前へ次へ
2/30

皆さんに楽しんでいただければ幸いです♪

 え? え? これはいったいどういうことでございましょうか?


 私は半分……いや混乱でみたされつつも、その羽が本物であるかを確かめるべく、引っ張ってみた。

 離れない……どうやら本物のようだ……。

 そして起きない……どうやら屍のぉ……おっと、いかんいかん。


「と、と、とりあえず、こんな所に放置しておく訳にはいかないよね!?」


 警察に通報することも考えたが……羽あるし!?

 通報したら、私が痛い子だよ!?


 抱っこしてみる。

 ふむ……鞄が邪魔ですね、はい、わかります。

 二つのものを背負うなんて無理なんです。


 とりあえず、お行儀が悪いですが、鞄を口にくわえて、都合良く今日は置き勉で、軽い……たまたまですよ!?

 その状態で少年を抱えて、サッチーの所にまで戻る。


 サッチーの驚いている目が……あれ? 何その哀れみの目は!?


「誘拐しちゃったのかぁ……」


「違いますから! 何そのとうとうしちゃったかぁ……って雰囲気!?」


「まぁそれは冗談として」


「冗談だったの!? 絶対本気だったよね?」


「私にどういう反応をしろと?」


「とりあえず、沈黙で鞄を持ってください……」


「だがことわr……」

「らないでええええ!?」


 サッチーは、冗談冗談と笑って鞄を持ってくれた。

 その前の事を考えると素直に喜べない自分がいるんですが……。

 とりあえず、この子に早く手当をする為に、気にしない事にした。




「っで? 結局その子は誰なの?」


「さぁ? さっきの公園で倒れてたから、つい……」


 サッチーよ、黙って私を痛い子を見る目で見てくれるな……。


「どうすんのよ、この子が起きたら? 親とかが探してるかもしれないよ?」


「あー……言うと非常にメルヘンな話なのですが……」


「あぁ、真木の頭の中が?」


「そうそう……違うよ! ちゃんと聞いてよ!? 進まないじゃん!」


 納得してしまったのが、ちょっと鬱になりそう。

 それよりも、今はこの状況を後悔せねば…。


 私は少年に被せていた私のブレザーを取った。

 そこから表れる灰色の羽を見て、サッチーは唖然とする。


「こういう訳なんですよ……」


「あ~……私にも真ッ木症状が……」


「何その病気!? しかも末期症状と重ねてるよね!?」


「うん」


「納得できるかぁぁあああああ!!!」


 とりあえず、私達がまずすべき事は…落ち着く事だ。




――――――――――――


 良い寝心地だなぁ……一体何時以来の事だろうか……。


 目を開けると、白い天井が目に付いた。

 そして食欲をそそるような匂いも。


 起きあがり、確認する。

 ここは既に“人間界”……のはず。

 そして最後の記憶は空腹で倒れた場面。


 区切り区切りで、一瞬意識が戻った時に聞いた叫び声の主がここの部屋の主なのだろう。


「お? おきたね!」


 すると扉から、顔中に笑顔が自分より背が高い女性がいた。

 見えない所でまだ、何かを炒める音がするので、料理の主はこの人ではないようだ。


「私は日比野 真木っていうんだぁ~、君は? 何て名前?」


「……」


 僕は黙るしかなかった。

 何故なら名前など持っていないのだから。


 でも真木という女性はそういう風にはとらえなかったようだ。


「そうかぁ、見知らぬお姉さんに話しかけられて、ぺらぺら喋れないよね~?」


「ぁ……ぃぇ……」


「うんうん、全くもって仕方がない事だよ! むしろ偉い! 知らない人には名前を教えちゃダメなんだよ!」


 力強く演説する真木さん。

 いいえ、違うんですが……。


 すると、真木さんの後ろにいつのまにか女性が立っていた。

 手には数種類の料理を持って。


「なら知らない人に名前を教えた真木は、その子より精神年齢が下ってことね?」


「はっ! そうとも考えられる! うわぁぁん!」


 泣き出すマネをする真木さんに、後から入ってきた女性が。


「いいのよーほら、お姉さんの胸の中でお泣きなさい」


「うえええん、お姉ちゃぁぁぁあん!」


 二人だけの世界に入ってしまう二人。

 いや違った、後からきた女性はずっとこっちを気にしてる。


「ぁ……そ、その……」


「いいのよ、話せる時に話しなさい? それから、この子にお礼を言っとくのよ? あなたを拾ってここまで担いで来てくれたんだから」


「はぃ……」


 僕は、確信した。

 この女性達には敵わないと。


前へ次へ目次