第33話 茜の不安
明日はいよいよ立候補者演説の日だ。
演説の出来次第で生徒会選挙の結果が決まると言っても過言じゃない。
現在のアンケートでは私の支持率は1位。古宮ひよりに少しだけだけど勝っている。
これは一樹の演説の効果が絶大だということを物語っていた。
一般家庭の私では取り込めなかった層もあの『神藤一樹』が支持しているのならと支持者が現れた。
見向きもしなかった人たちも私に注目し始めている。
今までは古宮ひより一強だったのがたった数十分の演説で一変した。
お姉ちゃんや一樹と考えた演説内容は我ながらいい出来だと思うし、台本も頭にしっかりと入っている。演説のテクニックもあいつに教えて貰ったし、準備は完璧。
このまま何も起こらなければ私は生徒会長になれるだろう。
だけど一つ私には大きな懸念があった。
それは私のあがり症だ。
いつきが隣で励ましてくれた朝礼のおかげで自信がつき、全校挨拶くらいならなんなくこなすことはできるようになった。
でも、今回は緊張のレベルが違う。
それに練習通りの100%を本番でもすることはとても難しいことだ。
練習では凄いパフォーマンスを出せるのに、本番ではそれが活かせない。そんな人はこの世の中たくさんいる。
私は特に本番により生じるストレスに弱い。
だからこそ、あれほどの演説を平然とこなしてみせたいつきの姿は衝撃的に映った。
なんだか、あいつが遠い存在のように思ってしまった。
そういえば私、転校して以降のことを何も知らないのよね。
『神藤』だったこととか色々と知りたいことが沢山ある。
そして一番気になるのは……
あいつと古宮ひよりの関係について!!
え? なに? なんなのよあれ!! あのネクタイ結ぶやつ!! しかも人前で堂々と!!
私だってあんなベタなことしたことなかったのに!!
それにあいつもあいつよ!! なんで普通に受け入れてるのよ!?
家がお隣なり同士ってだけじゃ絶対あんなんにならないわよ!!
あの様子じゃあ少なくとも古宮ひよりはいつきこと好きね。女の勘が言ってる。
看病しただけとか言ってたけど、絶対それだけじゃない。古宮ひよりがあいつの見る目はもっと……
少なくとも看病くらいじゃあんな目は出来ない。
それに、それによ!? 神崎紫音さんとも絶対何かあるでしょ!?
あの二人もなんか二人だけの空間みたいなものを作ってたし!!
ただの元会長と副会長だけではない気がする。これも女の勘。
ぐぅぅぅ……!! 決めた!! 選挙が終わったら聞いてみよう。いつきのことを。
知らなかったことが沢山ある。だけど、それはこれから知っていけばいい。
でもその前にやらなくちゃいけないことがある。
今回の選挙は絶対に負けるわけにはいかない。
これは私が変わるための大きな第一歩なんだ。
私は再び台本を読み始めた。