６

「起きなさい馬鹿真木！！」

　痛烈な蹴りが私の後頭部を……ってこれ本気だよね！？

　明らかに首の骨が！！

「痛いよサッチー！！」

「やっと起きたのね？時間見てみなさい……私が起こした訳が分かるから」

「えっ？」

　身体を起こして、時計を確認する。

　その時刻は八時！

　学校の始業のベルは八時半から！

　そしてここから学校までの時間は歩いて十五分！

　それにいまからおこな……！

「変な思考はいいから！　早く顔を洗ってきたほうがいいよ？」

「そうでしたかぁ！」

　思い切り起きあがると、布団が剥がれて、中にグレイがいるのが見えた。

　……サッチーが一歩後ずさった。

「いやいやいや！？　違うよ！？　これにはちょいとばかし深すぎる理由がね！？」

「そうだね……真木がショタコンだっていう理由が……」

「違うよ！？　てか起きてよグレイ君！？」

　こんなに叫んでいるのにもかかわらず、グレイに起きる気配はない。

　すっかり安心した表情で、寝ている。

「とりあえず早く起きて！　制服に着替えてご飯食べるわよ！」

「アイアイサー！」

　私はすぐに起きあがって……グレイを横にのけてからだよ？

　朝ご飯が用意してあるであろう机に向かう。

　やはり朝ご飯はサッチーが作ってくれていたようだ。

　それを口の中にかきこんで、制服を着る。

　時間は……八時十分！　まだいける！

　そしてそこで気が付いた。

　うん、今日は日曜日だね？　サッチーは一体何がしたいのかな？

「まんまと引っかかってくれたね♪

　さて、じゃあ私服に着替えて、行くよ？」

「いろいろ突っ込みたいのはやまやまだけど、一応、どこに？」

「突っ込みは禁止、どこに？　はぁ……真木はずっとグレイ君をおいとくつもりなの？」

「え？　そうだけど？」

　え？　何サッチーその目は？　ダメなの？

「まったく……そういうと分かってたから一応の確認よ。

　おいとくなら親しくならなきゃね？」

　私にウィンクするサッチー。

　そうか！　遊びに行くんだね！

「っで、どこに行くの？」

「最近近くに遊園地出来たじゃない？　あそこよ！」

「え～めちゃくちゃ混んでそうじゃん！　違うとこにｓ……！」

「これを見なさい！！！」

　そういってサッチーが私の前に提示したのは……。

　なんと！　その遊園地のフリーパス！

「これ！！　どうしたの！？」

「今さっきポストを確認したら入ってたのよ！　運がいいわ！」

「へぇー！！　へぇー！　へぇー……！　へぇ……へ？　今さっき！？」

「そうよ！　だって私は応募はがきをここの住所で出してるから！」

　まさに衝撃の事実！

　一言くらい言ってよ！

　というかときたま変な商品が来るのはあんたのせいですか！

「いやいやいや！　ダメだからね！？　自分の住所でしようよ！？」

「やだ！」

「やだ！　……じゃないよ！」

　ひとまず休戦、サッチーがグレイを起こしに行く。

　その間に私は私服に着替える。

　さ～て……何にしようかなぁー……。

　お？　この服なんて……いいかな？

　でもこっちも……う～ん……。

　十分ほど考えて考えて、ようやく決めた服を着て、サッチーとグレイの様子を見に行く。

　布団が敷いてある……敷きっぱなしじゃないよ？　今日はたまたま……そう！　たまたま出してあるだけ！　部屋では、サッチーが懸命にグレイを起こそうとしていた。

　しかし起きる様子がないため、困った表情をしている。

「起きないの？」

「起きないの……早く行っていっぱい遊びたいのにね……」

「そういえばさ？　何で三枚も券があるの？」

「……乙女には隠さねばならない秘密があるのよ」

「何その意味深な言葉！？　ていうかサッチーは秘密の割合が多いと思うよ！？」

「んん……」

　すると、グレイが、薄く目を開いた。

　そして、私とサッチーの顔を見てから、少しだけ困った様な顔をした。

「おはよう、真木が五月蠅かったでしょ？」

「主な原因はサッチーだよぉ！」

「えっと……僕はいったい……」

　起きあがり周りを見る。

　しかしいっこうに思い出せないのか、眉根を寄せて考えている。

「そんなことよりさ！　遊園地行くんだけど……グレイもいくよね？」

「遊園地……」

　グレイは見るからに嫌そうな顔をする。

　あれぇ！？　私ってもしかして地雷踏むのがうまかったりするのかな！？

　今回で何回目なんだろう！？

「あれ？　遊園地知らないの？」

「ぃぇ……地界にも遊園地はありましたから……何回もいかされましたよ？　磔にされたまま紐無しバンジーです」

「それ拷問だよね！？　てかそんなの何回もしたんだ！？」

「……させられたんです、僕には味方がいませんから、数の暴力という奴で……」

　グレイが自重気味に言う。

　だがしかし、私はその中の一言だけがどうしても許せなかった。

　どうあっても赦したくない言葉があった。

「グレイ！　私が味方だよ！　だから今後一切味方がいないなんて言わないで！！」

「――――え？」

「私が味方！　グレイは一人なんかじゃないんだよ！」

　グレイのきょとんとした顔が映るが、これだけは譲れない。

　私の前では誰も一人になんてさせてあげない！