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復興。そして白兎の森へ

「僕のスキルでなんとかできるかもしれません」

そうアルフレッドが村長に言うと

「こんなにお若く、魔法も達者。しかもスキルが発現しているとは・・・」

(もしかしてやっちゃった?)

(・・・私にもさっぱり。普人族は特に・・・)

(普人族はスキルの発現が特段に低いのじゃ。それも高位貴族であっても発現率が低い。やってしまったのぅアル。)

(あちゃぁ・・・)

目立ちたくなかったが、村の窮状を無視できなかったアルフレッド。常識の差を理解できていなかったのだが


「村長に言い忘れてた!アル坊はお貴族様だからスキルが使えても何ら問題ねぇだろう」

そう言ってアルフレッドに向けて、村長が見えない位置でサムズアップするプレズモ。


「そうじゃったのか!いやぁ・・・つくづく儂はうんがえぇ」

「あはは・・・」

(今度は露呈しないように・・・っと)

心の中で目立たない立ち振る舞いを決意しながら、地面に丸い円を描く。

「これでよしっと。すみません村長。どんなに小さな木片でも構わないので、この丸の中に200個ほど木を集めていただけませんか」

「それは・・・焼け焦げていても。何なら木の枝でもええのかい?」

「はい!どんなものでも。材質が{木}なら大丈夫です!」


そう村長に伝えると、村長は村人を集めて、木材集めを始めた。

「カレンとエレン・・・先生は手伝いをお願い」

「畏まりました」「分かったのじゃ」

三人は手分けして丸い円を村の地面のあちこちに書き上げていった。


「アル君や────。」

「はぁい!今行きまーす」

村長に呼ばれた方に向かうと、先程書いた円の中に短い枝や小さな木片、焼けて折れた柱など大小様々な{木}が置いてあった。

「これをどうするのじゃね」

「まぁ見ていてください」

〖スキル起動。高速建築。{木}ヲ確認。木製ノ家。ヲ建テマスカ?ヨロシケレバ承認ヲ。〗

「よし。承認」

〖木製ノ家。建築開始。〗

「「「おわっ!」」」

まばゆい光が放たれた家と思うと、四人家族が暮らせるであろう家が鎮座していた。

「まぁこんなものでしょうか。・・・ただ。申し訳ありません。家具までは創れないので・・・」

「「「・・・」」」

「どうかしました?皆さん」

「ッハッ!驚きすぎて言葉が出ないわい。家具は職人がおるからの。心配せんでええ。雨露がしのげれば。のう!皆の衆」

「「はい!」」

「この調子で建てて行きます。今、二人が円を書いて回っていますので、同じ要領で集めたものを置いてください。大変な作業をお願いして申し訳ありません」

「なんの!こんなに立派な家が建つのなら、頑張りますとも!そぉれ!集めるぞぃ」

「「「はい!村長!」」」

村長のかけ声と共に、大人達が{木}を集め、アルフレッドがスキルを起動する───。


「っかぁ!凄いなぁアル坊は。沈んでいた村の衆が一気に明るくなりやがった。俺もこうしちゃおれんな」

皆が活躍している中、何かできることを考えながら村人と共に作業をしていたプレズモは、村長に声をかけ、馬車に乗り込み何処かに向かっていった。


「・・・これで最後っと。でも・・・村長の家が最後って良かったんですか?」

「ええんじゃよ。若人より先に家を建てるなど。爺は最後でええんじゃ」


そう。村長の家を見本の後すぐに建てようと話したところ、断られてしまったのであった。アルフレッドは、村長の以前の家の大きさを知るべく村人に聞いて回ったが、総じて“応接間がある分、ほんの少しだけ広かった”“そんなに変わらない”と言われた。


質素倹約。


村人の笑顔が一番の宝。今ここに住む村人達が自分たちの仕事を満足いく形でできるように支えるのが儂の務め。


アルフレッドは、村長が語った言葉に感銘を受け、カレンに至っては、各地の領主達に爪の垢を煎じて飲ませたいと呟くほどであった。


「教会の地下に避難した時も、村長は励ましの言葉をかけておったなぁ」

エレンは避難した先での出来事をアルフレッドとカレンに話し始めた。


───ぉぉぃ!───ぉぉい!───


「ん?」

「この声は・・・プレズモ様ですね」


村の外からプレズモの声が聞こえる。そうカレンがアルフレッドに伝えたため、村長に話すと

「うむ。皆の衆。村の入り口に移動しようかのぅ」

そう村人達に声をかけ、移動し始める。その後ろをアルフレッドとカレン、エレンが追随していく。


「村長!もどったぜぃ!」

そう言って、プレズモは野菜や果物を満載に積んだ馬車から降りた。

「あれ?あの幌付きの馬車は?」

「あぁ!あれな。売っちまったんだ」

「えっ!?」

「いやぁ・・・高く売れたぜぃ!そんでもって野菜と果物を仕入れてきたんだ。俺は余り現金を持ち歩かん主義でなぁ・・・。近くの村には商業ギルドがなかったもんで、手持ちもなかったからな」

「プレズモよ。申し訳ないことをしたのぅ」

「いやいや村長!頭を上げてくれ!持ち場を離れて皆の仕事を増やしたんだ。頭なんか下げないでくれ」

「いやっしかしのぅ・・・」

「そんじゃぁ。折角持ってきたこの野菜と果物を全部まるっと使い切ってくれ!」

「───!勿論じゃ!皆の衆頼むぞぃ!」


プレズモが自身の幌馬車を売り払って手に入れてきた食料。それに感謝し、受け取った村長は、村人達に声をかける。そうして動き出した村人達は、村の中心にモノを運び、火を焚き、調理や卓などの準備を始めた。


「しかし───この村には畑がなかったなぁ」


村の中心に移動していく中足を止め、村の建物を建築していく際にふと湧いた疑問を呟いた。その呟きを聞いたプレズモが後ろからやってきて答える。


「この村で畑作はしてねぇよ。特産品があるからな!それでもってるんだ。昨日も食っただろう?」

「特産品?食べた?」

「あぁ!」

「おっ!カレン嬢!わかったのか?」

「それはもちろん!」

「なになになに?」

「全くアルは興味があること以外にはとことん無頓着じゃのぅ。昔っから変わってはおらぬのぅ」

「エレンまで!なになに?なんなの?」

「アル坊。この村はブルーブルを肥育している村なんだぜ」

「あぁ!あの美味しい!」

「そう!その肉と野菜や果物、生活に必要なモノを交換しているのが俺なのさ!だからコッチに来たときは現金を持ち歩かねぇんだ」

「成る程!」


「しかし・・・ゴブリンに少しやられてしまったのでは?」

「それがな、ブルーブルの雄はゴブリンくらい軽くあしらうんだ。立派な角でな!」

「・・・そんなに気性が荒いんじゃ世話も大変じゃないの?」

「そこは、俺も詳しくは知らんが、村長が持つ力らしいぜ」

「へぇぇ!まだまだ知らないことばかりだ!」

「それよりアル坊!あの焼けた村にこんなに早く建物が建つなんてな!」

「・・・スキルのお陰だよ」

「いんやぁ。そのスキルを確りと使いこなせているんだ。過度な謙遜は嫉妬の対象になっちまうぜ」

「昔からアルは無自覚に敵を作っていたからのぅ。まぁ・・・無意識に心も折っていたのじゃがなぁ」

「そうでしたね」

「もぅ・・・二人とも!」

「ガハハハ!まっそこまで実力があるんじゃいらねぇ忠告だったかねぇ。しかしまぁ心に留めておいてくれ。しがねぇおっさんからのお小言だ」

「あはは・・・ありがとうプレズモさん」


村の中心に向かう途中で立ち止まり、談笑していた四人は、駆け寄ってきた村人に、料理ができたから村長が呼んでいる。と声をかけられ、少し早足で向かうのであった。


「漸く主役が来たわい。───座る椅子が用意できなくて申し訳ないが、突然襲われた危機に際し、救ってくれたアル君やカレンさんにエレン殿。そして食料を提供してくれたプレズモに感謝を。準備をしてくれた皆に感謝を。それでは、いただきます」

「「「いただきます!」」」


そこかしこで笑い声が聞こえる立食式の食事会。短時間でも確りと煮込まれた野菜のスープに、ブルーブルの肉野菜炒め。お酒はないが、沢山の果物を搾って作られた果実水を片手に、談笑する。


決して豪華ではないが、一人も欠けることなく危機を乗り切った。


村人達は四人に感謝の言葉を次々にかけていく。


身も心も温かくなる一時がそこにはあった───。


「そろそろ白兎の森に行きたいな」

「そう・・・ですね。少し予定より遅れていますし」

「おっ?なんだ今から行くのか?もう直ぐ日没で危なくって、ある坊達なら大丈夫か!よっしゃ。俺が馬車で送っていってやるぜ!」

「でも、帰り道危なくない?」

「───あぁ・・・忘れてたぜぃ」

「それならワシがなんとかするぞ。アル。ワシも着いていくからの!」

「本当に来るの!?エレン・・・」

「・・・不満か?ワシ・・・いじけるぞ・・・」

「あぁー!ごめんごめん!エレンが来てくれるととっても助かる!」

「そっそうか!」

「はぁ・・・まったくエレンはもぅ」


そうと決まれば善は急げと、アルフレッドは村長に場を辞することを伝える。村長は深々と頭を下げ、再度感謝を伝え、村人総出で見送りをしてくれた。


───また来ます!と力強く返事をし、日没迫る薄暗がりの道を進んで行った。

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