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その後のおまけ(ギャグ&イラスト注意)

「何もそこまで悩むこともないと思いますが。相手が男性なのが貴方にとっての問題なら相手のそれをとってしまえばいいではないですか」


 ディートヘルトの屋敷でひらいていた酒の席でぽつりとレヴィンが言った一言に、ディートヘルトは盛大に机に頭をぶつけた。

 かなり酒を飲んでしまったのでお互いかなり酔った状態だ。


「な、何をしているんですか!?」


 と自分の酒とつまみをちゃんと両手に抱えて退避させつつ、抗議するレヴィンにディートヘルトが、がばっと立ち上がり


「お、お前こそ何を言っているんだ!?私の一方的な恋慕のために相手の体の一部をとれなどとっ!?」


 その言葉にレヴィンは「これだからあなたは生真面目なのです」とため息をつきつつ


「貴方が男性と知らずに惚れたのは神美舞(女装した男性の高級娼婦)でしょう?

 本来は男性なのに女性姿でゴルダール領主と会話をしているのに、誰も咎めなかった。

 つまり、周りもそれが当然だと思っていた。

 有名な神美舞だったため、周りも紹介しなくても知っているだろうと、咎めず、貴方だけが男と知らないまま、接していたくらいしか説明がつきません」


 その推理にディートヘルトはため息をつく。

 そもそも体は女性で中身の魂が男だったなどと説明ができるわけがない。

 そのことはメフィストに固く口留めされている。

 だがここで否定してしまうと、レヴィンにではどういう状況で一体誰なんだと説明を求められてしまうととても困る。ここはレヴィンに話をあわせておいたほうが賢明だろう。


「……まぁ、それはそうだが……」


「娼夫が相手の希望でとり、女体になるための処置をうけるくらいは普通にあります。

 貴方が本当の女性ではないといけないこだわりがあるならともかく、愛人の一人として召し抱えるくらいなら、とってしまえば問題ないと思いますが……」


「レヴィン、お前な簡単に言うが、いくら何でもそんなことを無理強いできるわけがないだろう」


「神美舞ならよくあることです。それにあなたのような地位の者に現役中に高額で身請けされることは名誉な事なのですから、皆喜んで……ああ、それとも問題は資金ですか? たしかに人気のある神美舞は身請けだけで小国の国家予算並みになることもありますからね。そのようなものを身請けしたとなると、領主として資金の使い道について批判がでてしまうのは確かにありますね」


「いや、問題はそこじゃなくて……」


「任せてください。ちょうど目障りな商会がいくつかありますので、そこに罪を着せて、取りつぶし、その資金を流用しましょう。私が貴方の身請けに正当性がでるようにきちんと演出してさしあげますから。次までに複数プランを用意しておきますよ」


 ウィスキーの入ったグラスを嬉しそうに持ち上げて言う。


「……貴公、人の恋路の手伝う風を装ってその商会をつぶす口実がほしいだけだろう」


 薄目で睨むと、レヴィンはうれしそうに「酷いですね。私は貴方の手伝いがしたいだけなのに」と笑う。


「とにかく、手伝いは結構だ。相手の意思を無視した身請けなどするつもりはない」


 そう言ってため息をつくと、レヴィンは視線を窓辺にうつすと


「……娼夫に意思などあってないようなものですがね」


 ぼそりとつぶやいた。


「……レヴィン?」


「いえ、なんでもありません。あなたは本当に変わっていますね」


「え?」


「もうすでにあなたの地位は帝国皇帝をしのぐのに、相手の意思を尊重するなど。

 権力で手に入れられるものなら手に入れてしまえばいいではありませんか」


「……恋とはそういうものではないだろう?私は相手の意見を尊重したい」


「……そういうものでしょうか? 私だったらきっと無理にでも自分の物にするでしょう。

 女性など金銭と周りの女性のうらやむような環境を適当に与えておけば満足するはず」


 うつろな目でウィスキーグラスを見つめるレヴィンにディートヘルトがため息をついた。

 誰よりもセシリアの意見を尊重するために尽くして命まで捨ててたお前が言うなという言葉を飲み込む。


「実際恋をしてみなければわからんだろう」


 と、酔って寝かかっているレヴィンの頭にぽんっと手を置いた。


「この歳で恋ですか。

 いままで人を愛することができなかった私に恋する日など訪れますかね。

 それにしても残念です。貴方が了承してくだされば、複数目障りな奴らが潰せたのに」


「……また物騒な事を」


「貴方が品行方正すぎますからね。裏方が物騒なくらいがちょうどいいと思いませんか?」


「お前が汚れ仕事を勝手に処理しすぎだ。少しくらい相談しろ」


「私はアドバイザーであって、貴方の部下ではありませんから。報告義務はないと思います」


「ああいえばこういう」


 ディートヘルトが頭をかかえると、レヴィンは笑う。


 後日、恋愛などという難問に自分が頭を悩ませることになることなど知らずに。



(以下イラスト(イメージ崩壊注意)です!!!)



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挿絵(By みてみん)


※ヤンデレ立場逆転

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