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1.夏の神

前回の投稿から間が空きましたが……。今日から3章投稿していきますー(>ᴗ<)

「風の神・セフィロス様と虹の神・アイリス様の子で、夏の神セリノスと申します。どうぞ皆様、お見知り置きを」


 夏の日差しを思わせるような金色の髪に空色の瞳を持つ少年は、目の前に迫り来るヘルハウンドに向かって大きく腕を振り上げる。


 「ギャンっ」という断末魔の鳴き声だけを残し、ヘルハウンドは大きく2つに引き裂かれた。その傷口からは肉の焼ける匂いと共に、煙が立ち昇っている。

 アイリスがかつて、そして今でも出来ない事を、その少年はいとも容易くやってのけ、招待客に一礼する。


 風の神殿にある会場は、あっという間に招待客たちの拍手と歓声でいっぱいになった。




「ふぅ、良かった」


 会場の端で見ていたアイリスは、ホッと胸を撫で下ろす。

 事前に練習しておいたので大丈夫だと分かってはいても「もしかして駄目なんじゃないか」と、この瞬間までずっと気を揉んでいた。


 そんなアイリスの心配をよそに、セリノスは見事に一発でヘルハウンドを殺してみせた。親の自分は見ているだけでも怖くて、こんなに冷や汗をかいているというのに。



「アイリス!」


「みんな! 今日は来てくれてありがとう」


 一通りの儀礼が終わり招待者達の歓談が始まると、フローラとセリオン、ヴィーナスがすぐさまアイリスの元へ駆け寄ってきた。

 3人とはすっかり仲良くなって、今では呼び捨て・タメ口で話す仲だ。今日の披露目の儀には中級神以上の神とその守護天使が招待されている。


「びっくりしたわよ! もう子供が出来ただなんて」


「ああ、本当だよ。だってまだ1000万年そこそこだろ?普通なら数倍、早くたって倍はかかるところだよ」


「それはそうですよ」


 隣でアイリスに付き添ってくれているエレノアが、フッと不敵な笑みを浮かべる。


「だってセフィロス様は他の方だと数時間で終わるものを、アイリス様だと3日と離しませんから」


「「「え!?」」」


「え??」


 フローラとセリオン、ヴィーナスの驚きの声にアイリスもまた驚きの声をあげる。


「アイリス、あなた見かけによらず意外と体力あるのね」


「体力ならアイリスよりあると思っていたけど、私でも3日はちょっとシンドいな……」


「セフィロス様とはかなり体格差があるのに、すごいですねぇ。なんだかお二人の愛を感じちゃいますっ!!」


 アイリスの「え?」は「普通じゃないの?」と言う意味だったが、どうやら3人の「え?」は「信じられない」の意味だったらしい。他の神と番ったことなどないから分からない。


「なので、ノクトがスケジュール管理に度々悩まされてます」


「そうだったの?!私、お仕事の邪魔していただなんて…」


「あ、それはご心配なく。アイリス様と番がったあとのセフィロス様の仕事効率は3割増になるので問題ないです。ただ、スケジュールに長い空きを作るのが難しいだけですので」


「それにしてもエレノア、こういう事を皆さんがいる所で堂々と大声で言わなくたっていいじゃない」


 いくら神がこの手の話は天使たちより気にせず話すと言ったって、ちょっと恥ずかしい。


「ふっ、アイリス様。牽制ですよ、け・ん・せ・い」


「一体何を牽制しているの?」


「この所、セフィロス様への報奨のご指名が増えたので」


「あぁー。アイリス様とご結婚されてからのセフィロス様は、随分と雰囲気が柔らかくなりましたもんねぇ。冷たいからクールになった感じと言うか。もともと、もの凄いイケメンですから、下級神からの人気も最近は高くなってますよ」


 ヴィーナスがコクコクと頷きながら言った。


「アイリス様以外の方のお相手なんて、セフィロス様にとっては面倒臭いだけ。なのでちょっと噂をばらまいて頂いて、指名するなアピールでもしようかと思いまして」


 もう頭が痛くなってきた。セフィロス大好きなのは分かる。でも時々エレノアの努力の方向性がおかしくなるので困る。


「え、エレノア……私にはフローラ達がいる事だし、ジュノを他のお客様の所へ挨拶に連れて行ってくれるかしら」


 同じくアイリスの傍で控えていたジュノをダシにして、余計なことをさらに口走る前に去ってもらおう。


「かしこまりました。ジュノ、いくわよ」


 2人を見送るとフローラ達がクスクスと笑い出した。


「アイリスも大変ね。それで、セリノスはこの後家が出来るまでどうするの?アイリスの家だと狭いんじゃない?」


 フローラに家の場所を教えた後、セリオンとヴィーナスにも教えて良いと許可を貰えたので、3人はアイリスの家に来たことがある。


「ええ、だから今日からは風の神殿に泊まってもらうことにしたの。こちらの方が広いし、虹の天使よりも風の天使たちの方がしっかりと教えてくれるでしょうし」


「しっかりと、ねぇ。あぁ、怖いわ」


 3人ともがブルっと身震いさせた。風の神殿は指折りの厳しさで有名だ。


「セフィロス様は今、地上に降りてらっしゃるんだろ?しかも今回は10年以上はかかるって言うじゃないか」


「前回セフィロス様がたった1年降りていただけだったのにアイリス様、魂が抜けてしまったのかの如くどんよりとしてましたよねぇ。大丈夫ですか?」


「うぅ……」

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