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皆さんに楽しんでいただければ幸いです♪
地面が近い、地面が近づいてくる、僕はここまでなんだ、これ以上誰にも迷惑を掛ける事はないのだと思う。
だからそれはそれでいいと思う。
だけど自分の心に残っている唯一つの心残りは幸さんの言っていた真木さんの性質のこと。
「真木はね、自分の目で見える範囲では絶対に諦めないんだよ」
それが心残りだ。
もしかしたら真木さんはこれからも僕の事を探し続けていくかもしれない。
絶対に辿り着けないと知っていながら。
それは嫌だなー……。
「ごめんなさい、真木さん。僕はこれからずっと真木さんを悲しませる事になっちゃいます」
「だったら悲しませないように努力しよ♪」
「え……――――?」
地面との激突の瞬間、僕の体は何者かによって支えられ、地面との衝突の衝撃は来なかった。
だがそれよりも僕が驚いたのはその声だった。
忘れもしない、僕の事をだれよりも真っ直ぐに捕らえて僕自身だけを見つけてくれる瞳。
――――夕日。
「もう、ごめんなさいなんて言わないで」
真木さんは悲しそうな顔で僕の顔を見る。
その顔をどこかで見た事あるような気がしてならなかった。
それがどこだったかは思い出せないが、とても大切な記憶だったと思う。
「なにやっちゃってくれてんだよ!?」
すると、上から三人の天使が降りてきた。
勢いを殺すだけでいい降下型の飛行なら、翼があるだけで可能にもなる。
だからそれを使って僕の死に様を見ようとしたのだろう。
だけど、ここには真木さんがいる……真木さんを巻き込むわけにはいかない!
翼に力を篭める。
自分の意思で空を飛ぼうと思ったのは本当に久方ぶりだ、その気持ちが翼にも伝わったのか、翼は大きく広がった!
付いている『普通の天使では飛ぶ事すらままならなくなる重し』を付けられているのにもかかわらず、僕の翼はその強さを誇示するように広げられた。
驚く“天使”達の顔が見えたが構わなかった。
僕は真木さんを安全な場所まで送り届ける、それだけに心が行っていたのだから!
――――――――――――
これがグレイの翼……。
私は目の前に広げられた灰色の翼を凝視した。
――――綺麗……本当に罪を作ってしまいそうな程に……。
グレイが私を抱きしめる。
少し恥ずかしかったが、逆らわなかった。逆らいたくなかった。
グレイがこんなにも近くにいてくれているのに、わざわざ自分から離そうと何て考えたくもない。
「飛びます……」
グレイが言ったのが早いか、それとも何か重しの付いている灰色の翼がはためいたのが早いかは分からない――――が、私達が空に飛び上がったという事には変わりなかった。
それは有り得なかった。
二回羽ばたいただけでどれだけ上空にまで上がっているのか、それは他にいた“天使”達の比ではなかった。
強い。明らかにこの灰色の“天使”は――――
――――純白の翼が灰色に変わる時。
ズキズキと頭が割れるような刺激が伝わる。
まるでそれを覗かせないように、頭がそれを拒絶するように、思い出させないようにするかのように訴えかけているようだった。
「グレイ、帰ろう? 私達の家に」
「……」
グレイは沈黙する。
何かを考えているのか、少なくとも顔が見えていない私にはグレイが何を考えているかなんて分からない。
しばらくの間があってから、グレイは呟くように答えた。
「……ごめんなさい、それは出来ません」
嫌だ。
「だってそれをすると、僕はまた真木さんに迷惑を掛けてしまう事になってしまうから」
嫌だ。
「だから、真木さんを“人間界”に送り届けた後、僕はもう二度と真木さんの前には……」
「嫌だ!!」
私は叫んだ!
これ以上、グレイを遠くに感じる事も嫌になったからだ。