第十九話 20階層のフロアボスとの戦い
パーフェクトアイギス……何じゃそりゃ。
というか……消費MP固定進化って何だ?
色々疑問が浮かんでくるが……とりあえず、ステータスの確認だな。
「ステータスオープン」
俺はステータスウィンドウを開くと、スキルの欄に「シールドV4」の代わりに表記されている「パーフェクトアイギス」とやらをタップしてみた。
すると……こんな説明分が表示された。
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●パーフェクトアイギス
最上級の対物理結界魔法。MP500使用。(※「シールド」からのMP固定進化によりMP10で発動できます)
【MP固定進化条件】初めて入手した結界魔法を一週間以内にV5に進化させること。
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……なんだこれ。
本来MP500が必要な魔法を……シールドと同じMP10で発動できる、だと?
MP固定進化って、「シールド」を発動するのと同じMPで、上位互換の結界魔法が発動できてしまうってことだったのか。
それも互換先は、最上級の対物理結界魔法であったと。
……なんか割と頭おかしい進化を遂げてしまったみたいだな。
とてつもない進歩にも拘わらず、内容が衝撃的過ぎたせいで、俺は嬉しい気持ちと困惑する気持ちが半々みたいな複雑な心境になってしまった。
とにかく……全く別物に進化した以上は、今度はこれを更にV4くらいまで上げておくか。
「階層完全探知」
俺は近くにいる別の魔物を探し、そいつ相手にパーフェクトアイギスのV値を上げることにした。
パーフェクトアイギスは……今までとは比較にならないくらい頑丈な結界魔法だった。
20階層の蜂の魔物のビームは、従来のシールドV4だと20枚の同時展開で何とか防げていたのに……パーフェクトアイギスだと、何発受けても一向に破られる気配がしないのだ。
頑丈なのは凄くありがたいことだが、破られるまで同じ結界を使い続けていては、V4到達なんてあまりにも遠すぎる。
そう思った俺は、敵のビーム攻撃を一発受けるごとに、新たなパーフェクトアイギスを張り直す方針に切り替えることにした。
すると……40発くらいビームを受け続けたところで、脳内音声が。
<スキル:「パーフェクトアイギス」は「パーフェクトアイギスV2」に進化しました>
「……この調子だな」
俺はもっとパーフェクトアイギスを進化させるべく、更に敵の攻撃を結界で受け続けることにした。
◇
そして……約9分後。
<スキル:「パーフェクトアイギスV3」は「パーフェクトアイギスV4」に進化しました>
パーフェクトアイギスがV4に進化したところで、俺はこの作業を中断することにした。
スキルの進化は確かに大事だが……進化条件が他のスキルと同じなら、パーフェクトアイギスをこの調子でV5に進化させようと思うと、あと一時間半はかかるからな。
流石にそんなに長く防御だけに徹するのは退屈なので、この辺で切り上げることに決めたのだ。
シールドの時と同じく、またちょうどいい感じに貫通力のある攻撃をしてくる魔物に遭遇したら、仕上げはソイツ相手にやればいいしな。
というわけで、俺はこれからは再び魔物を倒してのレベリングに戻るつもりである。
とりあえず俺は一時的に外していたガトリングナックルを再装着し……目の前の魔物に2秒弱の真・マナボールの連射を浴びせ、そいつを討伐する。
そして魔石を拾うと、「階層完全探知」に映る近くの魔物目指して走った。
それを繰り返し、16階層の時と同じ要領で、20階層の魔物も高速で狩って回る。
するとまたもや、俺は頻繁にレベルアップの脳内音声を聞くこととなった。
その度に確認してみたくなるが……ステータスの確認は後のお楽しみと思い、今はひたすら魔物狩りに専念する。
そしてまた30分くらい経ったところで、ようやく俺は、再度ステータスを確認してみることにした。
「ステータスオープン」
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古谷浩二
Lv.458
HP 44884/44884
MP ∞/5690
EXP 39710/91600
●スキル
<アクティブ>
・真・マナボール
・階層完全探知
・エクストラハイヒールV5
・パーフェクトアイギスV4
<パッシブ>
・ダンジョン内魔素裁定取引
・生き残り
●装備
・革鎧
・ガトリングナックル
・時止めの神速靴
・経験値豊穣の指輪(特上)
●称号
・無属性を極めし者
・理不尽を打ち破りし者
・特殊攻略家
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すると……レベルは、またもや150近く上昇していた。
これはこれで結構上がってるのだろうが……16階層で一回経験してる分、あんまり驚きもないな。
何というか、順当に強化されてるのを確認しただけって気分だ。
MP最大値も1700近く上がっているが、これも20分が経ったあたりから1秒分の連射がオーバーキルになりだしたので、既に実感していたことだし。
というわけで……そろそろ、更に奥の階層に進んでみよう。
そう思った俺は、20階層から21階層へと続く階段のところまでやってきた。
すると、例の脳内音声が鳴り響く。
<古谷浩二は20階層のフロアボスを倒していません。21階層に進むにはフロアボス戦を済ます必要がありますが、戦いますか?>
すかさず俺は「はい」を選択し、フロアボス戦を始めることにした。
◇
ボス部屋に飛ばされると、とりあえず俺はコアに攻撃を加える前に、ガトリングナックルを一旦外してパーフェクトアイギスを展開した。
また1F差攻撃でコアを破壊できてしまえば、意味のない行為になるが……今回もフロアボスが出てこないとは限らないからな。
それから俺はガトリングナックルを再度装着し、真・マナボールの連射を始めた。
おそらく3発当たったあたりで衝撃波が発生し、連射が強制中断される。
体勢を立て直した俺は、コアの方を見てみたが……今回はコアに無数のヒビこそ入っているものの、完全に壊れた様子ではなかった。
代わりにコアの横には、俺の10倍くらいの身長があるハンマーを持った猿の魔物が鎮座していた。
1F差で攻撃できたはいいが……そもそも今回はコアの総HPが高く、無敵時間に入る前に削りきれなかった、といったところだろうか。
今回は、フロアボスと戦わなければならないようだ。
こうしてみると……10階層で1F差コア破壊成功させられといてラッキーだったな。
あの機会を逃せば、「特殊攻略家」の称号を手に入れられる機会が二度となかったかもしれない。
などと思いつつ、早速俺は真・マナボールの連射で先制攻撃を仕掛けることにした。
真・マナボールが命中しだすと……フロアボスは驚いた顔をしながらよろめいた。
そのまま、体勢を立てなおす暇を与えずダメージを与え続ける。
すると……フロアボスは、10秒ほどで木っ端微塵に爆散してしまった。
……あれ、もう決着がついたのか。
それとも……罠?
——罠かどうかは、コアにダメージが通るかどうかで確認すればいいか。
そう思い、俺は真・マナボールの連射ターゲットをコアに切り替えた。
すると……コアにダメージが通り、俺はコアを破壊することに成功した。
……罠ではなく、シンプルにボスを撃破できてたみたいだな。
そう確信し、俺は連射を中断した。
1F差コア破壊こそ成功しなかったものの……パーフェクトアイギス、結局出番なかったな。
などと思っていると、フロアボスが出現したあたりに白くて神々しい輝きを放つ服が出現した。
1Fじゃないケースだと……「フロアボスの魂を特別アイテムに成形しています」みたいな音声は流れないのな。
そんな感想を抱きつつ、俺はその服を拾いにいった。
拾っていると……こんな脳内音声が流れる。
<フロアボスの初討伐を確認。スキル:「階層間転移」を獲得しました>
<20階層に帰還します>
それから……周囲の風景が、円形のボス部屋から20階層のものへと戻っていった。
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