番外編 書記と会計
「あ、中野先輩こんにちは」
生徒会の扉を開くとそこには後輩である古宮ひよりちゃんしかいなかった。
「おー古宮ちゃん。えと……一人?」
「はい、先輩は新条会長と共に別件、神崎副会長は選挙管理委員会です」
「そっかそっか」
とりあえず、ひよりちゃんの対面に座る。
「………………」
「………………」
スマホで用もないのにロインを開いては、通知なし、閉じる。
ロインを開く、通知なし、閉じる。
ツイスタ見る。特に興味なし、閉じる。
ネット開く、んーなにもないけどとりあえずスクロールする振りする。
それを繰り返す。
………………
……………………いや、だめだこれ気まずい。
ねぇ、どーすればいいの!? この沈黙が辛いんだけど!?
これが茜なら向こうから自然と話題を振ってくれたり、いつきなら昨日やったゲームの話とかできるんだけど…… 私、聖女ちゃんとほとんど面識がないからぶっちゃけなにを話せばいいのかわからない。
でも、うぅ……ここは先輩として私が言葉のボールを投げるべきか?
「……えと、趣味は?」
お見合いかよ……いつきのことばかに出来ないよこれ……
「え? 趣味……ですか」
う、聖女ちゃん優しい……こんな唐突な質問に真剣に考えてくれてる。
「そうですね……最近わかったことなんですけど料理かもしれないです」
へぇ、料理か……女子力高いなぁ……
「あ、そういえば。この前いつきが古宮ちゃんのだし巻きが好きって言ってたな……」
「そ、それは本当ですか!?」
「お!? お、おう……ほんとだよ?」
めちゃくちゃ食いついてきたんだけど!?
いつきの話題に対するくい付きエグくない?
そういえば、茜は新条会長、神崎さんは神崎副会長、私は中野先輩。まぁ普通の呼び方なんだけど、いつきだけは先輩って呼んでる……妙だな。
いや、まだ断定するのは早い……か? でも毎日晩御飯一緒に食べてるとか言ってなかったけ?
「……えと、古宮ちゃんっていつきのことどう思ってるの? 好きなの?」
「え? 好き……というか憧れというか……あの人といる時間は私にとって安らぎの時間なんです。だから失いたくない。そう強く思っている。それだけなんです」
……うわぁ、予想以上にクソでか感情だったんだけど。
なんかこう……イメージ的に『先輩!! 大好きです!!』みたいな真っ直ぐな好意だと思ってたんだけど、予想以上に湿度が高かった……
「中野先輩はどうなんですか?」
「え? 私? そうだなぁ……気が合う友達……かな? 一緒にいるといつもゆっくりと感じる時間があっという間に過ぎて、ずっと心の中に居座ってるみたいな?」
思ってることをそのまま言ったので、ちゃんと言葉になってるのか自信がない……
「……なんと言いますか、思ったより、おも……何でもありません」
え? 今、なにを言おうとしたんだろ? まぁいいか。
「あとは……いつきのダメな点って何だと思う?」
いつきの話題なら何でもノリノリで答えてくれそうだったのでもう少し突っ込んで見た。
「そうですね…。駄目な点というか、真っ先に思い浮かんだのは突然どこかへと消えてしまうところ……が大嫌いですかね?」
「あ、わかるわかる。勝手に助けておいてこっちがお礼を言う前に姿を消すよね『もう俺居なくても大丈夫だろ? じゃ!』みたいな感じでさ」
「そう! そうなんですよ……!!」
白熱した話合いはしばらく続いた。
「ただいま〜あれ双葉とひより来てたのか……ん?」
「どうしたの? いつき」
「あーいや……なんか二人仲良くなった?」
「さぁ、どうだろ?」
「さぁ、どうでしょうか?」