第二十八話 40階層殲滅大作戦
「『特殊攻略家』っていうのは、フロアボスを出さずにコアを破壊したら得られる称号ですよ」
「……なぜそれを?」
「俺、10階層のフロアボス戦で、既にその称号手に入れてるんです。というか……それ、俺が発見した称号の一つなんです」
俺はなっちさんに、称号の獲得条件を軽く説明した。
具体的にどうなったらボスが出ないのかとかは、ステータスウィンドウから確認してもらうとしよう。
「……そうだったんですね。確かに……補正値、MP+250とかいう馬鹿でかい数値ですし。これ一つでも、ランク4にはなれる称号ですね」
「確かに、そんなこと言われましたね」
そんな会話をしていると、「30階層に帰還します」の脳内音声が流れ、俺たちは31階層に繋がる階段の手前に戻ってきた。
30階層でも0.3秒程度で一体倒せたんだし、この分だと、まだまだ何階層も下へと直行することになりそうだな。
「じゃ、行きますか」
「はい! ……あ、バフだけかけ直しますね」
「お願いします」
4つのバフをかけ直してもらうと……早速俺たちは、31階層へと降りた。
◇
そして……更に降りること10階層。
結局俺たちは、40階層を拠点にしばらく狩りを続けることにした。
この階層ともなると、バフありでも3秒半くらいはかかるようになったので……敵の強さとしては、ちょうどいいと判断したのだ。
「なんなんですかこれ……さっきから、10秒に1回くらいの頻度でレベルアップ音が鳴るんですけど! あまりに頻繁すぎて頭痛くなりそうです!」
「……エクストラハイヒール要ります?」
「……そういう問題じゃないです!」
片っ端から狩っていくのを始めてから2分くらいが経つと、なっちさんはそんな風に言ってきたが……まあ言葉とは裏腹に至極楽しそうな表情をしているので、このまま進めて問題ないだろう。
「……あ、バフ切れたみたいなんで次の頼みます」
「りょーかい!」
俺たちは、時間を忘れ……しばらくの間、40階層の魔物狩りに没頭した。
それから、どのくらいの時間が経っただろうか。
敵一体を撃破するのにかかる時間が2秒ちょいまで短縮されたところで……俺たちは、一旦休憩をはさむことに決めた。
……そういえば。
「なっちさん。俺が倒した魔物の魔石……拾ってくれてましたよね。あれ、どこにいったんですか?」
40階層での戦いの際……俺は、魔石の回収はなっちさんに任せきりになっていた。
なっちさんの方からそれを申し出てくれていたからだ。
そして俺たちは……体感でも、少なくとも100体の魔物をこの階層で倒してきた。
だから、今なっちさんの手元には魔石がパンパンに入った袋があると思っていたのだが。
依然として軽い荷物しか持っていないのを見て……そのことを不思議に感じたので、俺はそう聞いてみた。
「……魔石なら、アイテム袋に入れてますよ?」
「アイテム袋? 何ですか、それは……」
「見た目以上にたくさんの物を収納できる、次元が拡張されたバッグのことですよ。……まさかそれだけの殲滅力をもっておいて、今まで使ってこなかったんですか!?」
するとなっちさんは、そんな特殊な袋に魔石を収納していたのだと明かした。
そしてむしろ逆に、俺の方が、そのアイテム袋とやらを知らなかったのを驚かれてしまった。
「そんな便利なものがあるんですね……」
「アイテム市場に行けば、1個10万円程度で売られてますよ。というかこれ、高レベルの探索者の必携品のはずなのですが……」
しかも……お値段は以外とリーズナブル(これは俺の金銭感覚が狂ったのではない。あくまで一生に一度の買い物としてはの話だ)だった。
この探索から帰還したら、ちょっとその「アイテム市場」とやらに見に行ってでもみるか。
「そんなことよりステータスですよ。絶対、3桁単位で一気にレベル上がってますよね?」
などと思っていると、なっちさんがそう話題を変えた。
……そうだった、ステータスの確認を楽しみにしてたんだった。
「「ステータスオープン。 ……あ、被った」」
変に詠唱をシンクロさせてしまいつつも、俺たちはそれぞれ自分のステータスを確認する。
俺のステータスは、こうなっていた。
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古谷浩二
Lv.758
HP 74284/74284
MP ∞/8800
EXP 910/151400
●スキル
<アクティブ>
・真・マナボール
・階層完全探知
・エクストラハイヒールV5
・パーフェクトアイギスV4
・階層間転移
・真・マナ譲渡
<パッシブ>
・ダンジョン内魔素裁定取引
・生き残り
●装備
・熾天使の羽衣
・ガトリングナックル
・時止めの神速靴
・経験値豊穣の指輪(特上)
●称号
・無属性を極めし者
・理不尽を打ち破りし者
・特殊攻略家
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レベルは、またもや300も上がっていた。
確かに、30倍のバフをかけてもらった上で尚2秒も撃破にかかった以上、敵も相当インフレしてたとは思うのだが……それにしても、このレベルでまだこの伸び率は笑いそうになるな。
MPの上がり具合も凄まじいが……まあこれは撃破にかかる秒数からある程度逆算できていたことなので、そこまでの驚きでもないな。
「わー……。 こんな上がり具合……間違いじゃないんですよね……」
ちなみに隣では、なっちさんが自身のステータスを見て思考停止になりかけていた。