出発を前にして
地名が少し出てきます。
「やっと自分の部屋に着いた!入り口からここまで廊下過ぎ!しかしいくら春季と言えども流石に夜は冷えるね」
「そうですか?私にはとても過ごしやすいですよ。夏季より全然マシです」
「まっまぁ──あの暑さに比べればね。でも、今夜は特に冷える───」
元の姿に戻り、薄着を後悔するアルフレッド。対してカレンは「もう少し涼しいと丁度良いのですが・・・」とボソリ。
「そう言えばアルフレッド様。今回、城を起つにあたり、交通手段の手配はされているのですか」
「あぁ・・・乗合馬車と船ね。─────してない!」
「そんな胸を張って言うことではないと思うのですが」
「いやっだってさ。スコットさんの店が面白すぎて・・・」
「言いわけは結構です。どうするのですか。もう20刻です。どこの発着所も開いてはいませんよ」
「どどどどうしよう・・・。明日必ず出ると啖呵切ってるのに────」
スコットの店に長く滞在していた影響なのか、はたまたもとから頭の中に無かったのか・・・。旅に於いて最も必要な足の準備を忘れてしまったアルフレッド。青い顔に成りながら───────
「そッそうだ!魔法を使っていけば─────」
「馬車と船を乗り継いで一週間はかかるのにですか?魔力持ちますか?空を行くにも高速で走るにも大量の魔力を使うのに」
「そこはほら───魔道具を開発して───」
「明日出発なのに?今から創るのですか」
「あっ・・・いやぁ・・・うん。無理──だね」
万策尽きた様子でベッドに大の字に寝転がるアルフレッド。あれやこれやと悩みながら唸り声をあげるも、妙案が浮かばない様子で端から端にゴロゴロと転がっている。そんな様子を見かねて
「ハァ───私が乗せますよ」
ガバッ
「ほっ・・・本当かい!?いやっしかし・・・」
「近郊部の村まで乗合馬車に乗って、白兎の森から一気に駆けて行けば───」
「私の魔法も併せれば二日で着く」
「私を寝させないつもりですか」
「いやっ休息はしっかり取るよ」
カレンらかの提案に目を輝かせながら、カレンの駆ける速度と自分の魔法を使って、導き出される最速の行程を再構築するアルフレッド。
休む休まないで苦笑いをしていたカレンだったが、真剣な顔をして考え込むアルフレッドを表情をただして見つめる────。
「よし!白兎の森から駆けて琥珀海を抜けて目指そう。直線的に進めば半日で着くかもしれない!よしっ!ありがとうカレン!君のおかげで無事に旅立てる!」
破顔したアルフレッドに両手を握られブンブンと振られるカレン。
伏し目がちに照れるが、急に手を離され
「そうとなれば、父上に帰城の報告を済ませて寝よう!」
と勢いよく立ち上がって部屋を出て行く。
カレンも手のぬくもりを感じながら、アルフレッドに着いていく。明日からの旅路を考えながら───────
森あり海ありですが、少しずつ地図を描ければと思います。