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皆さんに楽しんでいただければ幸いです♪
「真木さん……僕は……」
「帰ろう、グレイ♪ これから楽しい事いっぱい、いっぱい――――いーーーーぱい! 楽しい事を教えてあげるんだから!」
「…………はい」
よかった……ようやくだよ……♪
私はグレイから一時目を離して後ろにいる“天使”、“悪魔”達の方に向く。
その中でも一際強い存在感を放つ二人を交互に見る。
「「おめでとう、真木さん」」
「ありがとう、ルシファーさん、シルファーさん♪ そこで、二人にお願いがあるんですが……聞いてくれますか?」
「「なんでしょうか?」」
「グレイに移った私の全てを、取り戻してはくれませんか?」
「無理です」
「わかっているんでしょう? それが不可能であることを」
うん、正直に言えば分かっていた。
でも出来る事ならそうしたいと思っていた。
でもどうしようか? グレイをこのままにしておく訳にはいかないんだけどなー……。
「真木さん……このままでいいですよ僕は」
「でもー……」
「いいんですよ……だって僕はもうこれ以上不幸になんてなれないんだから、それに、真木さんは僕の事をずっと見放さずに、幸せを与えてくれるのでしょ……僕は幸せ者ですよ」
っ! とても嬉しい言葉をかけやがりますねコノヤロー!
でもなんでだろう? なんでそんなこと言えるのだろうか?
うーん、まったく訳が分からん。
「“ハッピー”……真木さんにだけはこれを覚えていて欲しいです」
「なにそれ? “幸せ”?」
「違います“ハッピー”これが僕の“天使”の時の名前。永遠に忘れられない僕の名前」
そ、そんなことが……だったら私が幸せをあげる意味なんて……。
「そっか……グレイは元から幸せを持っていたんだね♪」
「……はい♪」
「じゃあ帰ろうか♪ 私達の家に♪」
「――――――はいっ!」
その返事だ! 待ったましたよ!
「よっし! 帰りましょうか! 私達の家!」
「はい!」
私達はこの世界での意識を閉じていった。
――――――――――――
部屋に入ると真新しい空気が鼻を襲った。
その部屋のリビングの椅子に足を組んだサッチーが待っていた。
そのサッチーは私の隣にいるグレイを確認すると、汲んでいた足を解き、ゆっくりと私の方に近寄って……って何か笑顔が怖いですよ!
「ふふふ、良くも私の頭を叩いてくれたわね~? 覚悟は出来てるんでしょうね?」
「いやー……あの時は夢中だったからー……なんて……駄目?」
「駄目♪ あ、でも、次の質問に答える事が出来たら許してあげてもいいわよ?」
「やったー♪ っで、何?」
「その……えっと……美味しかった?」
サッチーがもじもじしてる! うわ、可愛い!
とと、こんな事じゃなくて……えっと、美味しかった? 何が……あ、そうか♪
「うん♪ サッチーの料理はいつも美味しいよ♪」
「そう、良かった♪ それから、お帰りなさい、グレイ♪」
「ただいま帰りました」
「固いわねー、これからどんどん柔らかくなっていくと思うけど♪ 今はそれで我慢しといてあげる♪
それから……やっぱり、だったでしょ?」
あれ? やっぱり私の存在ってどんどん薄くなってません?
ていうか何二人で話しちゃってるんですか! 私も入れて欲しいなー! まあサッチーが怖いから言わないけど。
「真木、どんなところでも、どんな場所でも、絶対に――――グレイの事を助けにいくよって♪」
そんな事グレイに話してたんだー……そこまで考え無しではないんだけどなー……。
っていうか、そんなふうに見てたんだサッチー!
「――――はい!」
……ま、いっか♪ 今はこの笑顔を見ていたいと、そう思えるのだから。