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12話 哀れなマリオネット(4)

「わが帝国から『金色の聖女』と『白銀の聖女』が誕生したことに祝福を!!!」


 帝都の城の舞踏会会場で歓声があがる。

 皇帝の挨拶のあとにシャルネとセシリアの挨拶が続き、会場が沸き上がる。


『金色の聖女様は大人気だね』


 歓喜にわく会場を眺めながらメフィストが興味なさそうにつぶやいた。

 セシリアは会場を見渡しながら目を細める。

 この舞踏会が終わったら謝罪らしいが、これでは単に舞踏会に連れ出されただけだなとため息をつく。

 

 皆シャルネの周りに集まり、セシリアの周りには誰も集まらない。

 

(さんざん悪評を流してくれたからな……)


 その様子にレヴィンはいらだちを覚える。

 シャルネに人が集まり、孤立したセシリアに優しく声をかける。

 哀れな姉に声をかける慈悲深いシャルネが褒めたたえられるのがいつものパターンだ。


 何故こんなわかりやすい嫌がらせをされても、セシリアはシャルネにすがっていたのか。

 どんなにレヴィンが説明をしても、「そんなことはない」と距離を置かれてしまって、聞いてもらえなかった。

 セシリアもシャルネの魅惑の魔法にかかっていたと考えると合点がいく。

 魅惑系の魔法は誘導できる程度で完璧に魅惑できるわけではないと、メフィストが説明してくれた。完璧にシャルネが全ての人物から崇拝されているわけでないことをかえりみれば、好意を寄せている相手をより強く誘導できるくらいだろう。


 それでもセシリアは完璧にシャルネの術中にはまってしまった。

 家族へのあこがれと切望が強すぎたのだ。

 セシリアが孤児時代に家族を切望していたことは知っていた。

 両親とそして兄妹。恋焦がれて憧れていたものが手に入る位置にある。それにすがってしまったことを責める気はない。

 自分レヴィンでは彼女の家族へのあこがれの穴埋めにすらならなかっただけだ。

 

 彼女の心を占めたシャルネに嫉妬を覚える。


『絶対惨たらしく殺す』


 心の中でつぶやくと


『男の嫉妬ほど醜いものはないね』


 とメフィストに突っ込まれる。


 そんな中――。


 ざわっ!!!


 会場の入り口からどかどかと甲冑に身を包んだ騎士が入って来た。

 

「聖女の祝いの席で一体何事だっっ!?」


 皇帝の一言で、入って来た騎士に衛兵たちが剣を向けて取り囲む。

 兵士に取り囲まれた騎士は深々と頭を下げると


「歎願にまいりました!!!

 ゴルダール地方にご慈悲を。どうぞ金色の聖女様のお力をもって魔の核の浄化を!!!!!

 我々をお救いくださいっ!!!」


 会場全体に響く声で叫ぶのだった。

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