8話 新たな大地、久方ぶりのPKを
「ここは…森…か?」
冥門から出た先には、視界一杯の豊かな緑が
広がっていた。冥界の景色も壮観だったが、この景色を見るとやっぱり落ち着くな。
「てか、また森か。まあ、他のプレイヤーに見られてないだけマシか」
そんなことを呟きながら森を探索する。途中で《悪魔翼》があるのを思い出し、空から辺りを探索する。しばらくすると、バイソンのようなモンスターと戦っている三人のプレイヤーが居るのを発見した。
「前衛は剣士と盾士、後衛は魔法使いか、バランスの良いパーティーだな。装備もなかなかに良いぞ。何落とすか楽しみだな。まっ、久方ぶりのPKだ、気を引き締めて行くぞぉ!」
因みに、冥門は1分位で消えたよ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「おらぁ!《シールドバッシュ》!」
「ブモォッ!」
盾士、ブルーチーズの《シールドバッシュ》がバイソンのようなモンスター、スパイラルボスにめり込み、大きく体勢を崩す。
「今だっ!やれ、カイ!!」
「ああ!マヨ、頼む!」
「任せて。《エンチャント:ファイヤ》」
「《身体強化》、《ナイトスラッシュ》!」
剣士、カイのバフ盛り沢山の一撃が、体勢の崩れたスパイラルボスの身体目掛けて振るわれ、大きな傷を付けた。
「モ…モゴォ」
その一撃が致命的となったのか、スパイラルボスは倒れ、ポリゴンとなって崩れていった。
「ふぅ、疲れたぁ~」
「まさかスパイラルボスに遭うなんてね」
「まあ、結果オーライ。お疲れ様だね!」
ブルーチーズ、カイ、マヨの三人は強敵を倒した事で油断していた。これは全く悪いことではない。何せ強敵を倒した後なのだから。何が悪かったかといえば、そう。その油断を躊躇いなく利用する悪魔がその三人を狙っていたことだろう。
──ドスッ──
「えっ」
「うん、お疲れ様。《冥極炎気》」
突如として悪魔の声が発せられ、魔法使い、マヨの腹から漆黒の鉤爪が飛び出る。そして燃え上がる。腹部への攻撃に加え、その内部からの炎上攻撃によって、マヨのHPが勢いよく削れていき、リスポーンしていった。
「なっ!!マヨッッ!!」
「お前かッ!!」
その問いに悪魔は答える。瞳孔を開き、好戦的な笑みを浮かべて。
「久しぶりのPKなんだ。愉しませてくれると有り難い」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「久しぶりのPKなんだ。愉しませてくれると有り難い」
「チッッPKか」
「お前よくもぉ!!!」
激昂した剣士が此方に向かって一直線に走ってくる。
「おいカイッ!一旦態勢をっ」
盾士の制止を無視して俺に近づいた剣士が怒りのままに剣を袈裟懸けに振り下ろす。
「怒るのはいいけど、それで冷静さを失うのは良くないぞ」
俺は振り下ろされる剣を右腕のアグゲルで受け止める。野郎の驚愕した顔が見えるが、スキルも使わず突っ込んでくる方が悪い。てかDEF+150マジぱないわ。普通に剣受け止めれる。
「出直してこい」
動きが止まった野郎の首を氷を纏った左の鉤爪で叩き切る。そして散っていった。
「やっぱ首が弱点か。さて、ラストはあんただけだぜ」
「クソがッ!こうなりゃヤケクソだ!」
とは言いつつも、盾を構えたまま動かないのはどういうことだ?そういうスキルかな?
「まあいいや、《ダークニードル》」
盾士の周囲から四本の黒い針が地面から勢いよく伸びて、その内二本が盾に弾かれ、残りの二本が突き刺さる。
「嘘だろッ!魔法使うのかよ!!」
「油断大敵!」
その隙に俺は、《疾走》を使って盾士に近づく。
「ぐっ…《シールドバッシュ》!」
「甘い甘い!」
盾士の苦し紛れの《シールドバッシュ》を横に跳ぶことで避け、至近距離に接近する。おいおい、こんなもんか?久しぶりのPKなのにちょっと肩透かしだぜ。
「これっ……ならぁ!!」
マジか!!こいつ盾手放して殴ってきやがる!
「イイねぇ!そうじゃないと!」
まあでも、これぐらいなら避けれるな。そう思いながら顔面目掛けて放たれた拳を首を曲げて避ける。
「何で避けれんだよッ……!」
「GG」
そう言って奴の心臓の辺りに右のアグゲルで貫手を行い、内部から《冥極炎気》を発動させる。そして消えていった。
「やっぱり心臓も急所になるのか。あ、そうそう!戦利品戦利品!!」
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初級HPポーション×3
初級MPポーション×2
鋼の剣×1
魔法士のローブ×1
松明×4
レッサーウルフの牙×3
レッサーウルフの毛皮×7
レッサーウルフの肉×8
スパイラルボスの捻れ角×1
スパイラルボスの毛皮×4
スパイラルボスの肉×6
獲得マネー+2438
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「うーん、さっきのバイソンの素材あんじゃん!お金は…多いのか?これ?」
2438マネーって初級HPポーション何個分だろう?20個くらいか?まあ考えてても仕方ないか。
「よしっ街行くぞ!街!!」
《悪魔翼》ってほんと便利。大好き。