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46話 貴方の望む未来を(3)

――どういうことだ、レヴィンっ!!!――


 悪魔化したメフィストはレヴィンに問いかけた。

 シャルネに触れたと思った瞬間、突然メフィストとレヴィンはシャルネ側に引っ張られた。


 あまりに突然の出来事で、メフィストは対応できず、シャルネの体で悪魔化してしまったのだ。なかばシャルネの意思に引きずられながらエルフ達を倒しながら心の中でレヴィンに問う。


 おそらく、悪魔化した悪の権化シャルネを倒した金色の聖女セシリアを演出するための彼の策略だということは、メフィストにもすぐわかった。

 この展開をも、彼が裏で手を引いた結果なのだろう。


―― だとしても、だとしたら 僕はどうなるの?――


 まさか、あの泣き虫女のために、倒されてやれとでもいうつもりだろうか?


 せっかく気にいってたのに、レヴィンまで僕を裏切るなんて。

 みんなそうだ、僕が気に入ったものはみんな裏切る。

 やっぱり信じちゃいけなかったんだ!

せっかく悪魔になったのだから悪魔らしくしていればよかったっ!!!


『拗ねてるのか?』


 レヴィンの声が聞こえた。


―― 拗ねてる? 当たり前じゃないか! 君という人間がよくわかった!

愛しいセシリアのためなら、一時期仲良かったくらいの相手は簡単に犠牲にする!

僕は絶対君を許さないっ!!! 

まずは君の大事なセシリアの命をうばってやる!――


メフィストが吠えて、周りにいたエルフを尻尾で払う。


『メフィスト、俺を信じろ。お前と俺は一心同体なんだろ?』


 まるで嘲笑う声にメフィストは歯ぎしりする。


――セシリアに倒させるために、悪魔化させておいてよく言うよ!何を信じろっていうのさ!!――


 ディートヘルトと馬にのってメフィストに方に向かってくるセシリアに視線をちらりと向けて問う。


 セシリアの力なら、メフィストを滅ぼすのだって無理じゃない。


 昔、メフィストは天使だった。

 手を出しては駄目だといわれた神の箱に手を出して、間違って下界に降りてしまった天使。けれど、メフィストは下界を気に入った。だから人間やエルフに施しを与えたし、彼らとも仲良くなった。


 けれどそれが間違いだった。


 メフィストは天使の力を欲した海底神殿のエルフ達に実験され、天使の力を奪われ闇に呑まれ悪魔になってしまった。エルフ達は悪魔化したメフィストに滅ぼされ、歴史上から姿を消した。


 その後海底エルフを全て葬ったあとはただ目的もなく彷徨い、まだ悪魔として不完全だったメフィストは聖者によって魔道具に封印されたのだ。


 何もない暗い暗い暗い虚無の世界の魔道具に。


 怖かった。寂しかった。悔しかった。惨めだった。


 助けてと何度叫んでも誰も助けてくれない。


 長い長い年月。


 いつしか声も枯れはて、希望もなくし、虚無になりかけていた。


 そこでレヴィンに呼ばれた。


 嬉しかった。けれどもう騙されないとも誓った。

 騙されて酷い目にあったんだ、今度は僕が騙して酷い目にあわせてやると。

 だからセシリアを生かし、最後に生きていると教えて絶望に陥れてやるつもりだった。


 でも結局彼を気に入ってしまったのだ。


 ――それなのにまた裏切られるなんて――


 シャルネの意思で動いていた体はエルフの皇子を、攻撃しようとしたところで、セシリアに攻撃をはじかれる。そして皇子と悪魔との間に入って来たセシリアに視線を向けた。


――そんなに大事なら僕が奪ってやるっ!!!!――


 わずかに残っていたシャルネの意思を、メフィストは乗っ取った。

 そして目の前にいるセシリアを攻撃しようとした瞬間。


『メフィスト!!!!契約の力だ!!!俺を全力で攻撃しろ!!』


  悪魔の身体から抜け出し宙に舞ったレヴィンの魂が叫んだ。


――このタイミングで契約の力だと!?まさか力を使わせて、セシリアに攻撃させるつもりか!?――

 

 レヴィンは本気で滅ぼすつもりなのだ。

 メフィストを。

 金色の聖女の演出のためだけに。


 信じてたのに。気に入ってたのに!


 君まで僕を裏切った!!!!


「れヴぃぃぃぃぃぃんっ!!!!!!」


 メフィストの怒りに満ちた全力の力が、空を黒く染めながら一条の黒い光となって貫いた。


 人間ごときの魂が全力の力に敵うわけもなく、レヴィンの魂は一瞬で消え去る。


 途端、内側から何か溢れてくるものを感じた。


――これはシャルネが内包していた金色の力?

  力を使いすぎたことによって、抑えきれなくなった!?――


 そして、


『悪魔メフィストに告ぐ!!!!誇り高き天使の力を!!!

 いま金色の力とともに光を解放し闇を振り払い浄化したまえ!!!!!』


 いつの間にか、メフィストの足元にきて手をついていたセシリアが唱えた。


――まさか、最初からレヴィンはこれが狙いだった!?――


 セシリアの言葉とともに悪魔は絶叫をあげ光輝くのだった。


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