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20話 白銀の聖女と伝説と(2)

 ばたばたと慌てだした兵士たちを横目に窓から外を見下ろすとそこにいたのは無数の魔物の姿。

 魔瘴から大量に沸いてでてきたのか物凄い大群が押し寄せてきている。


『凄いね。これも君の策略なわけかい?』


 見下ろしてメフィストが言うとセシリアは心の中で笑う。


『そうだと言ったらどうする?』


『え?まじでそうなの?君マゾなの?この数をどう相手にするつもりなのさ』


『まぁ、数が多くても問題ない。やれることをやるだけだ』


 騒がしくなった砦の様子を見下ろしながらセシリアは大量に押し寄せてくる魔物に視線を移した。


『言っておくけど、僕の力を倒す事に使ったらその分魂が消耗するからね?

 この数相手に僕の力を使えば君の魂は一気に消滅するから気を付けてくれよ』


『悪魔が心配してくれるのか?』


『当たり前だろ。せっかく契約したのに魂が食べられなかったら働き損じゃないか』


『それもそうだな』


『で、どうするんだいこの数』


『全て倒す』


『……それ、本気で言ってる? 

 言っておくけど僕の加護があるから無敵だと勘違いしているなら忠告するけど、魔族と悪魔は違う。

 僕だって魔瘴核の暗黒の力を浴びたら無事ではすまない。』


 呆れたようにメフィストが言うと、セシリアは笑う。


『そんなことは重々承知の上だ。さぁ、いこうメフィスト。

 白銀の聖女の伝説のはじまりだ』



★★★



「何故急にこのように急激に魔物が沸いたっ!?」


「わかりません、5日前の調査では魔瘴の濃度はかわらなかったはずです!!

 これほど異常発生しているとの報告もうけていませんでした

 斥候が戻ってこないところをみると、一気に沸いたのかと思われます」


 ディートヘルトの質問に騎士団長が答える。


「仕方ない。やるしかあるまい。ゴルダール領の存亡が今この時にかかっている」


「ディートヘルト様、聖女様にもお力をかりたらどうでしょうか」


 騎士団長が言うと、ディートヘルトは眉根を寄せた。


「あのようなか弱そうな女性を戦場にだせと? しかも彼女は病み上がりだ。

 無理をさせるわけにはいかない」


「砦が落ちてしまえばおなじです!

 彼女の魔法のコントールと、圧縮して放出する技を考えればかなりの使い手であることがわかります!

 彼女の力なら魔瘴核ももしかしたら」


「人間を数人相手にできたからといって、魔瘴核を壊せるわけがない。

 魔瘴核を壊せるのは『金色の聖女』のみだ。白銀の聖女の彼女では無理だ。

 お前は聖女様を逃がせ、これ以上我らの戦いに巻き込むわけにはいかない」


「ですがっ!!!」


 騎士団長が反論したその時


「その必要はありません」


 女性の声が聞こえて、ディートヘルトと騎士団長が振り返る。


「聖女様!?」


「いくら貴方が強いといってもこの数相手では無理です。おとなしく脱出を」


 ディートヘルトが気遣うように、セシリアの肩に手をおき、部屋へと導こうとしたが、セシリアはそっとその手をとる。


「ええ、正面から戦ったのなら無理でしょうね」


「……何か策があるのですか?」


「昔の文献では、魔瘴核は『金色の聖女』の遠征ではかならず大量の魔物を沸かせています」


「それが今何の関係が?」


「魔瘴核を壊したといわれる伝説の勇者の時もそうです。

 伝承では魔瘴核を壊すとき、必ず魔物が大量発生しています。

 おそらく近くに自らを脅かす脅威があると判断した場合、魔瘴核は大量に魔物を発生させるのです」


「……まさか」


「そう、魔瘴核は私を脅威に感じて大量に魔物を発生させたのかもしれません」


「な!?」


「それがわかっていて何故ここにっ!?」


 批難するように言う騎士団長にセシリアはふっと笑う。


「わかりませんか? 

 魔瘴核が私に脅威を感じたということは、私に魔瘴核を壊すことができるということです。

 これは窮地ではありません、魔物が大量に呼ばれたいまこそ、我ら人類が魔瘴核に打ち勝つチャンスです。

 魔物を召喚した力で魔瘴核自体は弱っているはず」


「ですが、この魔物の数です!近づけないのですから意味はありません!」


 大きく手を広げて騎士団長が訴えるが


「それは心配ありません。

 魔導士たちは魔の者の遠隔攻撃が私に当たらないように私に結界をはりフォローをお願いします。

 私は見晴らし台から『聖女の祈りの加護』を魔物に付与します」


「な!?何故、強さを増す『聖女の加護』を魔物に!?」


「これを」


 セシリアは言いながら持っていた書類をディートヘルトに渡す。


「これは……我らが神殿に提出した魔瘴核の魔物についての報告書……?」


「そうです。そこに答えがあるとおもいませんか?」


 ディートヘルトはセシリアに渡された報告書を読み、折られていたページにたどり着くとその手を止める。


「……なるほど、わかった。そう言う事かっ!? 

 魔法使いや白銀騎士たちは聖女様の加護が無事発動するように聖女様を全力で守れっ!

 黄金騎士我らは出陣の準備だ!聖女様の加護が発動し、敵が混乱している間に、聖女様を連れて魔瘴核を目指す!」


 ディートヘルトが大きな声で指示を飛ばす。その声にその場にいたものに緊張が走った。


「話が早くてたすかります。ディートヘルト様。

 加護を魔物に授けしだい私も黄金騎士団に合流し出陣します。護衛と核への案内をお願いいたします」


 そう言ってセシリアは見張り台に走り出した。



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