土地改良③
「うん。しっかり洗い落とせたと思うから焼きと乾燥、粉砕の作業に移ろう」
そう言うとテキパキと薪の準備をするプルーナさんとストルネ殿。あぁ・・・魔法を使うことを言いそびれたか・・・。
「2人とも大丈夫ですよ。魔法で終わらせてしまうので」
「なんと!水と風だけで無く火も使えるとは!」
そっか・・・普人族はあまり多くの種類を使えないんだっけか・・・いけないいけない。
でも、今回は魔法じゃないんだよね。
「ストルネ殿。今回は魔法は使いません。まぁ魔法に似たものは使いますが・・・」
「ほぉ!それはどのようなものを」
「魔法じゃないの!?気になる!」
「何を使うのじゃ?」
「まぁ・・・そこまで派手じゃないから期待しないでね?カレン。紙と筆と墨を」
「畏まりました」
そう言って鞄から取り出して貰ったのは、少し強ついた茶色身を帯びる紙と、ブラッドホースと呼ばれる獣の毛で作られた筆。それに光の具合によって七色に光る墨。
カレン以外の3人は不思議な顔をしてるけど・・・エレンには見せた筈なんだよなぁ・・・。
「エレンには見せたことなかった?」
「見た覚えはある。しかし───」
「あぁ・・・うん。言わんとしていることはわかるけど・・・言わないでね?」
「うむ」
「なになに!気になるじゃん!教えてよ」
「こら。プルーナ。目の前で行っていただくのだ。静かにしていなさい」
「むぅぅ」
あはは・・・そこまで期待されるとなぁ・・・申し訳ないな・・・。っと。作業しないと。紙の中心に〖燥〗の字を書いてっと。周りには・・・右回りに〖重〗で重さを〖小〗で大きさを〖廿〗で量を
〖瞬〗で時間を〖固〗で纏まりを。最後に〖涼〗で温度を決めて、線で結んでできあがり。
さぁ久々にやったけど上手くいくかな?
「・・・これは?」
「あぁ!青の勇者様に教・・・んんっ青の勇者様が残した文献を基に作り上げた魔法陣ですよ」
「おぉ!そのようなものが!して。どの位で終わるので?」
「えぇっと・・・あっ!いけない!持ってきてもらったものを置き忘れてる・・・エレン!魔法で載せてもらって良い?」
「分かったのじゃ。しかし、数はどうするのじゃ?」
「数は持ってきてもらった籠全部載せていいよ!」
「あいわかった」
改めてみると結構な量だよなぁ・・・。
「終わったのじゃ」
「ありがとう!」
これで・・・おっ!反応した!失敗して無くて良かった・・・。
「ん?少し光ったように見えたのだが・・・」
「ねーねー!アルくん。もしかしてこれで終わり?」
「・・・うっ・・・うん」
「なんていうか。地味。だね」
「こりゃ!プルーナ」
「あはは・・・本当のことなので。でも、これのお陰で作業効率が上がるのは確かなのですよ。その証拠に籠の中を見てください」
全員で積み重ねられた13個の籠を見に行くと───
「おぉー!」「なにこれ?」
それぞれの籠の中には20個の小さな固形物が存在した。
「あちゃぁ・・・思ったより大きかった・・・。字を間違えたかなぁ。でも、籠から出るよりかはいいかな」
「これは凄い!あの墨と記号にこの様な力があるとは・・・いやはや恐れ入った」
「本当は粉にしたかったのですが・・・」
「これ以上に細かくできるので!?」
「はい」
「ほぉ・・・それは素晴らしい」
「そんなに凄いの?」
「これがあれば、小麦粉を作るのに大きな風車が要らなくなる!」
「それはすごい!凄いよ提督!らくちんだよ!風頼みにならなくて済むね!」
「うむ!うむ!」
「あぁ・・・大変申し上げにくいのですが・・・」
「なんですかな?」
「───紙と筆は特に選ばないのですが・・・墨の方が特殊でして・・・」
「ふむ。この様に光の加減で輝き方が変わる墨は確かに見たことがないが・・・」
「魔法石・・・はご存じで?」
「・・・聞いたことはあるが・・・もしかして?」
「そうです。その石を加工して墨にして使っています」
「そうか・・・なかなか上手くはいかないな」
まぁ・・・魔法石はこの国では一般的なものだから良いんだけど・・・他国で軍事利用されるとね・・・だから、肝心なことは伏せないと。
「今は少しでも早く土地を改良しないとですよ」
「そうですな・・・」
「さぁ!この肥料を土に混ぜ込みましょう!」
まずは貝殻石灰を土に混ぜて・・・あとは・・・スキルを・・・?
「あれ?」
「どうしましたアルフレッド様?」
「うぅん・・・スキル使用板が反応しない・・・」
「えっ!?」
困った・・・この島ではスキル使用板が使えないの!?