新人ゾンビ 真理子です! (表)

作者: 彩峰舞人

 私はゾンビの真理子。

 ゾンビになってから五日目の新人ゾンビです。そして隣にいるのはゾンビの佐藤さん。

 私が人間を見つけられなくてお腹を空かして泣いているときに、人間の手首を分けてくれた優しいお兄さん。バカな私に、毎日ゾンビとしての生き方を教えてくれる親切なお兄さん。


 私達は二人で空き家に暮らしています。佐藤さん、今日は何を教えてくれるのかな?


「真理子ちゃん、今日は昨日の復讐から始めよう」

「昨日、何を教わりましたっけ?」


 脳みそが半分吹き飛んでいるせいか、どうも覚えたことをすぐに忘れてしまう。


「また忘れたの? じゃあ、今日もゾンビウォークを勉強しようか」

「よろしくお願いします!」


 佐藤さんは教わったことを忘れても決して怒ったりはしない。私も早く一人前のゾンビになるために頑張るぞ!


「じゃあ、歩き方の手本をみせるから、よく見ててね」


 佐藤さんは足を引きずりながら、ヨタヨタと歩く素晴らしい演技をみせてくれました。さすが佐藤さん、ゾンビ歴六か月ともなると動きに無駄がありません。


「佐藤さん、質問してもいいですか?」

「うん、いいよ。何でも聞いてよ」

「最近のゾンビは人間を襲う時に、走ったり、跳ねまわったりするのがトレンドだってお隣の山田さんに聞いたんですけど本当ですか?」

「うーん、そうだね。確かに一部のはっちゃけたゾンビ達が始めたパフォーマンスが広がって人気になったけど、所詮、はやりものだからね。やっぱりボクはこの基本の動きをしっかりマスターすべきだと思うな」


 さすが佐藤さん、将来エリートゾンビを目指す人はいうことが違うな。


「じゃあ、真理子ちゃん。ボクの様に歩いてみて」

「はい!」


 私は佐藤さんの動きをまねて、一生懸命ゾンビウォークをしました。


「どうですか? 上手く出来ていましたか?」

「うーん。昨日も言ったけど、真理子ちゃんの歩き方はゾンビウォークというより、ムーンウォークなんだよね。ゾンビになる前にダンスとか習ってた?」

「脳みそ半分吹き飛んでいるので覚えていません!」

「ま、まぁ、これはこれで次世代のゾンビとしてはありなのかな? ボクも片目がとれているから、そう見えているだけかも知れないし……」

「佐藤さん、私お腹が空きました」

「もう、そんな時間? じゃあ、人間を探しに行こう」



 私達は人間を探すため市街地にやってきました。

 あっさりと人間は見つかりましたが、鉄砲を持って「ヒャッハ―!」しています。怖いです。


「どうしよう、佐藤さん。あの人の脳みそは食べたいけど、鉄砲は怖いです」

「ボクにまかしておいて。銃を持っている人間は要注意だけど、あいつは多分大丈夫だ。ボクに付いて来て」


 あの人間は鉄砲を持っているのに佐藤さんは怖くないのかな? ホント佐藤さんはすごいな。佐藤さんは私を連れて、他のゾンビに上手に紛れこみながら、人間の背後に回り込みました。


「佐藤さん、こっからどうするんですか?」

「真理子ちゃん、まずは相手のことをよく観察するんだ。あの人間は目の前にいるゾンビばかりに集中して、背後をまったく気にしていない。それに使っているあの銃。あれはショットガンだから慣れていないとリロードするのに時間がかかる。ボクの言いたいこと分かるかい?」

「脳みそ半分吹き飛んでいるので分かりません!」

「そ、そうか……つまり、あの人間がリロードしているときに襲うのが絶好のチャンスなんだ」


 そういうことか。佐藤さんはホント物知りだな。


『カチッカチッ』

「くそっ!!」


 佐藤さんが言った通り、どうやら弾が切れたあの人は、リロードにもたついていました。


「今だ、真理子ちゃん。第一目標は頭をもぎ取ることだ!」

「はい!」



 ――――



 家に戻った私達はニコニコです。お互い顔が崩れているのでホントにニコニコしているかは分かりませんが、気持ちはニコニコです。


「今日は大収穫だよ! 頭と腕一本とってこれたのは久々だ」

「他のゾンビさん達、くやしがっていましたね!」


 私達は早速、頭を二つに割るとむさぼるように脳みそを食べました。美味しい物を食べているときは死んでるって実感します。

 また、佐藤さんに色々教えて貰って頑張ろう!