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9話 聖女ノミアスと二人の勇者

始まりの街、ボルン。その街の中心部に位置する大聖堂。そこのチャペルでステンドグラスから入る光に照らされながら、目の前の二体の女神像に、跪き、手を組み、真摯に祈りを捧げる女性がいる。

その身は、透き通るような銀髪に、青い瞳、そして金と銀によって細かい装飾が施された、されどシンプルなローブに包まれている。


彼女はノミアス。聖女ノミアス。この世界における十二人の超越者の内の一人。


周りには、彼女の護衛、神殿騎士が純白の鎧を身に纏い、静かに佇んでいる。


辺りは今、静寂に包まれている。たが、その静寂は、突如として破られる。


──ゾオォォォオ


「「「「「っっっっ!!」」」」」


其れは一時的とは言え、世界が冥府へと繋がったことで起きる現象。其れは高位の神官にしか判らない怖気。


「何故ですッ??!()()は封印されていたはず…。まさか!!………悪魔が…生まれたとでも……」


「せ、聖女様……今のは?」


神殿騎士の内の隊長格の女性が問う。他の神殿騎士も先程の怖気を感じたのか、皆顔色が悪い。


「……一時的ですが、冥門が世界(こちら)で開かれました…。恐らくですが…悪魔が……発生しました」


「「「「「なッッッ!?!?」」」」」


悪魔、其れは冥府より生まれ、人間仇なす存在。教会内では高位の者しか知らされていない。だが、この場に居るのは、聖女ノミアス、そして彼女の神殿騎士。神殿騎士はプレイヤーで言うレベル80~90程の強さを持ち、高位の聖職者の位を持つ者しかなることは出来ない。その為、この場には悪魔の存在を知らない者は居ない。だがこれが更なる混乱招く。何故なら……


「な、何故悪魔が!教会の記録では最後に姿が目撃されたのは800年も前なんですよッ!」


そう。悪魔が記録として残って居るのは800年前以降だ。それ以降は姿だけで無く、少しの痕跡すら見つかっていなかったのだ。


「悪魔の生態は未だに不明な点が多いです。ですが、判っていることもあります」


「『悪意によって生まれる』…ですか?でも…………ま、まさか……?!?!」


「ええ……恐らくですが、異界者の増加が原因でしょう。信託で判っていたことですが、まさかこんなことになるとは……」


皆、悲痛な面持ちで俯く。異界者の増加により、この様なことが起きるとは思ってもいなかったのだ。


「この対処は、異界者(原因)に任せましょう」


何かを決意したような表情を浮かべ、ノミアスが呟く。


「聖女様?」


「剣の勇者と盾の勇者を呼んで来てくださいますか?」


「彼等に頼むので?」


「ええ…私は()()で動けませんから」


「かしこまりました」


話していた神殿騎士が頷く。そして、


「お前達!!!剣の勇者ルキウス氏、盾の勇者ガッテム氏を呼べ!聖女様がお呼びだッ!!!!」


「「「「ハッッッ!!!!」」」」


◆◇◆◇◆◇◆◇


「なぁルッキー。俺達何で呼ばれたんだ?」


聖盾アイギスの所持者、ガッテムが聞く。


「その呼び方やめてくれって言いましたよね?ガッテム。呼ばれた理由ですか?僕も知りませんよ。恐らく勇者武器関連だと思いますが…」


聖剣デュランダルの所持者、ルキウスが答える。二人は今、五人の神殿騎士に連れられ始まりの街、ボルン内の二大神教会総本山、その大聖堂に来ていた。


「この先に聖女様がおられる。くれぐれも無礼が無いように」


神殿騎士達の歩みがチャペルの扉の前で止まる。そして扉が開かれる。


「──────ようこそ、お待ちしておりました。異界の勇者様」


そこには、祈りを終えた聖女(ノミアス)が二人に振り向き立っていた。


「ど、どうも」


「あのー、何故僕ら二人が呼ばれたのでしょう」


「聖なる武具を持つあなた方に頼みたいことがあります。異界者(あなた方)が原因の問題、其れを解決して下さい」


『ユニーククエスト〈滅魔の願い〉が発生しました。受注しますか?』


二人の前に、クエストを告げるウィンドウが現れる。


「んなッ……?!」


「これは………」


戸惑う二人。そして聖女がもう一度問う。


「受けて……下さいますか?」


二人の勇者は顔を見合わせ、うなずき合う。


「おう!任せろ!!」


「任せて下さい!」


片やゲームを純粋に楽しむため。

片や彼女の願いを聞き届けるため。


思いは違えど二人は、目の前のウィンドウに手を伸ばす。たとえそれが悪魔の怒りを呼び起こすとしても。

まあ要するに

聖女「お前らが起こした問題やぞ。自分のケツ

は自分で拭けや」

てかんじですね。因みに、聖女ちゃんは静かにキレてても顔に出さないタイプ。一番怖い。

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