第１２話：解決
コアントロー薬剤店。
「フィストさん、そちらはどうですか？」
「ええ、さっきのは終わりました。これを持っていって、次をお願いします」
俺は磨り潰した傷癒草をローラさんに渡して、新たな傷癒草を受け取った。
薬草を採取してきた俺は、そのまま店でポーション作りを手伝っている。入荷が止まっている以上、自力で生産する以外に供給する方法がないのだ。
現在、アインファストのポーション事情は最悪だ。どの店も品薄あるいは品切れで、ポーションが高騰している。一部では転売も起きている。
そして、ポーションに限らず、その原料である傷癒草も同様に品薄になりつつある。傷癒草の買い取り価格が上がり、調薬師達が入手するための卸価格も上がり、結果ポーションそのものも値段が上がるというか、上げないと次の仕入れもままならない悪循環が始まりつつある。
この店は俺が直接傷癒草を持ち込んで、コーネルさんが生産しているのでまだマシだが、販売専門の店は休業状態。調薬師がいる店も材料集めに苦労するだろうな。
プレイヤーの調薬師も材料集めと販売に奔走しているが、生産者の数自体が少ないために状況は芳しくないようだ。
ＧＡＯでは基本的に、そこにある物がプレイヤーにとって有益な物であるのかが分からない。スキルで認識したり、誰かに教えてもらったりして、初めてそれが何であるのかを知ることができる。
例えば傷癒草が生えていたとして、普通のプレイヤーにはそれが傷癒草であるということが分からない。知識のないプレイヤーの認識ではただの草に過ぎないので、当然スルーしてしまうことになる。
これが【調薬】【植物知識】【採取】のスキルを持っていれば、それが傷癒草であると分かる。分かればそれをどうするかはプレイヤー次第だ。欲しければ採取し、要らなければ放置でいい。
スキルがなくても傷癒草の実物を見ており、それが薬草なのだと教えてもらえれば探すことは可能だ。ただ、効率は極めて悪いものになる。
一面の草原のあちこちに傷癒草が生えていると考えてもらいたい。スキル持ちなら草原を見ただけで、傷癒草がどこに生えているのかが視覚情報として与えられる。しかしスキルがなければ、１つ１つの草を目視し、確認しなければならないのだ。このゲームには採取ポイント表示などという仕様は存在しない。素で探すかスキルで探すかの二択だ。
採取効率にどれだけの差が出るか、分かってもらえると思う。いくら今現在、傷癒草の買い取り価格が上がってるといっても、そんな面倒な事をしたがるプレイヤーは少ない。
スキル持ち以外が薬草を採取してくることが非常に困難で、その結果、材料が集まらない。【調薬】持ちが自分で採取を行えば、それだけ余計な時間が掛かって供給が遅れることになる。先行きは真っ暗だ。
しかしこの状況。さっきはただのトラブルかと思ってたが、どうにも不自然に思えてきた。
今まで、ポーションの流通は問題なく行われていた。サービス開始と同時にこの世界の需要が跳ね上がっていたはずなのに、だ。それがここ最近、急に崩れた。プレイヤー数が爆発的に増加したという話は聞かない。ソフトの第二版はまだ発売されていないから、第二陣が押し寄せたという線はない。
それなのにここ数日で、供給が途絶えた。供給が追いつかないんじゃなく、一部が完全に止まっていた。となると、ポーションの流通そのものに異常が起きた可能性の方が高くなる。
「コーネルさん、最近、薬品業界で変わったことが起きたとか、変な噂とか聞いてませんか？ 薬草畑が荒らされたとか、採取してる人が襲われたとか」
傷癒草を煎じているコーネルさんに聞いてみる。
「特に耳に入る話はないですね。私どもの店に関して言えば、急に客が増えたことだけです。他の店の客が流れてきたのでしょうが……」
「そうですか……」
ポーションの高騰を狙って誰かが流通に歯止めを掛けているんじゃないかと疑ってみたが、そういう兆候があったわけでもなさそうだ。いや、そう思えないだけで、実際はそういう陰謀が動いている可能性もある。
傷癒草を処理する手を休めることなく考えてみても答えは見つからない。判断材料が乏しい状況では何を言ってもただの想像の域を出ないのだ。
いずれにせよ、今の俺にできることはポーション供給の手伝いだけだ。ルーク達が村に着いたら少しは進展もあるだろうし、連絡も――
『フィスト、聞こえるか？』
見計らったようなタイミングでチャットが来たので手を止めた。この声はスウェインか。【シルバーブレード】のメンバーとは全員、フレンド登録をしてもらっていたのだ。
コーネルさんが怪訝な表情を向けてくる。フレンドチャットは当事者同士の通信で、他者には聞こえない。言葉を発する必要も無く、思ったことがそのまま相手に伝わるようになっている。こう言うと考えが筒抜けになるように聞こえるが、実際は相手に伝えたいと思ったことだけが伝わる。どういう理屈かは分からないが、すごい技術だなと思う。
「ルーク達から連絡が来ました」
それだけ言うとコーネルさんは納得したのか作業を再開した。さて、こちらはこちらで情報を聞くことにしよう。
『ああ、今着いたのか？』
『着いたのは少し前だ。到着の連絡だけでは意味がないのでね。少し状況を確認したところだ。で、今回の件だが……事故の線は消えたと思っていい』
事故じゃない……つまり、何者かの仕業、ってことか。
『根拠は？』
『村の薬草畑が荒らされて、傷癒草が根こそぎやられている。それからポーションの納品に出掛けた村人が２組４人、行方不明になっているそうだ』
『最悪だな……村人の被害は？』
『今のところは、さっきの４人だけだ。ただ、村に何かしらの危害を加えられる恐れが出てきたから、下手に動けなくなった』
何者かが薬草畑を荒らし、ポーション輸送中の村人４名を襲ったというなら、それが村そのものに矛先を向けることは十分に考えられる。その何者かがどれだけの数の集団なのかは全くの不明っていうのが不安要素だな。
『だから私達は、村を拠点にして周囲を探ってみることにした。しばらくはこちらに滞在することになる』
『分かった。進展があったらまた連絡をくれ。それまで俺はコーネルさんの所で、できるだけ手伝う』
そこでチャットを打ち切って、コーネルさんに事情を話した。今回の原因が人為的なものであることを知って暗い顔になる。
「誰の仕業かは知りませんが、迷惑な話です。人の命を救うための薬を何だと思っているのか……」
そして怒りを露わにした。ポーションが市場に流れなくなれば、それで助かるはずだった命が失われるかもしれないのだから当然の反応と言えた。商売とは言え、薬を売って人を救うための手助けをするという今の仕事に誇りを持っているんだろう。
「ポーションを必要とする人は、荒事専門の人が多いですしね。それがなくなるっていうのは死活問題です」
「そうですね。では、そんな人達に少しでも提供できるように、私達も頑張りましょうか」
コーネルさんの言葉に頷いて、俺は調薬の作業を再開した。
ログイン１９回目。
ポーション供給は厳しいままというか、悪化した。ムロス以外が仕入れ先だった店舗の方も仕入れが途絶えてしまったらしい。これで、悪意ある何者かの介入が確定したな。アインファスト全体のポーション供給を止めるとか、かなり大きな組織なんだろう。
この件に関して、コーネルさんは他の店というか調薬師ギルドで連携を取ることにしたようだ。調薬設備を持っている店が作ったポーションを、ギルド加盟店に分散して提供するようにした。
意味があるんだろうかと思ったら、販売専門の店舗への救済措置と、店舗間での価格高騰の格差を無くすためらしい。それでも普段の数倍の値段になってるけど、現状では良心的な値段だ。材料の供給が途絶えると更に上がるだろうけど、こればかりは仕方ない。彼らにだって生活があるのだ。
一方、ギルドに加盟していない個人営業の調薬師は独自の価格設定で売っている。そして、プレイヤーの調薬師もだ。こちらは結構ぼったくり価格だが、中には店頭価格より少しだけ高め、という人もいるようだ。
それでも、店頭価格より高くても、ポーションは売れる。ポーション以外の回復手段が他にもあるとはいえ、やはり誰にでも使えるという利点は大きいのである。
そんな中、俺が何をしているかというと、基本はポーション作りの手伝いで、合間にコーネルさんから調薬関係の話を色々と聞かせてもらっている。
調薬師は読んで字の如く、薬を作るのが仕事だが、何もそれは回復薬だけの話ではない。例えば虫除け、例えば睡眠薬、例えば麻酔薬。そして、殺虫剤等の毒まで。調薬師の作る物は幅広いのだ。
そういった薬の知識をコーネルさんから色々と聞き、冒険に活用できそうな薬剤の調合を試したりもした。ポーション作りの影響で【調薬】がガンガン上がっていたこともあって、それなりの薬を作れるようになったのは今回の収穫だろう。ヒーリングポーションも４つ星に手が届いた。
それ以外は休憩時間でローラさんに料理を教わったり、息子のジャン君の相手をしてあげたりと、駆け回っているルーク達には悪いが何とも有意義な時間を過ごせた。
そして今、俺は何度目かの薬草採取に来ている。西の森の外周付近は既にあらかた採り尽くしているので、森の深いところへ入っていかないといけない。まあこの辺りは狩りに来たこともあるので、そうそう危険はない。今の俺ならウルフの群れ相手でも、苦戦はしても負けることはないだろう――いや、数にもよるけどね。とりあえず７匹までなら何とかできることは経験済だ。
深い部分ということは、人の立ち入りが少ないということで、手つかずの薬草などが結構ある。ストレージを入手したお陰で持ち運びの量は気にしなくてもいいので、傷癒草に限らず他の薬草類も積極的に採取していく。
それなりの時間を掛けて、かなりの量の傷癒草を採取できた。これでまたいくらかのポーションを供給できるようになるだろう。
そういえば他の採取者とは会う事がないなと、帰路の途中で気付いた。【調薬】持ちが少ないというのは聞いていたが、一度くらいは出会っても良さそうなのに、出会うことがあるのは狩りに来ているプレイヤーや住人の狩人くらいだ。まあ、採取場所が違うからだろうけど。
「ん？」
それに気付いたのはアインファストまであと半分くらいまで歩いた時だった。後方から近づいてくる音がある。
振り向いて【遠視】を使うと、こちらへ駆けてくる幌馬車が３台。２台の後に少し離れて１台が続いている。かなりの速度を出してるな。
『フィスト！ ちょうどいいところにっ！』
次の瞬間、ルークからのチャットが飛び込んできた。あ、よく見たら最後尾の馬車はルーク達のだ。
『馬車２台、何とか止めてくれ！ そいつらが今回の犯人だ！』
『って、ヘマったのか？』
『ヘマったというか、目星を付けてた連中を制圧した直後にやって来たんだよ！ イレギュラーだ！』
ああ、他の場所で活動してた奴らが合流してきたのか……そりゃ運が悪かったな……
『しかし別れて逃げればいいのにな。お前らは１台だし、２台は追えないのに』
『お前どっちの味方だっ！？』
悪党共の頭の悪さを指摘すると、ルークが何故か吠えた。いや、別にあいつらにアドバイスするつもりはないぞ……
『とにかく止めてもらいたいんだけど、できれば無傷で頼む！ どっちもよそで強奪したポーションを積み込んでるみたいなんだ！ それらになるべく被害を出したくない！』
ルークは平然と無茶を言った。いくら何でも爆走中の馬車を生身で止めるのは不可能だぞ。
『確約はできない。多少の被害が出るかもしれんが文句は言うなよ。最優先は犯人の身柄を押さえることだろ？』
『……分かった、なるべく、でいい』
悔しそうであったがルークも優先順位は弁えているようだ。犯人さえ押さえれば、しばらく混乱は続くとしてもポーションの供給は元に戻るのだ。商品の損害を気にして逃してしまう方が問題だ。
言質は取った。なら俺にできるだけのことをしよう。
『ミリアム、手を貸してくれ』
俺はミリアムへとチャットを送った。
『今から、２台の馬車の前に壁を作る。全速力じゃ避けられないタイミングで、だ。回避方向を誘導するように偏った配置にするから、速度が落ちたら包囲するように壁を作ってくれないか』
『……承知しました、準備しておきます』
続けてスウェインへもチャットを送る。
『スウェイン、俺とミリアムで馬を止める、あるいは速度をできるだけ落とさせる。その瞬間を狙って馬の動きを封じるのは可能か？』
『任せろ』
『頼んだ』
チャットを終わらせ、俺は腰のポーチからポーションを取り出す。ＭＰを回復させるためのマジックポーションだ。
馬車は真っ直ぐこちらへ向かってくる。俺がいるのには気付いているようだが速度も進路もそのままだ。まさか俺がルーク達と知り合いで、連携を取っているなどとは夢にも思っていないだろう。
「さて、始めるか」
完全に馬車へ向き直るようなことはせず、あくまで立ち止まって様子を見ている風を装ったまま、精霊語で地の精霊に訴える。
『大地に宿る精霊達よ、俺に力を貸してくれ』
俺の声と意志に応えて地面が盛り上がっていく。馬車の進路を阻むように、次々と壁というか土盛りができあがっていった。高さはせいぜい４０センチほど、幅も１つが５０センチ程度。たがこの程度の障害物でも、馬車が乗り上げたら大惨事になる。それを次々と馬車の予想進路上へ生み出していった。
配置は馬車が通り抜けられないくらいに開けてある。そして回避がしやすいようにやや偏らせておいた。逃げやすい方に逃げるようにするためだ。
馬車の御者は障害に気付いたようだ。慌てて馬を制御して速度を落とし、それらを避けるように馬を操る。
そこで初めて俺は移動した。全力で駆け、馬車の行く手を阻むように、精霊魔法の射程ギリギリのところから更に土壁を生み出していった。ＭＰが尽きると準備したマジックポーションを飲み干して回復し、途切れることなく土盛りを作る。やがて、馬車が身動きを取れなくなって止まった。行く手を遮り、旋回もできないように配置した土盛りが、馬車の機動力を封じたのだ。車ならサイドターンでもして方向転換できるが、馬車だとそうはいかないだろう。
「……あー、疲れた……」
持っていたマジックポーションは尽きて、ＭＰも限界だった。ギリギリ足りて助かった……
そうしているうちにルーク達の馬車が追いついて包囲を固めた。馬車を取り囲むように、土壁が次々と生まれていく。一度に出せる数が俺より多いし背も高く、配置も絶妙だ。流石はミリアム、βからの精霊使いの練度は半端ない。ＭＰも俺とは桁が違うんだろうなぁ。
『馬の動きは封じる必要がなさそうだな』
『ああ、ミリアムが上手いことやってくれたよ』
『助かったよ。後は私達に任せてくれ』
ルーク達が賊の制圧にかかったようだ。こうなったらあいつらに逃れる術はないだろう。走って逃げたところで、馬車で追われれば逃げ切れるものじゃない。俺はスウェインの言葉に甘えてのんびりさせてもらうことにした。
が、往生際が悪い奴はどこにでもいる。人相の悪い、いかにも悪党面の男が一人、俺の方へと逃げてきた。いや、違う。逃げてきたんじゃない。男の目には憎悪の色が浮かび、俺を捉えて離さない。こいつ、俺を狙ってきやがった！
【魔力撃】を発動――って、ＭＰが足りない……まずいっ！
「てめぇのせいでっ！」
怒りの言葉を吐き出しながら、男が手にしたバスタードソードを振るった。後ろへ跳んで何とか避ける。しかしそこでは終わらない。男は執拗に俺へと斬りかかってきた。
まずい、本当にまずい！ こいつは強い！ いつぞやのブルートのようにこちらを舐めてかかっていないから隙が無い！
太刀筋は鋭く速い。一撃は重い。【魔力撃】なしで何とか受け流していくが、篭手があっという間に傷だらけになっていった。
「死ねえっ！」
閃光のような刺突が俺に向けられた。避けられない、受け流せないと判断し、咄嗟に俺は右腕を盾にする。しかし男の刃は篭手を裂き、腕を抜け、ハードレザーの層すら突破して俺の右胸に突き刺さった。
「――っ！」
腕と胸に走った激痛に、俺は声をあげることもできなかった。致命傷を避けることができただけでも幸運だ。
「ぐ、っぞぉっ！」
痛みをこらえながら俺は右腕に力を込め、同時に右足で蹴り上げた。狙いは――
「ぐおっ！？」
刃を突き立てて愉悦に歪んでいた男の顔が、今度は苦痛と驚愕に歪んだ。男が剣を手放して離れる。
「てっ、ててめ……っ！？」
男は自身の股間を押さえ、内股になって、生まれたての子鹿のように震えている――可愛げは天と地の差だが。男の顔は蒼白で、しかしこちらを睨み付ける目の鋭さは一層増した。怒りや殺意は先にも増して膨れ上がっているが、身動きが取れないようだ。
ここで畳みかけるのが最善手なのは分かっている。しかし身体が動かない。胸からは抜いたが、バスタードソードは利き腕の右腕に刺さったまま。さっきの蹴りだって、本当なら蹴り潰せるくらいの威力が出せたはずなのに、痛みで腰が引けてしまったために中途半端な威力で終わってしまっていた。
（ぽ、ポーションを……）
男から間合いを取りながら、ポーションを取り出そうとする。少しでも回復して男を仕留めなくては。
なのに身体は動かない。痛み、そして殺されかけたという事実が恐怖になって、俺の意志を阻む。手が震えてポーチの口を開くのも容易ではない。畜生、とっとと動け俺の腕っ！
が、男の身体が前へと倒れた。その向こうには、既に見慣れたと言ってもいい顔がある。
「大丈夫かフィスト！？」
息を切らせたルークが、剣を片手に立っていた。助けに来てくれたのだ。シリアも一緒にいる。
助かった、そう思ったと同時、足から力が抜けてその場に膝を着いた。あぁ、何とも情けない……
「シリア、こいつを封じたらフィストの手当を！」
「了解」
ルークの指示に従って、シリアは呪符を１枚取り出すと、
「其は束縛の符。
言葉と共に男の後頭部に貼り付けた。呪符が淡い光を放つ。効果が出たのかどうかは分からないが、シリアはそれを確信したのか、男から早々に離れて俺に近づいてきた。
「大丈夫かい？」
「正直、ギリギリ……」
見栄を張る余裕もないので問いに正直に答えた。大丈夫だよ、とシリアがこちらを安心させるように囁き、今度は２枚の呪符を取り出した。さっきの物とは文字が違う。
「其は癒しの符。
右腕と右胸の傷に呪符を貼り付け、呪を紡ぐ。刹那、傷が温かい何かに包まれた。痛みが次第に和らいでいく。これが呪符魔術か……
「ありがとう、助かった」
礼を言うと、ん、とシリアが頷く。ホッと一息をついたルークが頭を下げてきた。
「ごめんフィスト。そっちに気を配れなかった俺の責任だ」
「いや、そっちが気付いてくれたから、俺は今、ここにいられるんだ。気にするな」
もしも援軍が来なければ、立ち直った男に俺は殺されていただろう。男は予備の小剣も持っていたし、さっきの体たらくでは俺の回復が間に合ったとは思えない。それにルーク達は大勢の敵を相手にしてたのだ。馬車が死角になってたこともあるし、全てに目が向かなかったとしてもやむを得ない状況だった。死んだところでアインファストの大広場へ死に戻りするだけだが、死の体験などしたくないのが正直なところだ。この世界で生きているという認識でプレイしている以上、死を前提とした行動は取りたくないしな。
ルークが気付いてくれたお陰で俺は助かった。だったら、それでいい。
さて、この場のことはいいとして、だ。今後どう事態が動くかな……進展があればいいが。
それから……もっと強くならなきゃな……