GⅠ阪神ジュベナイルフィリーズ

『農林水産省賞典　阪神ジュベナイルフィリーズ　GⅠ　芝　外回り　1600ｍ　18頭。

　今年も２歳牝馬の女王を決める日がやって参りました。スタンド向こう正面のスタート地点では、各馬のゲートインが始まっています。

　人気タレントである大泉笑平オーナーの持ち馬として、テレビニュースで度々取り上げられています注目の一番人気、大外18番バインバインボイン。

　今は落ち着いた様子で各馬のゲートインを待っております。

　注目馬と言えばこの馬も忘れてはなりません、三番人気16番シマヅサンバ。九州産馬初のGⅠタイトルを狙います。

　二番人気は3番ノバサバイバー。本日鞍上は二宮騎手に乗り替わり。ゲートの前で少し立ち止まってしまいましたが、無事誘導され収まりました。

　各馬順調にゲートイン進みまして、最後に18番バインバインボイン。他の馬のゲートインを見届けてから、ゆっくりと自らのゲートに進みます。

　秋競馬の終わり近づく２歳牝馬頂上決戦。女王の系譜にその名を刻むのはどの馬か。

　阪神ジュベナイルフィリーズ……スタートしました！

　各馬一斉に飛び出しました。好スタートを切ったのは16番シマヅサンバ。しかしポジションは取りに行きません。最後方からレースを進めようとしております。

　先頭集団を率いるのは4番ベビーノベル。ダッシュがついたベビーノベルがいきました。先頭を走るベビーノベルの1馬身後ろに6-7頭が続き、先頭集団を形成します。

　一番人気バインバインボインはその先頭集団の真ん中。真ん中に付けました東條騎手。先頭集団に囲まれた状態でバインバインボインは現在5番手。

　二番人気ノバサバイバーは、おっとここにいました。中団よりやや後方。番目としては12～13あたりか。

　乗り替わりの二宮騎手とノバサバイバー、意外にも折り合いがぴったりとついております。中団の後方に控えながら内ラチを進む。

　そして最後尾に回りました16番シマヅサンバ。鞍上山田騎手、懸命にシマヅサンバを抑えております。

　これはシマヅサンバがもう前に出ようとしているのか。山田騎手懸命に抑えながら我慢の競馬です。

　さあレースは中間800ｍを過ぎました。先頭に大きな動きはありません。ベビーノベルが1馬身差を保ったまま先頭。バインバインボインは6番手7番手あたりに番目を下げつついまだ馬群の中。

　第3コーナーに差し掛かろうというところ。馬群は徐々に横へ横へと広がりを見せながら、各馬出だしを窺っているといったところか。

　第4コーナーカーブ。いまだ先頭はベビーノベル。しかし後続も上がってきている。

　馬群の陣形は横に広がりながら縦幅を縮めています。いまだそこから抜け出す馬は現れません。

そしてその馬群から一頭外れた位置に16番シマヅサンバ。横に大きく広がった馬群のその更に外側から、シマヅサンバが上がってきています。

外へ外へと膨れるように走りながら、中団に並びかけ現在8番手。

　一番人気バインバインボイン、二番人気ノバサバイバーは未だ馬群の中。まさかこのまま沈んでしまうのか。

　まだ大きく仕掛ける馬は現れません。出走したすべての馬に勝ち目が残ったまま残り400ｍ。混戦の様相を呈して参りました。この最終直線で混戦から抜け出すのはどの馬か。

　先頭はベビーノベル。未だにベビーノベル先頭。大きく外を回るシマヅサンバは先頭に間に合うのか。……ここでバインバインボインだ！

　中からバインバインボイン！　進路を遮っていた前２頭の隙間から、他馬を押しのけるようにしてバインバインボイン前に出た。強引に抜け出した。

　そしてそのまま先頭ベビーノベルに並びかける。いや、並ばない。

　ベビーノベル失速！　ベビーノベルここまでか。失速した逃げ馬をじりじりと追い抜き、バインバインボインがついに先頭に立った。

　東條騎手の鞭が入る。バインバインボイン後続を突き放しにかかる。

　あっとだがここで、ここでシマヅサンバ。大外からシマヅサンバが迫る。なんということだ。凄まじい追い込み。注目馬２頭による先頭争い。

２頭の差は1馬身差で残り200ｍ！

　追い抜けるかシマヅサンバ。粘り勝つかバインバインボイン。勝つのはどっちか。勝つのは、……内からぁ！　最内のラチからノバサバイバーが駆け上がって来たぁ！

　驚異的な末脚。瞬く間にバインバインボインと一馬身差に迫る。シマヅサンバとバインバインボインの差ももう半馬身残っていない！

　逃げ切れるかバインバインボイン、粘り切れるかバインバインボイン。

　最内をノバサバイバー、大外をシマヅサンバ、ど真ん中にバインバインボイン。

　阪神競馬場のコースを横に目いっぱい使っての先頭争い。

　この3頭だ。今日のレースはやはりこの3頭だった。

　人気馬がその勢いで逃げ切るか。九州産馬の夢叶うか。エリートの才能が全てを掻っ攫うか。

　先頭に２頭が迫る。シマヅサンバとノバサバイバーはもうほとんど横並び。残ったクビ差を守り切れるかバインバインボイン。抜かれるのは時間の問題か。

　しかし、しかしゴールが近い。ゴールが近い！　もうクビ差も残っていない。辛うじてアタマ差。ほぼ三頭横並び。

　だがもはや抜け出せるだけの距離が残っていない！　3頭横並び！　3頭横に並んだまま！　大混戦のまま今ゴール！！

　そしてゴールと同時に、バインバインボインを他２頭が抜き去っていく。

　どうだ。これはどうだ！？　実況席の角度からですと、アタマ一つ分バインバインボインが前に出たままゴールしたように見えました。

　しかしゴールとほぼ同時に、シマヅサンバとノバサバイバーがバインバインボインを抜き去りました。

　掲示板に『写』の表示が点きます。写真判定です。1着から3着までの着順が写真判定に……ん？　いや、失礼しました。

　掲示板のトラブルのようです。掲示板に馬の着順が表示されておりません。

　また写真判定のランプは点灯していますが、これは２着、３着の着順について判定です。

　現在掲示板のトラブルのため着順が表示されておりません。

　2着、3着についてもまだ写真判定中です。機材トラブルにより掲示板に馬の着順が表示されておりません。

　お手元の馬券はお捨てにならず、着順の確定をお待ちください。繰り返します。着順が確定するまでお手元の馬券はお捨てにならず、そのままお待ちください。

　おっとここで。場内カメラが撮影したゴールのスローモーション映像が映し出されます。

　スローモーションですと、僅かにですが、ノバサバイバーがバインバインボインよりも先着しているようにも見えます。

　しかしこれはあくまで場内カメラの映像。カメラの角度によって見え方は変わります。

　結果を待ちましょう。……ようやく掲示板が復旧！　写真判定のランプも消えた。着順が出ました！

　今着順が確定しました。１着は……バインバインボイン！

　今年の２歳女王はバインバインボイン です！

　東の牝馬が1番人気の期待に応え、関西のエリート馬を、九州の刺客を、見事に退け女王の栄冠を掴み取りました！

　2着はアタマ差でノバサバイバー。3着は2着にハナ差でシマヅサンバ。4着は……なんでしょうか、場内にどよめきが。

　あれは……バインバインボインです！

　レース後直立不動で静止していたバインバインボインが突然走り出しました。

　スタンド前を駆け抜けております。観客席からは大歓声。

　あれはウィニングランのつもりなのでしょうか。しかし東條騎手、突然馬が走り出したためかバランスを崩しています。落っこちそうです大丈夫でしょうか。

　係員が集まってきて止めに掛かります。バインバインボインようやく止まりました。東條騎手も無事鞍に乗り直しました。一安心です。

　あっとしかし、くるりと向きを変えて再度スタンド前を疾走。

　お客さんは大喜び。場内の混乱に拍手と歓声が飛び交っています。

　今年の２歳女王は、随分なお転婆娘のようです……』