プロローグ
ライラック島に向けて出発です!
「あぁ・・・宮殿でのゴロゴロライフも終わりかぁ」
「・・・言葉と気持ちが相反しているようですが」
「良いじゃないか。事を始める。いくつになってもワクワクは止まらないさ」
目を爛々と輝かせカレンの皮肉を軽く流しながら、王都の目抜き通りを歩くアルフレッド。早朝と言うこともあり歩く人はほぼいない。代わりに小麦の香ばしい香りや野菜スープの香りなどが道を支配する。
朝食を確りと食べた二人でさえ、香りに誘われてしまいそうになる。空腹であれば、開いている屋台で麦粥などを食べていたことだろう。
「さて────行って参ります」
アルフレッドは城門をくぐる前にくるりと回転し、宮殿と広がる街に一礼。
踵を返して門を出ようとすると、遠くからアルフレッドとカレンを呼ぶ声が聞こえてくる。
「───この声は、陛下ですね───」
カレンの耳は、遠くの声をハッキリと聞き分けた。
「どうしたんだろう」
父が近づいてくる。その報告に疑問符を浮かべるアルフレッド。
「ハァハァ・・・間に・・・合った!・・・ふぅ」
一息ついて、自室の窓から見かけて追いかけてきたと言う父は、着の身着のまま寝間着姿で近衛隊長のみを連れてやってきた。
「どうしたのです?父上」
「どうもこうもない。息子の門出を見送らずして何が親だ。まぁ彼奴は安静にせねばならぬ身体だからな。「身体に気をつけて行ってらっしゃい」と言っておったぞ。」
「ハハハ・・・何時になったら子離れできるのですか・・・。ですが・・・ありがとうございます」
「うむ。いくつになっても其方は私たちの息子だ。壮健でな。・・・ハックショイ!うぅ・・・流石に冷える」
アルフレッドに言伝と自分の言葉をかける国王。
しかし、まだ太陽が顔を出していないためか夜の冷気が残っている。
「陛下。こちらを」
「たすかる」
団長が着ていたコートを差し出し、肩にかける。
「父上。ご無理をなさいませぬよう」
「うむ。無理はせぬよ。───時にカレン殿」
「はい?」
突然言葉をかけられ訝しむカレン。
「アルは、夢中になると寝食を忘れる悪癖がある。我が不肖の息子をお頼み申す」
「心得ております。無理をしないよう見張っておきますね」
「ちちうえぇ・・・私の方が年上なのに・・・」
「ハッハツハ!殿下も形無しですなぁ。ライラック島までの道中。お気を付けて」
「ああ。行ってくるよ」
「それと・・・カレン殿は女性です。あまり無理をさせる事のないよう。お気遣い・・・殿下には無用な話ですかな」
「──心得ているよ」
カレンと国王が話している間、団長とアルフレッドも話し、お互いのことを気遣いながらそれぞれの成功を祈念し、出立する。
「それでは行って参ります。定期的に文を出します故、ご安心を。行こう!カレン」
「はい。それではお二方。行って参ります」
「うむ」「活躍、お祈りしておりますぞ」
二人が小さくなるまで見送る国王達。
「さて、我々は我々の為べき事をするぞ」
「はっ」
この先何があるのかまだ分からない──────
。
「さぁ皆さん。忙しくなりますわよ。私たちの手で王国を────」
物語の始まり!漸くここまで来ることができました!