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皆さんに楽しんでいただければ幸いです♪
ブンッ! と耳の近くで風なり音がした。
一拍遅れてそれが真木の放った拳によるものだと理解する。
汗が滝のように流れ出る。
アレは防げるようなものではない、防ごうにもまず軌道も予備動作も何もかもが目で追えない。
「サッチー、考え事してる暇は無いよ」
真木が豪拳を放つ。
三回目にしてようやく目が慣れ、ぎりぎり目だけは追い付くようになり、より反則的な事実に気付く事になった。
真木の格闘術には予備動作というものがそもそも無いのだ。
手がある位置から拳を振るう、単純な動作であるが故にどこまでも難しい必殺。
真木が本気で自分を刈り取ろうとしているのが分かる。
顎に来た拳をぎりぎりのところで何とか左手で防ぐ!
左手に鉛が叩き込まれたような衝撃が疾るが、それが納まる前に真木の反対の拳が私のお腹にヒットした!
「がはっ!」
胃に残っていた物が胃液を一緒に吐き出され、喉をズキズキと刺激する。
本気だ。真木は本気で私を……!
「サッチー、これが最後の警告だよ……この手を離して」
「ふ、ふふふ、離すわけ……ないでしょ?」
「そっか……」
どすっと今度は鈍い音が脳自体を刺激するように響いた。
一瞬だが手を離しそうになる。
だけど気力を振り絞ってそれだけはどうにか避けた。
手は放れない。
代わりに真木の目の前に膝を付く事になる。
「サッチー、知ってる? 人にはどうしても鍛える事の出来ない急所っていうのがあるんだよ?」
「っ!」
咄嗟に痺れている左手を脳天に持っていった。
直後、左手越しの衝撃が脳天を打撃した! 凄まじい破壊力、左手が無ければきっと簡単に混沌させられていたであろう威力が想定させられる。
だが、甘かった。
今の真木が、私に手加減する可能性を否定しきれなかった。
故に、痺れた腕に気を取られている間の僅かの隙に反対の手の拳が脳天に直撃するのを防ぐ事は出来なかった。
「か、はっ――――!」
「ごめんね……でも、絶対に戻ってくるから」
手が放れる。
同時に真木の姿は門の向こう側へと消えていってしまった。