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31:命呑む口-5

「撃てぇ!!」

「h7t7s57……」

 戦いが始まると同時に、直ぐに自衛隊の隊員たちが大蛇のフィラに対して発砲を行う。

 躊躇いなく放たれた弾丸は大蛇のフィラの全身を容赦なく穿ち、その身体に付いている頭と言う形でストックされた命を削っていく。


「w8h3」

「!?」

「なっ!?」

 だが、大蛇のフィラの動きも速かった。

 銃で撃たれていることなど気にした様子も見せずに動き出し、盾で攻撃を逸らそうとした男子高校生も、その後ろに居た自衛隊隊員も呑み込む。

 そして、二人を呑み込むと、直ぐに次の獲物に狙いを定めようとしてくる。


「くっ、動きが速すぎる!」

 そんな中、俺は大蛇のフィラへのマーキングどうにかしてしようとしていた。

 だが、あまりにも大蛇のフィラの動きは速かった。

 竹林から出てきた瞬間も、その次の動作も、俺の目では碌に捉えられず、俺のレゲスを発動するために必要な10秒間指さし続けると言う条件を満たすよりも早く姿を眩ませてしまう。


「ふんっ!?」

「h7t9s57!?」

 一方のツノと言えば、次の獲物を呑み込もうとしていた大蛇のフィラの顔面を右手のローラーで殴打。

 大きく仰け反らせる。

 すると、ローラーによる殴打のダメージが致命的な物だったのだろうか。

 大蛇のフィラの尻尾の方に付いていた頭が一気に数個弾け飛ぶ。

 どうやら、命を削るのに過剰な火力を用いれば、その分だけ多くの命を奪える仕組みになってはいるらしい。


「6q553い7435qhq……」

「っ、こっちを……」

 ツノを脅威と認めたのだろう。

 大蛇のフィラがこちらを向く。


「逃げるよイーダ!」

「うおっ!」

「h7t79s57!?」

 ツノはローラーを大蛇のフィラの顔面に向けて投擲すると、直ぐに俺を左手で抱え、砲丸入りの袋を右手で持ち、全力で跳ぶ。


「y7hhs57!」

 直後、胴体に付いた頭を10以上弾けさせつつ、俺たちが居た場所を大蛇のフィラが大口を開けて通り抜ける。

 その場にとどまっていたたらどうなっていたかなど、考える間でもない。


「h8tqwqhh……」

「イーダ!」

「ガスの準備を開始する!!」

 ツノの着地と同時に、大蛇のフィラも体勢を整え、こちらに向かって突っ込んでくる。

 その動きは本当に速い。

 だから俺はもう大蛇のフィラを直接黒い液体に変えることを諦め、丸めたタオルを唾液で濡れた手で取る。

 その間にツノは右手一本で器用に袋から砲丸を取り出すと、それを大蛇のフィラに投擲して手傷を負わせつつ、再び跳躍、俺を抱えたまま、攻撃を回避する。


「8、9……10!」

「s5757!?」

「よしっ!これで……」

 そうしてツノが数度の攻撃を回避してくれた間に10秒経過。

 大蛇のフィラの目前でタオルは黒い液体に変化し、即座に気化、黒い煙となって大蛇のフィラ自身の頭部を覆う。


「9h943……」

「どうやら、一度に全部とはいかないらしい……」

「みたいだね……」

 だが量が足りなかった上に、大蛇のフィラのレゲスだろう。

 鱗の頭が幾つか黒ずんで崩壊こそしたが、大蛇のフィラ自身の頭は健在のまま、黒い煙の外に出てくる。


「ははは、正直、この速さ相手にもう何十秒も逃げろって言われると、キツいんだけど……」

「と言うか、たぶん次からは普通に逃げられるぞ。あの速さだとカウンターでもたぶん間に合わない」

 大口を開けた大蛇のフィラはこちらの事を睨み付けて来ている。

 ツノは少しだが息が上がって来ているし、俺は次のタオルの準備をしているが……たぶん間に合わない。

 周囲では自衛隊の隊員たちが銃を撃ちこんでいるが、距離があるために大して効果は与えられていないようだった。


「い949w7」

「来る!」

 大蛇のフィラが再び動き出す。

 ツノもそれを見て動き出す。


「まずっ……」

 だが、大蛇のフィラの方が一枚上手だった。

 最初からツノが動き出す方向に僅かではあるが軌道を修正していた。

 その僅かによって、大蛇のフィラの口は俺とツノに届こうとしていた。


「あはははは!!」

「s57!?」

 けれど大蛇のフィラの攻撃が俺とツノに届く事は無かった。

 それよりも早く大蛇のフィラの頭を、哄笑と共に橙色の尻尾のような物が打ち付け、動きを止めていた。


「最高のテンションよっ!!思う存分!叩き潰して!縊り殺して!誰に喧嘩を!売ったのか!教えてあげるわ!!」

「この声は、というかこの尻尾は……」

「ユウコさん!」

 尻尾の主は高校に居る人間側のフィラの一人、朝駆ユウコ。

 どうやら自らのテンションに応じて尻尾が伸び縮みすると言うレゲスを利用して尻尾を伸ばし、それによって鞭のように尻尾を操っているらしい。


「い8wq……!?」

「そらそらそら!そら!!そらあっ!!」

「わわわわわ!?」

「うおいっ!?」

 正に縦横無尽。

 朝駆さんはすさまじい速さで尻尾を操り、何度も何度も大蛇のフィラを叩いていく。

 その圧倒的な暴威の前では、大蛇のフィラは身動き一つ取る事は出来ず、俺を抱えたツノも急いでその場から逃げる以上の事は出来なかった。

 だが、そんな嵐の中に突っ込んでいく一つの影……と言うより光源があった。


「ふはははっ!俺様の出番だ!!ぬんっ!!」

「gくぃqhq!?」

 それは朝駆さんや俺たちと同じく人間側のフィラであるキンキラ。

 彼は片手に自身と同じく光り輝いている剣を握り締めると、まるで朝駆さんの尻尾が何処から来るのか全て見えているかのように華麗に避けつつ、大蛇のフィラへ接近。

 容赦なくその身を切りつけていく。


「キンキラぁ!巻き込まれるんじゃないよ!!」

「俺様がそんなヘマをするかよ!!」

「h7t79s57……!?」

 朝駆さんが打ち据え続け、キンキラが刻み続ける。

 大蛇のフィラも攻撃しようとはしているが、それ以上に二人の動きが速く、近くに居るキンキラを呑み込む事すら出来ずに、一方的に命を削り取られていく。


「あははははっ!絞め殺してやる!縊り殺してやる!千切り殺してやる!やる!やるっ!殺るっ!!」

「……」

 もはや勝負は着いた。

 朝駆さんの尾が大蛇のフィラの首に巻き付き、朝駆さんの興奮に合せるように締まっていくのを見た俺はそう思わずにはいられなかった。

 そして俺の考えが正しい事を示すように、大蛇のフィラの首は……


「いくぃ7hq4773yq……」

 千切れて落ちた。

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