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この島が抱える問題

ストルネ殿に呼ばれ、外に出てみると15名ほどの男女が立っていた。少し首をかしげると・・・


「あぁ・・・全員集めてもと思ってな。各代表者を集めさせていただいた」


「成る程。では改めまして。アルフレッドと申します。この島は、我がアルベロ王国に属するライラック島です。皆さんが置かれている状況は、ストルネ殿より伺いました───」


皆の前に立ち、これまでのこととこれからのことを話すと、質問が飛んできた。


「仮に我々の中に手伝いを拒否する者が現れたらどうする?」


おっ・・・さっき壁の裏側に居た獣人族の男性か!拒否したら・・・か。


「仮に拒否された場合・・・森の開拓をお願いしま───」


「なっ・・・強制労働をさせる気か!」


あぁ・・・言葉が足らなかったか・・・。蜂の巣をつついたように騒がしくなってしまった・・・。


「静まれぃ!えぇい静まれぃ!不安なのは分かるが、アルフレッド殿が説明をし、詳細を話す前に腰を折った者が居た。すまぬ。此奴らは気が良く働き者なのだが、少々直情的でな。申し訳ない」


「大丈夫ですよ。言葉足らずの私が悪いので・・・。森の開拓と言っても、反対する方は私への信用が低いと言うこと。であれば、私とは離れた場所で働いていただければと思います。建物を建てるにあたっては、木という資源が必要不可欠なので・・・」


「・・・木こりとするって理解でいいのか?」


「はい。概ね間違いではありません」


「この島の危険性は」


「この街が内陸からの、魔物に襲われたことは?」


「いや。海でも沖合に出なければ襲われることは・・・」


「まぁそう言うことです。木を切る時に怪我をされる方が出るかも知れませんが、魔物に襲われることはないでしょう。ただし、この島の生態系の調査も行います。そこに関しては、我々3人が実施するのでご安心を」


「・・・木を切るならなぜ最初から木こりと言わなかった」


「あぁ・・・木を切った後、切株を掘り起こし、土地も整地する。と言うことも含めてだったので」


「・・・言葉足らずのヤツだ」


「たはは・・・よく言われます。では、他にご質問は」


「開拓とお伺いしましたが、この島の現状は何処までご存じで」


おっ・・・今度は魔術師の女性か。本当だ。なかなかの使い手だな。


「うぅん・・・この島には祭祀場があること。その昔、火山信仰がありその信者達がこの島には多く暮らしていたこと。島外に大規模な神殿を建設することとなり、信者達が居なくなった。ですかね」


「・・・そこまでご存じでしたのなら、申し上げることはございません」


合格・・・なのかな?と言っても、こればかりは私が主導して行ったことだから、歴史書と言うよりかは、実体験を話したに過ぎないんだけれど・・・言いくるめてしまったようで一寸狡かったかな・・・。


「他にご質問は」


「では。」


ん?あぁ!あれが副官殿か。


「アルフレッド殿にお伺いいたします。なぜ我々の保護をお考えになられたのですか。はっきりと申し上げて、奴隷化。少し良くて完全監視の下に置かれた方が良かったのではありませんか?」


「・・・まず。私自身奴隷と言うことが嫌いです。自分の意図しない働きを主人の言うがままに遂行すると言うことが嫌なのです。そのような主人だけではないですけれども。また、皆様の境遇もストルネ殿から伺っていますので、管理統制はいたしません。ですが・・・」


「・・・ですが?」


「日々の健康に関してだけは管理させていただきます」


「それは・・・どういう・・・」


「ストルネ殿以下、あなた方を見ても満足な食事にありつけていないご様子。今は何とか食いつないでも、そろそろ食糧と交換するモノが底をつき、どうするか話し合っていた。そんなところではないでしょうか。ね。提督」


「・・・その通り・・・です」


「であればです。差し当たっては食糧自給率の上昇。次に港の改修と換金できる商品の開発。そして、元々巡礼地だったこの地の観光化でしょうか」


「それに我々が携わる・・・と」


「えぇ。あっ!勿論強制はしません。ただ、皆さんで動いた方が良い未来を作り上げることが可能ですが・・・」


「ふむ・・・。その未来を作り上げた先にあるのは」


「ピセロ!」


「提督。大事なことなのです。我々がこの先どうなるのかの───」


「しっしかし・・・」


「あのぉ・・・話を続けても?」


「・・・申し訳ない」「失礼いたしました」


「副官殿・・・いえ。ピセロ殿のご不安は最もですが、私としては・・・港の整備が終わり、船が出せる段階まで落ち着けば、帰国の途についていただいても構いません」


「なんと!」「───本当ですか?」


「えぇ。食が改善し、皆さんの体調も良くなってからの港の改修です。航海に耐えるには良いリハビリでは?」


「・・・はい」


「それに、大前提として食糧自給率の上昇です。即ち、航海用の食料を提供できるに至らせるという目的もあります」


「「おぉー!」」


よしっ。掴みは上々かな。これで・・・


「待ってくれ」


「はい?」


「帰るところがあるヤツはいい。しかし、帰るところのない者はどうしたらいい」


「それは・・・この島で暮らしていただければと思います」


「不法占拠していたのにか?」


「そこはもう不問としたはずです」


「だが、身寄りのない者たちには市民権がない。帰る場所がないのだから」


「その心配はありませんよ。残ると決めていただいた段階で正式に市民権を付与します」


「そんなこと───」


「今は信じていただきたい。必ず皆さんを笑顔にするとお約束します」


「・・・ストルネ殿が信じたんだ。今はそうしておく」 


「ありがとう」


いやぁ・・・あの獣人族の男性は、初めて見る気配だったから油断した・・・そうだよね。心配だよね・・・。この場で首を切られる可能性だってあるんだから。・・・よしっ今は、私ができることを精一杯やろう!


「カレン」


「はい」


「炊き出しの準備を」


「畏まりました」


「エレン」


「うむ」


「薪の準備を。魔力を使うことにはなるけど」


「大丈夫!了解したのじゃ!」


「では、ストルネ殿は炊き出しのできる場所をカレンに教えてください。他の皆さんは、各々に集合の伝達を。あっ!集合の時は、何か平たい皿を持ってくるよう伝えてください」


「「「わかりました!」」」


「では。宜しくお願いします!」

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