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畑を作ろう①

「ふぅ・・・」


朝日が私を照らし、目が覚める。・・・そうだ。昨日は、炊き出しからそのまま宴になったんだった・・・。

ん?カレンとエレンは何処行ったんだろう?


「カレン───エレン───!」


───と言うかここは何処!?


「あっ!お目覚めになられましたか。アルフレッド様」


「おはようなのじゃ!アル!」


「あっ・・・あぁ!2人ともおはよう。・・・ここは何処?」


「ここは、倉庫の中ですよ。倉庫といっても、改築された場所になりますね。ストルネ殿の住居と同様す」


「ここの住民は、街の方に自らの家を建てたから無人だったのじゃ。それをストルネ殿がアルのために開けてくれたのじゃよ」


「・・・悪いことをしちゃったなぁ」


「いえ。アルフレッド様は悪くないですよ」


「そうなのじゃ。と言うよりも、あの場で出された果実水が発酵していたなど誰が気づけようか」


「私が注意をしていれば・・・」


「いやっカレンでも気づけまい。ほんの少しなのじゃから。その証拠に、アル以外は平然としておったろう?」


「・・・まぁ・・・ね。お酒に弱いから。大丈夫だよカレン。気にしないで」


「・・・はい」


「それよりアルよ。外でストルネ殿が呼んでおったぞ?」


「わかった。着替えたら向かうよ」


そうかぁ・・・やっぱり酒精に弱いのか・・・。どうしたらいいかなぁ・・・魔道具でも創ろうかなぁ・・・。


「アルフレッド様?」


「あっ!いけないいけない!着替えるから待ってて!」







「ストルネ殿。お待たせしました」


「おぉ!アルフレッド殿!おはようございます。体調はいかがですかな?」


「えぇ。特段の変化はありませんね。昨日はご迷惑をお掛けしました・・・」


「なんのなんの!あれだけの食料を提供していただいたのだ。寝るところなぞ造作もありませんぞ!」


「・・・ありがとうございます。それと・・・」


「ご心配召されるな。件の果実水を一口お飲みになったらすぐ寝てしまわれましたから。皆には疲れが出たのだと。そう話しておきました故」


「重ね重ね申し訳ありません」


「いやいや。・・・ふむ。こんな所でアルフレッド殿を独り占めしては皆に悪い。さぁ!今日から働きますぞ!」


「・・・昨日と性格が違うとは思わんか?」


「・・・元来あの様な性格なのでしょう・・・」


豪快に笑うストルネ殿に連れられてやってきたのは、少し黒めの土が掘り起こされた場所だった。


「・・・ここは?」


「あぁ!この奥で細々と畑作をしておるのだよ。プルーナ!案内を頼む」


「はいはぁい!ただいま!」


そう言って現れたのは、薄紫色の髪で溌剌とした女性であった。


「アタシがプルーナ!宜しくね!えっと・・・」


「アルフレッドです。左がカレン。右がエレンです」


「よろしくお願いいたします」「よろしくなのじゃ」


「アルフレッドさんに、カレンさんにエレンさん!うん!覚えたよ!コッチにどうぞ!」


「・・・すまぬ・・・アルフレッド殿」


「なにがです?」


「言動が軟らかすぎるというか・・・軽いというか・・・あれで25歳だから困ったものなのだ」


「大丈夫ですよ!・・・25!もう少し若いかと・・・」


「我が隊では一番若いが、砲撃の腕は一等なのだ」


「なるほど。精鋭であると。人は見かけに依りませんね」


「んん?提督とアルくんは何を話しているの?」


「「・・・なっ!?アル・・・くん!?」」


「ありっ?なんかマズった?カレンちゃん」


「「!ちゃん!?」」


「・・・プルーナ・・・いやっ・・・何も言うまい」


「なになに!?どったの提督?」


「・・・良いから案内を頼む」


「はぁい!」


元気な()だなぁ・・・。カレンとエレンは

さっきの呼び方によっぽど驚いたんだね・・・2人ともブツブツ言いながら歩くのはなんか怖いよ・・・。


「すまぬアルフレッド殿」


「ん?何がです?」


「プルーナの呼び方が・・・」


あぁ・・・私の身分を考えるとストルネ殿の反応が正しいのか。でも、城下に繰り出してたときなんかはこんなの比じゃ無いくらいには愛称で呼ばれてたからなぁ。


「あぁ!気にしないでください。私は気にしていませんよ」


「・・・痛み入る」


本当に気にしてはいないんだけどなぁ・・・ストルネ殿は義理堅いところがあるよね。


「アルくん!ここだよ!ここがアタシが作った畑だよ」


・・・これが畑?土は黒いけど畝はない。肥料は何を?抑も水場の気配がない・・・これじゃぁ作物も元気には育たない・・・。


「ここでね育てると他のところより大きく育つんだよ!って言ってもお店で売ってるのよりは小さいけどね・・・たはは」


「どんな大きさ?と言うか何を育てているの?」


「まっててね!」


そう言って畑?の近くに建ててあった小屋に向かうプルーナ。・・・あれが貯蔵庫!?生き物にやられない!?


「・・・一寸虫食いだけど・・・はい!ここで採れる馬鈴薯!」


「あぁ・・・うん」


掌に載せても分かる・・・。小さい!一般的な馬鈴薯の1/4だ。虫食いも酷いけど、これは保存ではなくて土の中でだ。


「この畑では馬鈴薯の他には何か育ててる?」


「ん?馬鈴薯だけだよ?だって・・・アタシ達の主食だもん!」


胸を張って言うことじゃないよ!連作障害だよ!どうして彼女が畑やってるの!


「すっストルネ殿・・・」


「何ですかな?」


「あの・・・そのぉ・・・彼女に畑を任せている理由は?」


「おぉ!プルーナは家で庭いじりをしていたらしくてな。訓練に明け暮れた我々の部隊の中で唯一の土いじりの経験があったのだよ。だからこそ任せておる」


「あっはは・・・なるほど。」


「ていとくぅ!」


「なんだプルーナ───」


「あのねあのね───」


これは困ったぞ・・・まず土壌改良。水利の改善。休耕。栽培作物の選定と馬鈴薯の量産化・・・思ったよりこれは・・・


「思ったより難敵じゃのぅ。アル」


「あぁ・・・うん。エレンは何でそんなにニヤニヤしてるの?」


「それはアルの魔法が楽しみだからのぅ」


「・・・」


「新しい魔法が創られることが楽しみと言わずなんとする!」


「いやっ・・・新魔法は創らないよ・・・今はまだね」


「なぬ!じゃが今後は創るのだろう?」


「うん・・・まぁね」


「ならいのじゃ。して。取り急ぎ何が必要じゃ」


「エレンは水場の調査を」


「わかったのじゃ」


「カレン」


「はい」


「肥料になりそうなものを探してきて。多分求めているモノが有るはず」


「畏まりました」


ボソボソと2人と話していると、話しが終わったストルネ殿が近づいてきた────。

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