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備忘録の11

ボクのばあちゃんは、じいちゃんが亡くなってからというもの、おばさんにじいちゃんの役割を求めるようになっていった。


例えば、玄関先の松の木の巣。


ばあちゃんの家は、玄関の扉を開けると、門の脇に松の木が生えている。

たいそうご立派なうねりをしているのだが、そのうねりをいいことに、カラスが巣を作る。

じいちゃんが健在のときは、巣ができそうになったら、余計な枝を切ったり、できかかっている巣を棒で突っついて壊していた。


だけど、もうじいちゃんはいない。


となると、ばあちゃんはおばさんに頼む。

レースのカーテンを開き、窓越しに松の木を見て

「あら、巣、できそうだわ」

と、ラジオを聴かせるかのようにボソッとそれとなくおばさんの耳に入れる。


気になったらしょうがなくなるおばさんは、洗濯干しの2メートルくらいある緑の棒をベランダから持ってきて、「えい、えい」と、ちゃんと言葉にしながら、つつく。


巣が壊れているのかはよくわからないが、とりあえずばあちゃんは、おばさんの「えい、えい」という言葉を聞いて何かやっつけているような感じに満足する。


洗濯干す緑のぼっこってそういう使い方もあるんだと、口をあけて目の当たりにする小学生のボク。


そういえば最近あまり見かけない、洗濯干す緑のぼっこ。

まだあるのかな・・・。






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