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 ××に着くと、小腹がすいたのでボアネルジェスと一緒に軽食をとる事にした。


「セフィロス様はまぁ置いといて、お前もうちょっとニコニコすりゃ、絶対モテんのにな」


 バケットに野菜とベーコンを挟んだサンドウィッチを食みながら、ボアネルジェスが言う。


「は? 何で楽しくもないのに笑う必要がある訳?」


 神にも天使にも、セフィロスと共によく言われる。もっと愛想を良くした方が良いと。正直、余計なお世話だ。鬱陶しい。


「何でってお前、女からチヤホヤされたいとか思わないの?」


「女からチヤホヤって、一般の天使じゃないんだから伴侶が必要な訳でもないし、子供ができる訳でもないだろ。君こそ何でモテたいって思うんだよ」


 ボアネルジェスはウーンと唸りながら、腕を組んで天井を仰ぎ始めた。


「そう言われるとそうだけどさ。でも皆から好かれたら単純に嬉しいだろ」


それに……とボアネルジェスは続ける。


「好感度をあげとけば、いざって時にみんなの採点が甘くなる」


「皆に好かれても、セフィロス様に評価されなきゃ意味が無い。それに、セフィロス様は周りの評判なんかに踊らされるような方じゃないよ」


「あぁ……、そうだよな。お前はそーゆー奴だよな…… 」


ボアネルジェスはサンドウィッチの最後の欠片を口にほおりこんで、うん、と頷く。


「お前と俺とでは、価値観が違うってことで!」


どうやらボアネルジェスは、何かを諦めたらしい。結論を出した。


 ノクトもマフィンをハニーエールで流し込むと、自身の目的地に向かおうかと席を立つ。


「それじゃあ……」


 また。と言おうとした所で、ドーンっと大きな地響きがした。テーブルがカタカタと揺れ、周りにいる客もどよめきだす。


「なん……だ? 地震か?」


 地上じゃあるまいし、地震なんて起きるわけないだろ。とボアネルジェスに突っ込みたくなるのを堪えて、ノクトは店の外へ出て様子を見に行く。


 少し離れた所の空に、黒い鳥の群れのような物が見える。


「あれは魔物か?」


 後ろから付いてきたボアネルジェスが、背中の手槍に手をかけながら言った。


「たぶん、だ。でもさっきの地響きの元はアレじゃない」


 小さな魔物なんかでは無く、もっと大きなものが暴れ回っているような揺れだった。街の衛兵たちが慌ただしく動き回り、皆、鳥の群れの方へと向かっていく。


「行ってみよう」


 火事が起きているのか、向かおうとする先からは煙が上がっているのが見える。

 ノクトとボアネルジェスは、魔物のいる先へと急いで向かった。


*****


 鳥のように見えたのはゲイザーと言う、大きな一つ目にコウモリの翼を生やした魔物だった。

 数は100匹以上いるだろうか。それが我先にと何かに群がって、黒い塊になっている。


「もう結構なやつが殺られてるみたいだな」


 物陰から様子を伺っていたボアネルジェスが、顔をしかめながら言う。


 ゲイザーが群れて食らっているのは、天使の腕や足片だ。恐らく、地揺れを引き起こしている魔物が食い散らかしたおこぼれにでも預かっているのだろう。肉を食いちぎるような音と咀嚼音が、あちこちから聞こえてくる。



「今回の主役の登場だ」


ボアネルジェスがそう言うと、建物の陰から巨大な魔物がのっそりと現れた。


「あれは……タラスクか?」


 亀のような甲羅を背負ったドラゴンで、6本の足と長い尾には槍のように鋭い無数の棘が生えている。


「火事の原因はあいつっぽいな。(クソ)を撒き散らして攻撃してくるとか、地界のヤツらはホント、お下品だよなぁ」


 冗談めかして言っているが、ボアネルジェスの声がやや緊張しているのが伝わってきた。


 タラスクの糞はただの糞ではない。灼熱の炎に包まれているのだ。あたりかまわずその火玉のような糞を撒き散らすので、街中は阿鼻叫喚の光景と化していた。


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