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エクストラ00.今日は何の日?
それは、まだ私「は」別の姿を持たなかった頃。
「あのさ、柾木ちゃん、話したいことがあるんだけど」
「うん、何、お兄ちゃん?」
その日の朝、お姉ちゃんはいきなり、そんなことを口にした。
「あ、その、僕、最近彼女ができたんだが」
「……は?」
正直、まったく意味がわからなかった。
だが、私より遥かに動揺していたのは、おかしいことにお姉ちゃんの方だった。
「あ、あのさ、お姉ちゃん」
「あ、ああ」
「今日がどれだけエイプリルフールだとはいえ、あんまり慣れない嘘なんか、つかなくてもいいと思うけど……」
「……そ、そこまでバレバレだったかな?」
「うん、ものすごく」
「へー美咲さん、あんな嘘もつけるんだ」
私がそんなことを話すと、秀樹はまるで感心したような顔をした。
「まあ、姉貴って、根からの真人間だからな。ああいう嘘は、やはり得意ではない」
「でも美咲さん、ああいう話を聞いてるとかわいいところもあるな、と思って」
「それこそ、姉貴だからな」
実は年相応で、不器用なところもちゃんとあるお姉ちゃんを浮かべながら、私は苦笑する。
「まあ、よく考えてみると、柾木だって……」
「うるさい」
……まあ、それもよくわかっている。
私たち姉妹って、正反対なところが多いっていうのに、こういうのだけは似てるんだよね……。