36.それぞれの思惑
「えっ、昨日、俺のためにそこまでしてくれたの?」
次の日。
私が昨日、慎治との出来事を話すと、秀樹はずいぶん驚いていた。
「ああ、秀樹さえよければ、別に避けることでもないと思ってな」
「う、うれしいけど、俺、柾木にひどいことさせたのでは……」
「大丈夫だって言ったんだろ?」
そう、これは秀樹のためだけじゃない。あくまで、「私」のためのことだった。
……べ、別に秀樹のためにやったことが照れくさいとか、そういうわけじゃないけど。
ともかく、私たちはそんなことを話しながら、「組織」の廊下を歩く。秀樹は付き合い始めてから、そこまで私のことが好きなのか、こっちにべったりだった。今も、私の腕をぎゅっと掴んだまま、なかなか離してくれない。
ちょ、ちょっと恥ずかしいけど、今の秀樹のことだし、仕方ないかな。
「へへ、へへへ~」
「ものすごく幸せそうだな」
「そりゃそうだよ。今の俺、柾木といっしょだしね」
最近、秀樹はあるくらい、家に自由に戻ってもいいという許可を得ている。つまり、調査のために家と「組織」を行き来するわけだけど……。なぜか秀樹は、未だにこっちにいることが多かった。話を聞くと、どうやら私と少しでもいっしょにいたいらしい。だ、だから、それはちょっとくすぐったいって。聞かないんだろうけど。
もちろん、まだ「元の姿」に戻れるわけじゃないから、学園に行くのはできないが……。
考えてみると、秀樹がああいう姿になって、私たちが付き合い始めてだいたい半月くらいになるのかな。いや、もっと長かったような気も……?
これって、早いと言ってもいいのかな。
実は未だに、秀樹と付き合って、ああいうことまでやっちゃったことがあまり信じられなかったりする。
私がそんなことを、ぼんやりと考えていた時だった。
「あ、茨城だ」
「……本当か?」
秀樹の話に、私は周りを見渡す。たしかに、あそこから慎治がこっちに向かって歩いてきていた。とは言え、あちらは私たちにまだ気づいていないらしい。
……慎治のやつ、昨日のことはもう大丈夫なんだろうか。
一応、自分のせいだという認識はあったため、私はそんなことを思いながらも、慎治に近づく。
「おい、慎治」
「あ、なんだ。柾木か。そ、それ……に……?」
私が声をかけると、慎治はいつものように頭を上げてこっちを見ようとしたが、すぐに顔が固くなった。
そういや、今、私のとなりには秀樹がいるのだった。
「……」
「……」
私たちはしばらく、何も話さない。っていうか、どう話せばいいのか、私にもよくわからなかった。秀樹は「どうだ、ビビったか」と言っているような、見事なドヤ顔で慎治を見上げている。い、いや、今の状況でそういう顔はしなくていいから……。
その時だった。慎治の体が、ビクッとしたのは。
「ひ、ひ、ひいいいいいっ!!」
その悲鳴だけを残して、慎治は風のように去っていく。正にあっという間だった。私だって、急すぎる今の状況に頭がついていけない。
「あ、あれ、驚かないんだ」
「……今の方が、驚くことよりひどいと思うけどな」
秀樹はこっちを見ながらおかしいという顔をしたが、私としては、ただ苦笑いしか浮かべられなかった。
だって、今の秀樹って、間違いなく慎治から逃げられたようなものだし。
まあ、慎治としては、そうなるのも当たり前だと思うけど……。
ともかく、昨日のあの出来事のおかげで。
私たち……っていうか私と慎治の関係も、色んな意味でずいぶん変わりそうな気がしてきた。
それからしばらく経って、私は雫と、事務室でいっしょに時間を過ごしていた。
「う、うう、ううう~~っっ」
でも、どうやら、雫の機嫌はあまりよくないみたい。さっきからずっと、雫はああ言って頬を膨らませている。
「奪われた。柾木のこと、あの橘さんに奪われた~~」
「べ、別にそんなわけじゃない、が……」
「ぐぬぬ、あの泥棒猫、いや泥棒犬、あの時しっかりと論破したおいた方がよかったのかな……」
今日の雫は、どこか変だ。
いや、変な理由はわかっている。さっき、私が秀樹を連れて、それもびったりくっついて事務室に戻ったから、それにヤキモチしているわけだ。雫って、やっぱり思っていることはすぐ顔に出る性格なんだから。
……あんな偶然って、実在するんだな。
まさか、雫が私の執務室の前で、じっとこっちを待っていたとは思わなかった。
「わたし、まだ橘さんに負けちゃったわけ……?」
「別に、雫だって今ならべったりしていてもいい、が……」
「だけど、橘さんはみんなの前でそんなことやってたんじゃない。やっぱりわたし、負けた?」
「だ、だから、別に勝ちも負けもないだろ」
ああ、ダメだ。
今日の雫は、さっきのことをずっと根に持つつもりらしい。
っていうか、あの時の秀樹がものすごくドヤ顔だったのも、個人的にはかなり気になるんだけど……。
そんなことを思っていたら、いきなり、雫が話しかけてきた。
「あのね、柾木」
「なんだ?」
そうすると、雫はこっちをじっと見ながら、こんなことを口にする。
「わたし、可愛いよね?」
「うん? もちろん、雫はかわいいと思うが」
お世辞じゃない。これは本当だ。
他の人にどう見えるのかはわからないが、雫は私から見て、間違いなくかわいい。背も高いし、スタイルもいいからかっこいいと言われてもおかしくはないのに、その甘えん坊な性格とか、まるでうさぎのような態度とか、ともかく、ものすごくかわいい。
……私が、ヤキモチしてしまうくらいに。
「ほんと?」
「当たり前だろ。雫みたいにかわいい女の子、そうそういないと思う」
「えへへ、わたし、柾木に褒められた?」
「そ、そうかもな」
なんか、そう言われるとかなり照れちゃう。いや、本心ではあるけれど、素直に自分の思っていることを伝えるのが苦手なんだから、余計に恥ずかしくなってしまうんだ。
「じゃ、わたしと橘さん、どっちが可愛い?」
「……あ?」
その時、雫はいきなり、とてつもないことを言い出してきた。
「だって、さっきの柾木、橘さんといっしょにいて嬉しそうだったし」
「そ、そうかもだが、誤解しないでくれ、雫。これはただの――」
「でも、付き合ってる」
「そ、それはその……」
ど、どうしよう。
いちおう、婚約者とされている女の子の前で、「今、付き合っている」人のことを問い詰めされるだなんて。
もちろんこれにはちゃんと理由があるっていうか、そもそもこの状況自体が変わったものではあるけれど……。
この矛盾した状況で、何を言い返せばいいのか、まったく思いつかない。
「わたし、橘さんに負けると、ものすごく悔しいよ?」
「だ、だろうな」
「だって、橘さん、実は男の人? とか言ったじゃない。もしそうだったとして、そんな人にかわいさで負けっちゃうと、わたし、わたし〜……」
ああ、いったいこれ、どうしてくれよう。
私はこんな状況が出来上がってしまった運命とか、お父さんとか、とにかくそういうものを激しく恨んでしまった。
「じゃあね、柾木。あとでまた、差し入れに来るから」
「あ、ああ」
そう言いながら、雫は帰るために事務室の扉へと向かう。最近は雫も勉強のこととかがあるから、あまりここには長くいられないようだ。もちろん雫はだいぶ悔しがってるけど……。まあ、これは仕方ないよね。
私が雫の後ろ姿を見ながら、そんなことを思っていた時だった。
「柾木~綾観さんはもう帰った?」
……なんでまた、こんなことになるんだろう。
扉の向こうから、秀樹のノンキな声が聞こえてくる。
「え、ま、また橘さん? い、今は学園に行けないとは言え、ここまでよく出入りするの?!」
「お、落ちついてくれ、雫、これは……」
「う~~やっぱり、いつか決着をつける! あと差し入れもする! 柾木、またね! 大好きだよ!!」
そんなことを早口で喋ってから、雫はぶつぶつと退場していった。だ、大丈夫かな、雫。ここまでズバズバ言うくらいなら平気だとは思うけど……。
私がそんなことを思っていた時、今度は思いもしなかった声が近くから聞こえてきた。
「あ、あの、柾木くん。今日が約束の日であってますよね?」
「誰かと思えば、美由美か」
それは他でもない、美由美だった。
そういや、今日はこの時間に事務室で話そうって、以前、打ち合わせしていた気がする。私は美由美の「担当」でもあるので、定期的にこんなふうに約束をして、事務室で顔を合わせることにしている。これは詳しく話すと長くなるから、今はこれくらいにしておきたい。
ともかく、なんていうタイミングなのだろう。
頭がだんだん痛くなるが、まあ、バレた以上はしょうがない。
「えっ、柾木、今日約束あるの?」
「ああ、今は美由美と用事があるから、後にしてくれないか?」
「ふむ、柾木って大人気だね。さすがだ」
「いや、それじゃないから」
……私って、また誤解されたのか。
冷や汗をかきながらも、私は美由美を連れて、執務室へと戻ってくる。
「最近の柾木くん、モテモテですね」
案の定とでも言うべきか、美由美は椅子に座ってから、すぐそんなことを口にする。
「あ、ああ、そう見えるか?」
「はい。橘さんと綾観さん、仲良さそうでいいな、と」
「仲良さそうに見えるのか、あれが……」
私にはやっぱりよくわからない。
あれは仲がいいっていうか、むしろ喧嘩する気満々だというか、なんていうか……。
でも、元から自分の思っていることをあまり話せない美由美には、それが若干うらやましく見えるようだった。
「別に、美由美だったらもっと近づいてもいいんだ。あの二人くらいぐいぐい来ると困るが」
「わ、わたしが、そうしていいんでしょうか」
「もちろん。まあ、さすがに付き合うとかは、もっと状況がややこしくなるから遠慮してもらいたい。あ、美由美のことはまったく嫌いじゃない。ただ、その、今は状況がちょっと重いから……」
「大丈夫です。わたしが柾木くんと付き合うだなんて、恐れ多いですし」
「いや、そこまでかしこまらなくていいから」
とは言え、こんな修羅場に美由美まで加勢すると、さすがにこっちも困るけど……。
せめて、美由美とは今までのように、平和な関係でいたかった。
だって、最近は秀樹と付き合ったり雫にヤキモチされたり、激しいことばかりなんだから。
「もうこれって、日常みたいだよね」
「そ、そうか?」
そうやって美由美との約束を済ませて、とても平和である午後に。
私は久しぶりに、秀樹といっしょに勉強会をしていた。
「うん、それに今、柾木は俺の彼女だし」
「あ、ああ……そうだな」
まあ、今は誰からどう見ても秀樹の方が彼女にふさわしいけど。
そもそも、私ってかわいいところもあまりないし、「彼女」に似合う人間なのかどうかも、よくわからない。
今の秀樹って、女の子よりもかわいいって思うんだが……。本人がこれを聞くと、やはり複雑な顔をするのかな。
「えへへ、初々しいな。彼女だって、彼女」
「秀樹って、本当にささいなことでよく喜ぶな」
「うん、だって、そっちの方が得でしょ?」
たしかに、それは間違ってない。
私が苦笑いしながらも、そんなことを思っていた時だった。
「それに、俺、柾木に初めて惚れた時にも、勉強教えてもらってたし」
「……あ?」
それは、本当に初耳だった。
え、えっと、私、秀樹に以前、勉強とか教えたこと、あったかな? たしか、秀樹とクラスメイトになったことは今年が初めてのはずだけど……。
「あ、やっぱ柾木は覚えてないなぁ」
「そんなこと、あったのか」
「うん、以前、4月くらいだったかな、俺が数学のこと、聞きに行ったことあっただろ?」
そういや、たしかにそうだった気もする。
4月ならば、まだ余裕があった方だったため、私もよく授業を受けていた。
「その時、柾木……あの頃には高坂さん、めっちゃ上手かったから、よくわかんないとこ、教えてもらいに行ったんだ。ひょっとしたら教えてくれるかも、と思って」
「……それで、教えてもらったわけだな」
こっちは本当に、すっかり忘れていた。あの頃には学園に慣れることに精一杯だったから、秀樹のことに気づかなかったのかもしれない。
「うん、でね、あの時の柾木、俺に教えてからこう言ったんだよ」
「……あ?」
「えへへ、未だに思い出すなぁ」
秀樹は一人でニヤニヤと笑いを浮かべながら、こう言った。
「『あんたくらいなら、こう説明するとわかるんでしょ? いつもあんた、物分りよかったから』ってね」
「あ……」
たしかに、今思い出すと、以前、そんなこと言ってたような気もする。
――そんなこと言ってたんだ、私。
あの時には、秀樹のこと、まったく意識してなかったつもりなのに。
「その時ね、俺、マジで驚いたよ。ほんとビビってたなぁ。だって、あまり学園に来てくれない高坂さんが、あそこまで俺のこと、覚えてくれてるんだよ? ものすごく嬉しかった」
「そ、そうだったな」
「だからね、あの時俺、決めたんだよ。ゆっくりでもいいから、高坂さんに近づきたいって。どうすればいいのか、あの時にはよくわかんなかったけどね」
まるで、あの時を思い出しているようなぼんやりとした顔で、秀樹はそう語る。
だから、あれから秀樹は、私が学園に来るたびに付きまとっていたのか。
あの頃には、正直、こんなことがあったとは思いもしなかった。
そこまで聞いた私は、どうやって答えればいいのか、よくわからなくなる。
私って、そこまで昔から、秀樹のことを意識していたのか。
秀樹が私と親しくなりたがっていた理由って、それだったんだ。
なんだか、すごくくすぐったい。
そんなことになっていたなんて、考えてもみなかった。
「……ごめん」
「えっ? いきなりなんで謝るのさ」
「今まで気づかなくて」
「だ、大丈夫だよ。むしろ気づかなくて当然だしね、えへへ」
秀樹はそう言いながら、照れくさそうに笑ってみせる。
なんだか、今の私は、そんな秀樹が愛しくてたまらなくなった。
べ、別に、いやらしいことをするとか、そういう意味ではないけど。
「う~ん、こんなこと言ってたら、ちょっとくすぐったくなっちゃった。今からは柾木に甘えようっと」
「……ちょ、ちょっと、急になにやってるんだ?」
私が戸惑っているのにも構わず、秀樹はこっちに近づいてきては、自分に抱きついてくる。そしては、私の膝を枕代わりにして、そのまま横になった。それも、こっちにお腹を見せているような姿勢で。
え、こ、これって甘えさせてくれ、ってことかな? い、犬じゃあるまいし、いきなりこんな……。
「ささ、早く撫でてよ、柾木」
「し、仕方ないな。こうなったら……」
結局、私は諦めて、秀樹の少しボサボサな髪をゆっくり撫でる。「元の姿」と違って、その柔らかそうなボサボサ髪は触り心地もよく、まるで犬を撫でるような不思議な気分だった。
……本音を言うと、そのお腹もちょっと撫でてみたいとは思うけど……本当の犬じゃあるまいし、それはちょっと控えておこう。
「えへ、えへへっ」
「そこまでうれしいのか」
「うん、今の俺、ものすごく幸せ」
こんなことで、ここまで喜んでくれるだなんて。
はっきり言って、今、私はすごく照れくさい。こんなの、他の人にバレたら、頭なんて絶対に上げられない。
でも、今のこの瞬間は、私にとってはとてもかけがいのないものだった。
二人だけの、誰にも邪魔されない時間。こんな些細なことで、ここまで心が満たされるとは、考えもしてなかった。
「あれ、今の柾木って、顔が緩んでるような」
「ち、違う。ちょっとうとうとしてただけだ」
なぜか心がバレたような気がして、私はすぐに否定する。こ、こんなこと言っちゃったけど、たぶん、秀樹にはすでにバレているのだろう。
でも、やはり、私はこんなことには素直になれない。だから、今はうとうとしていたってことにしよう。私が言い張っていれば大丈夫だ。
それはそれとして、秀樹って、いつも私のこと、愛でてくれてるな。
私に向かって、秀樹はいつも積極的に甘えてくれる。甘えているのは秀樹の方のはずなのに、なぜか、自分の方が癒やされるような、不思議な感覚だった。
「あの、秀樹」
「うん?」
「その、どうして俺のこと、好きになったのかはわかった。それはすごく嬉しい。うれしいが……自分って、ここまで愛されていいのだろうか、と思ってしまうことがある」
「なんで? なんか引っかかることでもある?」
「い、いや、あまり誤解しないでほしいが、自分にだけ都合がいいようで、ちょっと不安っていうか、なんていうか……」
「でも、俺、柾木のためなら、別に都合がいいやつだって言われてもいいよ」
私をじっと見ながら、秀樹は横になったまま、そんなことを口にする。
「だって、柾木は俺が自分で考えて、決めた相手なんだから。だから問題ない。俺は柾木に都合よくなりたいんだもん」
「……そうか」
「うん、もちろん、他の人ならこうは行かないけどね。柾木だからだよ、こんなの、言えるのは」
そう言いながら、秀樹は照れくさそうに、そして少し誇らしげな顔で、こっちを見ながら笑って見せる。
――どうしよう、また惚れてしまいそうだ。
そんなこと言われると、こっちはただ、嬉しくてどうしようもなくなる。
「そういや、俺、明日は学園に行けそうなんだが」
ふとそれを思い出した私は、秀樹にそう話しかける。最近はあまり学園まで行く余裕がなかったわけだが、ようやく秀樹のことも一息ついて、なんとか学園に行けそうな状況になった。
「そ、そうなんだ。柾木って、明日、学園行くんだ」
「ああ、ひょっとして、何か頼みたいことはあるか? もしあるなら……」
「うーん、特にはないかな。あえていうと、いつもつるんでた友だちが元気なのかどうかが知りたい、くらい」
そんなことを言いながら、秀樹は寂しそうに笑ってみせる。もう半月も学園に行ってないんだ。そんな顔をするのも、当たり前だと言えるんだろう。
「あ、もちろん『端末』で連絡は取るんだけどね。こっちの姿は見せられないから、どうしてもわからないところは出てくるんだ。だから、無理強いはしないけど、それも教えてくれたらうれしいなって」
「わかった、確認してくる」
「ありがとね、柾木」
その健気な顔を見ていると、どうしても心が痛む。
だって、秀樹が学園にも行けず、「別の姿」でいるのはだいたい自分のせいだ。今は恋人同士だし、秀樹も別にそんなことはまったく言わないけれど……。でも、やはり秀樹が弱まっているのは、こっちにもよくわかる。
秀樹って、もう半月くらい「元の姿」に戻ってないんだ。私にはあまり見せないようにしてるけど、きっと、秀樹は秀樹なりに、とても辛いはずだ。
――何か、私にできることはないのかな。
相変わらず私の膝で甘えている、秀樹の髪の毛をやさしく撫でながら、私は心から、そんなことを思っていた。