ。ん?プルーナさんの目が変わった・・・?


「北方連邦国海軍第一司令部所属。海軍中佐プルーナ・アルマンド。アルフレッド殿下への数々の御無礼。平にご容赦を」


今までの雰囲気をがらりと変え、直立不動の敬礼で謝罪をするプルーナさん。怜悧な雰囲気。艦の上だとキリッとしているんだなぁ・・・。こちも答えないと。


「アルベロ王国第一王子。アルフレッド・ディ=アルベロ。アルマンド中佐の謝罪を受け取った。貴女は今までの接し方で良い。この島にいる内は、私のことを友と思っていただいて構わない。・・・さぁ。堅苦しいのは終わり。今までのように接してくれれば良いよ。ね?」


「アルフレッド様が宜しければ、何も言うことはございません」


「右に同じくじゃ。まっ・・・今更感が強いからのう」


「・・・あ゛りがどうぅ・・・」


「いやぁすまなかったのぅ。はっはっは!」


「笑い事じゃないよぅ!」


「「「「あはははは!」」」」


『「ゴカンダンチュウモウシワケアリマセン バレイショノシュウカクガ カノウトナリマシタ」』


「おぉ!」


「「だから早いって!」」


「「まぁアルフレッドアルだから」」


「ははは・・・早速掘ってみよう」









「この量は流石に驚きだ・・・」


採れた量は何と60瓩程。こんな狭い範囲でこの量はあり得ないよ!さんちゃん曰く、肥料の力以上に植物魔法と治癒魔法がよく効いたこと。何より、§私の領地§と言うことが大きく働いたらしい。

これなら───。


「なぁんか、掘るのに時間がかかったね・・・アルくん」


「はい。できるのはあっという間でしたので・・・正直掘るのに疲れました・・・アルフレッド様」


「アルよ。これはちとやり過ぎじゃぁないかのぅ」


「いやぁ・・・良い運動になりました」


「あはは・・・流石の私も予想外・・・時刻も17時を過ぎる頃だし・・・夕食にこの馬鈴薯を振る舞おう!」


カレン達がもらってきた籠に馬鈴薯を詰め、エレンに重力操作をしてもらい、皆で畑を後にする。ストルネ殿は、訓練になるからと言って、エレンの魔法を使わずに1人で20瓩の籠を担いでいた・・・私としてはそんなストルネ殿に驚いてしまったけれど・・・。


これで、皆さんの顔に少しでも笑顔が戻ればいいな。

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