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日々-おまけ

 答え合わせです。名前消せという人は言って下さい。あと敬称略。

 数字が書かれていた方で抜けてるぜという人は教えてくれると載っかるよ!


 ニンブルは新しく作られた皇帝の執務室を前にする。扉は重い作りであり、囚人の拘置所を思わせる。周囲には魔法使い、神官、近衛などが目を光らせている。それだけではない。盗賊という判断が間違っていないだろう者や、レンジャー風の者。そういった感知力に優れた者も多く控えている。

 一種異様なその景色は、どれだけ警戒をしているか、何を警戒しているかが一目瞭然である。

 アインズ・ウール・ゴウン辺境侯。

 強大すぎて何も言えなくなるほどの魔法を使う存在であり、恐らくは個にして数国を滅ぼせるだろう力をもつ化け物の中の化け物。そのおぞましき素顔はニンブルの心に強く焼き付いている。

 そんな強大無比な存在に対して、これらの対策が効果を発揮するかは不明だが、それでも警戒はおこたれない。


 ニンブルは前に立ち、合図を送ることで扉は重くゆっくりと開く。

 瞬間、周囲の者達が一斉に警戒態勢に入った。知覚力を全開で解放し、どのような者が接近しても即座に発見するという態度を示す。


 人1人が入るのがやっとという隙間にニンブルは体を滑り込ませる。

 部屋にはジルクニフと4騎士の1人、扉の開閉を行う近衛が2人。そして主席魔法使いとその部下。計6人の姿しかない。

 窓がないために魔法の光源によって照らし出されている部屋は息苦しさすら感じさせる。実際、空気が僅かに淀んでいる気がするのは間違いないだろう。


「……愚か者」


 部屋に入ってのジルクニフから投げかけられた最初の言葉はそれであった。それが何を意味しているか理解しているニンブルは深く頭を下げる。


「申し訳ありませんでした、陛下」

「お前の報告であったが、あそこはメイドを庇い、アインズに帝国の法律を何処まで守る気があるのか伺うべきだった」

「誠におっしゃるとおりでございます。申し訳ありません」


 ジルクニフはニンブルの謝罪を前に、深くため息をつく。


「……しかしお前の考えも理解できる。アインズが腹を立てれば、帝国が崩壊するのではと思ったのだろ?」


 その通りだ。

 あのアインズという存在の力を目の前で見たニンブルは今でも恐ろしい。

 あの王国の兵を虐殺した強大な魔法が帝国に向かって放たれれば、この国は終わりだと理解しているために。

 だからこそ引くしかなかった。アインズの憤怒が帝国に降り注がないために。


「まぁ、私が行くべきだったな。それをお前に任せたための失敗だ。お前ばかりは責められん。今回は仕方がないといえよう。それとお前が手に入れた情報だが……」


 ニンブルはナーベラルというメイドから得た情報を思い出す。

 ナザリックには守護者と呼ばれる、アインズに匹敵するだけの化け物が幾人かいる。その中で最も忠誠心が低いのはアウラという名のダークエルフで、異形しかいないナザリックでは浮いている存在だということ。さらには古参の守護者である存在と仲が悪いため、肩身の狭い思いもしているとのこと。

 彼女がアインズに協力しているのは、ダークエルフ達の安全の確保のためにだということだ。

 それはもしかすれば帝国が、アインズに匹敵するだけの切り札を獲得するチャンスを得られるという情報。

 しかし不安がある。それはその情報が真実であるか不明だと言うこと。だからこそナーベラルに深く追求せず、浅いところでニンブルは下がったのだ。


「この羊皮紙を見るが良い」


 ジルクニフが投げた羊皮紙を広げ、ニンブルは眺める。

 羊皮紙には幾人もの名前が書かれていた。


 Satsuki、higasii、クロル、燃える天空、ぷーりん、ルメス、カメムシ惜しむメカ、空、らた、水月、エミ、baba熊壱号、パパ、baek、オラクル、ハロハロ、ミケ


 だが誰1人としてニンブルの記憶にある名前はない。しかし頭を働かせるまでもなく、何らかの偽名だろうという予測が付く。つまりはこの羊皮紙が何者かの手に渡ることを警戒して。


「これほどの者達がアインズの取っている手が罠だと判断している。我が国にも優秀な者たちもいるじゃないか。見事だ」


 ジルクニフは満足げな笑みを目にし、その言葉を聞き、ニンブルは自分が手に入れた情報が辺境侯によって差し出された危険物だと言うことを知る。

 二つの考えの間で迷い、そこまで思い至らなかったニンブルは羞恥を感じた。だからこそ挽回するつもりで問いかける。アインズの策を読んだと言うことは、こちらにチャンスが回ってきたということであると考え。


「ならばそれを逆に利用して」


 問いかけられたジルクニフは冷ややかな笑いを浮かべる。


「まさか。それを行うには危険すぎる。策というものは剣での斬り合いにも似ているものだ。1つのミスが傷となる。しかし強者にとっては掠り傷だが、弱者にとっては致命傷となることは往々にしてあること」


 何より力を発揮すれば全てをひっくり返させるアインズは規格外すぎる。帝国の皇帝であり、最高権力を持つジルクニフですら、その手に持つ見窄らしい武器でアインズに致命傷を与える難しい。

 その思いを鋭敏に悟り、ニンブルは深く頭を下げた。


「何よりアインズは頭が切れる。今回の情報でこちらの動きを完全に止めたのだからな。本当にアインズが完全に組織を支配しているか、こちらから調べることが出来なくなった」

「なるほど……」


 罠かも知れないという疑心暗鬼が、帝国サイドの謀略を完全に押さえ込んでしまう。

 ニンブルはたったあれだけの情報を流すことで、帝国の動きを止めた辺境侯。そしてそれを読んだジルクニフ。そして同じく見破った帝国の臣下に敬意を抱いた。


「まぁ、そんな訳でしばらくはあまり本腰を入れて調べるのは止めて、アインズの鎧を剥ぐか、持つ武器を強化するしかないないな。取り敢えずは地に伏せて隙をうかがうとしよう」

「はっ!」

「そしてその前に幾人か帝国に反旗を示そうという意志が見受けられるものがいた。アインズの強大な力に魅せられた者だろうな。それらの者は別の羊皮紙に記載してある。早急に調べ上げ、場合によっては首を切れ」


 首を切れは追い出すなどの比喩ではない。何らかの罪を捏造し、断首しろということだ。鮮血帝と言われているのはこういった面を平然と見せるからこそ。

 レイを代表とされる、既に泳がせている者以上に必要はない。帝国の害悪は即座に切って捨てる。

 ジルクニフの冷徹な瞳を目にし、ニンブルは深く頭を下げるのだった。



次回は本当に未定。また明後日から忙しい!

あと首を切れって言った対象は、感想欄でそういうことを言っていた人です。本編には関係ないのであしからず。

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