第43話 ぼっちの誘い方(前編)
引きこもりJK中野双葉の夜は遅い。
現在深夜3時、私はベッドで寝転びながらスマホをいじっていた。
今日は授業中ずっと居眠りしていた為、眠ることが出来ずこうして夜遅くまで動画やSNSを見たりしている。
あー早く寝ないと明日に響くのになぁ〜(棒読み)
「お、この映画めっちゃ面白そう」
動画の最中で流れたある映画の広告に興味を惹かれた。少し調べて見るとエロゲーが原作らしい。
原作を調べると泣きゲーだと絶賛されていた。
ネタバレに気をつけながら映画の感想を見ると中々に評判が良い。
今まで映画は一人で見た方が面白い派だったんだけど、最近は少しそうじゃないかもと思い始めている。
「……いつき誘って見に行こうかな?」
私は以前、佐藤一樹と一緒に映画を見に行ったことがある。
一緒っていうか、たまたま映画館で出会って席が隣同士だっただけなんだけど。
それでも、映画を見終わった後の晩御飯を食べながらの感想会は楽しかった。
感想や考察など白熱し、閉店時間まで居てしまったのは良い思い出だ。
……うん。一緒に見に行こう。
いつきとなら面白ければ普通に盛り上がるし、つまんなくても愚痴とかで盛り上がれそうだしね。
……ん? ということは……誘うの? 私が? いつきを?
…………どうやって?
いやいやとその疑問を振り払うかのように首を振る。
何を言ってるんだ私。そんなのいつも通りに誘ったら……誘っ……たら……
……
…………
………………ない!! 私、これまで自分から遊びに誘ったことが一度もない!!
どこかへ出かける時はいつもぼっちだし、茜と一緒に行くスタバーも茜から誘ってくれるし、自宅で映画見たのもいつきからの誘いだったし……!!
そう、思い返してみれば私、中野双葉はいつもは誘われている側だった。
つまり、遊びの誘い方がわからないのである!!
考えてみたら、友達もろくにいない私が誰かを遊びに誘うことなんて出来る筈がない……!!
しかも原作がエロゲーだしっ
現代っ子の私は即座にスマホで調べた。
「え、ちょ、『映画 誘い方 女から』って調べたら映画デートって出てくるんだけど……!!」
い、いや、別にデートとかじゃないし! で、でも……ネットにはデートって書いてある……!!
気になる男子。デートに誘う。友達以上へのステップアップ。付き合う。即OKのテクニック。
「ぐ、ぐわああああああああああ!!」
調べるほど出てくる単語は引きこもりぼっちである私にはキラキラしていて深く刺さるものばかりだった。
え!? 映画に誘う時はロインはNG!?
はぁ!? なんで!? なんで文明の力に頼っちゃだめなの!? この記事書いたライターバカなの!?
全く、ネットの浅い知識に頼った私が馬鹿だったよ……
で理由は? こんなん私が論破してやんよ。
えーと? ロインだとどうしても言葉が迫力を持ち『デート感』が強くなって相手が警戒しがちになる? 考える時間を与えるとめんどくさがってやめる方に思考が流れる……
…………い、一理あるかもしれない。
翌日
「……んあ?」
昼休みが始まるチャイムで目が覚めた。
い、いつきは……? あ、いた。
私が徹夜して考えたプランは
①とりあえず昼ごはんに誘う。※食べる場所は人気がない屋上がベスト。
②ご飯を食べながら会話をしながら映画に関する話を切り出す。
③映画に誘う。
まずは①である昼ご飯に誘う!! 屋上の鍵も茜に貸してもらっている。あとは実行するだけ。
いつも通りにいつも通りにいつも通りに……
「お、双葉おはよー」
ドン!!
いつきを逃がさないように壁ドンして追い詰めた。
ふ、我ながらナイスアドリブ。
「え、えっと? 双葉?」
「あっ、あ、い、いつきぃ……へ、へへ。い、今から屋上どう?」
「えっ? お、屋上……?」
どこか困惑したような、恐れているような顔をしているいつき。
あれ? 何か思ってたのと違う……
いつもなら、こう……なんか察してついて来てくれる流れじゃん!!
ど、どうしよう……こんなの私の台本にないんだけど!?
「あ、えっと……あはは!! それじゃいこっかぁ!!」
「え!? 怖い怖い!! なんで理由はいってくれないんだ!? しかもなんで笑ってるんだよ!?」
とりあえず、なぜか怯えているいつき無理やり連れ出して屋上へと向かった。