ようこそ
「嘘だろ?」
その写真が信じられず、俺はゆっくりと横を向く。
誰もいない。
『君には、見えないよ』
「うわぁ!?」
イヤホンから、男のささやき声が、聞こえた。
俺は椅子から転がり落ちて、床の上に座り込む。転がり落ちた衝撃で、イヤホンが外れた。
「はぁ、はぁ」
自分の心拍数が上がっているのを感じる。
演出にしてはリアルな声だった。まるで、直接話しかけられたような感覚。
「ようこそ?」
立ち上がって、画面を見ると、真っ黒な画面の中央に『ようこそ』の四文字が書いてあった。
「き、消えない!?」
気味が悪くて、画面を消そうとしたが、消えなかった。
「ゲーム機には悪影響だが、電源ケーブルを抜こう」
俺は、思い切って電源ケーブルを抜いた。
「な、なんで?」
電源ケーブルを抜いたのに、画面が消えなかった。
「兄としての威厳は、丸つぶれだが、弟の所に行こう」
恐怖で、心が染まっていくのを感じて、隣の部屋で遊んでいる双子の弟がいる部屋に向かおうと、部屋から出ようとする。
「し、静かすぎる」
ここで、俺は家が静かすぎることに気づいた。
「隣の部屋から、物音が聞こえない」
いつも隣の部屋から聞こえていた、双子の弟の話し声が聞こえない。
「落ち着け、寝ているだけかもしれない」
俺は、ゆっくりと扉を開けて、部屋から出る。
廊下の電気はついておらず、暗かった。かろうじて、窓から月明かりが差して、廊下の輪郭がわかるぐらいだ。
「ユウ、リンいるか?」
俺は、弟の部屋の扉を叩く。
返事がない。
寝ているのか?
「入るぞ」
俺は、扉を開けて部屋の中を覗く。
「誰?」
部屋の中には、誰かが体育座りをして、背中を向けていた。
「ユウ? リン?」
双子の弟のどっちかか?
俺は、ゆっくり近づいて、座り込んでいる人物の肩を叩く。
「ねぇ」
女性の声!?
全身に鳥肌が立つ。
動けない俺に、女性は、ゆっくりと振り向く。
「どうして、私を殺したの?」
その女性は、ゲーム内で、ストーカーに殺された、シオリちゃんだった。
「あああ!?」
俺は、悲鳴なのか、叫び声なのか、わからない声をあげながら、部屋を飛び出した。
慌てて一階に降りる。
「おい! 開けよ!」
玄関から外に出ようとしたら、扉が開かなかった。
「私を置いて、どこ行くの?」
女性の声で話しかけられ、肩を叩かれた。
「俺は、お前のこと知ら……」
振り向いてしまった。
「あ……あ……」
目の前には、不自然に首が曲がった男の姿と、血だらけのシオリちゃんがいた。
「これからは、二人じゃなくて、三人とあの部屋にいようね」
次の瞬間。俺の視界は、真っ暗になった。
今日サトルが学校を休んだ。
先生によると、しばらく学校に来られないそうだ。
「どうしたんだ、サトル?」
携帯のアプリで、メッセージ送っても返事がない。
「たく、人にゲーム勧めるなら言葉で言ってくれよ」
俺の机の中には、『シンゴ。このゲームめちゃくちゃ面白いぞ。サトルより』という置き書きと共に、『シャッター』と書かれたゲームがあった。
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