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備忘録の5
ばあちゃんがおばさんに言った言葉にボクは絶句した。
「これはあんたの嫁入り道具にすればいいよ」
柄がバラバラの湯飲み茶わん10個と、タダでもらった大量の景品グラス。
段ボールにどさっと入った状態で家の外の倉庫に眠っている。
「あれが嫁入り道具か」
腹をかかえて笑いたかったが、御年54歳のおばさんは口を開けたまま、死んだ魚のような目をしていた。
そう。冷凍マグロを立たせたような直立不動で。
「私ひとりで旅に出ることにするわ」
おばさんがそう言うとばあちゃんは、
「旅行なら、私も一緒にいくよ!ふたりで楽しもう」と。
おばさんは小さな声でつぶやいた。
「勘弁してくれ」
嫁にも旅にもしばらく行けそうにはない。