第二十七話 1f、再び
遅くなってすみません……!
22階層に到着すると……早速俺は、バフをかけてもらった。
「シンプルエンハンス……ユニークエンハンス……パワーコンプレッション……スパイラルアクセラレーション……」
なっちさんが一つスキル名を唱えるたびに、俺の周囲に光のエフェクトが舞う。
「……これで全部です!」
そして、なっちさんがそう宣言したところで……俺は曲がり角の先にいる魔物に、真・マナボールを連射してみた。
すると……効果は一目瞭然。
その魔物は、0.1秒経ったか経たないかくらいで、即刻爆散してしまった。
これが……バフの力か。
いや計算上は、こうなることは予測済みではあったのだが……実際目の当たりにすると、なんか物凄くあっけなく感じるな。
「は……速い……!」
なっちさんも、今目の前で起こった出来事に唖然としている。
……うん、こんな階層に留まっているべきではないな。
「じゃあ、下に降りましょうか」
「……あ、はい!」
というわけで、俺たちは更に下の階層に降りて、いい感じに強い魔物を探すことにした。
◇
そして、適切な階層を探すこと数分。
結局俺たちは、30階層まで降りてきてしまった。
ここでも、まだまだ1体あたり0.3秒くらいで撃破できてしまうのだが……この先に進もうと思えば、フロアボスに挑まなければならない。
俺としては、こんな階層に留まりたくはないのだが……
「……どうします? ここで狩りを続けるか……それともフロアボスを攻略して、31階層以降に進むか……」
この速攻具合は、あくまでなっちさんのバフありきのものだからな。
とりあえず、俺はなっちさんの意思を確認することにした。
「……進みましょうか。だって……なんか敵全然手ごたえ無いですもんね?」
聞いてみると……なっちさんとしても、こんな調子なら先に進んだ方が良いと考えているようだった。
というわけで、31階層へと続く階段に足を踏み入れ、フロアボス戦を始めるかどうかの確認音声が流れるのを待つ。
<古谷浩二は30階層のフロアボスを倒していません。31階層に進むにはフロアボス戦を済ます必要がありますが、戦いますか?>
『はい』を選択。
<同時にフロアボスに挑もうとしている者が一人います。共闘しますか?>
すると今度は、いつもは現れないそんな画面が出現したが……もちろん俺は、そこでも『はい』を選択した。
直後、今までのフロアボス挑戦時と同じく、俺の視界は一度暗転し……次に目を開いた時には、中心にコアが置かれた円形の部屋が視界に入った。
「……ボス戦ですし、一応バフかけ直してもらっていいですか?」
「そうですね。中途半端なタイミングで効果が切れるとまずいですもんね」
バフをかけ直してもらうと、俺はガトリングナックルをはめた両手をコアに向け、真・マナボールの連射を開始した。
すると……2発の真・マナボールがコアに当たったところで、コアから衝撃波が発生し、少し吹き飛ばされると共に連射が強制中断される。
コア周辺に立ち込めた煙が晴れると……そこには、10階層のフロアボス撃破時と同じように、既に壊れたコアが残っていた。
……そりゃそうなるか。
流石にバフで30倍にも威力が増してれば、1F差コア破壊が成立するくらいのダメージ量は出せるよな。
などと思っていると、なっちさんが唖然としたようにこう口にした。
「な……なんか聞いたこともない称号が手に入ったんですけど!? 『特殊攻略家』って……一体……?」
……うん、これは間違いなく、1F差コア破壊成功したな。