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9.5 じじばばが集まったら、子供が困るアレ

 ハリーが七歳の時、木に足を取られてこけて、泣いたわね。

 覚えてるかしら。

 ハリーが十歳の時、木登り失敗して、泣いたわね。

 覚えてるかしら。


 そうよ、七歳や十歳のことなんて、覚えてないの。

 ハリーにとっては忘れられない初恋でも、相手が覚えているとは限らないわ。

 覚えてないのに、あの時は、なんて言われても、ね。


 それに、例えばハリーが、顔も名前も覚えていない領民の女の子から、昔からずっと好きでしたって言われて、どう思う?


 そうなのよ。

 たとえ事実であっても、婚約して会って早々ずっと昔から好きでした、なんて伝えるのは、ただの自己満足でしかないの。

 しかもあの美貌、当時は求婚者が鈴なりだったのよ。そんな口説き文句、慣れてるでしょ。

 どうせ言うなら、効果的に。タイミングが勝負よ。

 想い合ってから、実は昔からって告白された方が、キュンってくると思うわ……たぶんだけど。


 それよりね、そんな事実でしかない言葉よりも。

 彼女、あのボンクラ(グラシアノ卿)に婚約期間三年、結婚期間三年、合計六年、身を捧げて。

 しかも信じられないことに、血を継げなければ去れと、六年の献身を、無駄、無用、無価値だと断じられたのよ。


 だから、ハリー。

 肯定なさい。彼女の努力を、献身を、素晴らしいものだったと、称賛なさい。

 好きとか愛とか抜きにして、彼女の為したことは、得難いものだったのだと。

 素晴らしく得難い彼女にこそ、一緒にいて欲しいと、伝えなさい。誠意さえあれば、愛なんて後からいくらでもついてくるわ。


 がんばるのよ、お姉ちゃん、応援してるからね!


親戚が集まったら、「あんたの小さい頃は~」な、アレです。

覚えてねぇよ、知らねぇよ、と、心を無にして聞き流すアレです。


そして、作中台詞「好きとか愛とか抜きにして」「愛なんて」……この作品、ジャンル:恋愛、に投稿されてるんだぜ?(震える声)


次回10話 「来ると思った!」

平日は夜19時、更新です、お楽しみに!



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