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皆さんに楽しんでいただければ幸いです♪
「出来た」
私は少し離れた位置からそれを見上げる。
それは門だ、人が万歳していても通れるくらいの大きさの。
やっと完成したのだ。
「なんだっけ……これからどうするんだっけ……」
私は必死に思い出す。
これを作ったのはグレイを助けることに何か関係があるはずだ、それが何かを
薄れた記憶から捜し当てねばならない。
「…………開けゴマ」
自然に口から出た言葉、それを合図に門に光が宿り、向こうに見えるべき湖が
見えなくなった。
成功だ。
さぁ行こう。
そう思った時、私の肩を誰かが掴んだ。
誰だろう?
「真木!」
懐かしい声と一緒に聞こえたのは、親友の声だった。
だけど今は構ってる暇がない。
足を一歩前に進ませた所で肩を掴まれる。
これでは先に行けない、振り払って行く気はない。
「離してよ、サッチー」
「駄目だよ、今この手を離したら真木が何処にいくか分からないじゃない!」
「それでも離して……私はグレイを救いに行かないといけないから」
私はより強く前に行こうとする。
強引に振り払おうとは思わないが、離れてしまったなら別に構わないと思っているから。
だけど、サッチーの手は私の肩から離れるような気配がなかった。
「どうして真木が……? そうだ、私がグレイの救助隊を組んであげる! それでいいでしょ!?」
「駄目だよ……そんなんじゃグレイには手も届かない」
「どうして分かるの? やってみないと分からないじゃない! やってみるよ、やってみせるよ! だから真木がそんな無茶をする必要なんてないんだよ! だからお願い! 止まって!」
サッチーは心から私の事を心配して私に向かって叫ぶ。
だけど、そのどれもが徒労、どうしても私を止めるような決定打には成り得ない。
「残念だけど……」
「いいよ……じゃあ私は死ぬ」
「! そんなこと!」
「ううん、私はこれ以上真木が危険に飛び込むところなんて見たくない。真木はもっと幸せに成るべきだったんだ、成らないといけないんだ! だから!」
私は決心した。
何もせずに行くなんて考えを外に弾きだした。
最善が駄目ならば次善を、私は誰かの笑顔のためになら、どこまでだって非常になってみせる。
「もういいよ、サッチー……」
「真木っ! ―――――きゃ!」
尽きだしたのは救う筈の手。
向かうのは救った筈の相手。
放ったのは紛れもない自分。
「勝負しよう、私が勝ったらサッチーは死なずに待機、それでいいよね?」
「……私が勝ったら?」
「それは考えなくていいよ――――だってどうせサッチーは負けるんだから」
私は今もっとも救うべき存在の為に、これからも守っていこうと思っていた相手を手に掛ける事にした。
自分の心をどこまでも殺して。
――――――――――――
僕は掛けの上に来ていた。
下は見えない、見えない程に高い。
辛うじて水がある事だけは分かるがそれ以上は何も分からない。
「さぁ“悪魔の子”、ワクワクしねえか? ここからゴム無しバンジーが出来るんだぜ?」
後ろにいる天使が、僕の翼に重たい枷を付けながらそう言う。
この枷があってはいくら僕といえど飛ぶ事は難しい、というか飛べない。
「いくら悪魔の力があるお前でもこの高さから落ちたらどうなるかな~? 楽しみだな~?」
だんだん端が近づいてくる。
僕は覚悟を決めた。
どうせこのままここで待機しようとしても蹴り落とされるだけだ。
なら自分から入ってやる!
そう思って走り出そうとした自分。
だが、その希望は簡単に打ち砕かれた。
「もう飛びたいのか? じゃあ飛べよ!」
踏み台が落とされた。
まだ崖とはあんまり離れていない! このままでは崖の壁に衝突してしまう!
「ひゃははははははははは!!!!!」
狂った笑い声だ。
でもいい、このまま死ねるなら、僕はこのまま…………
――――――死にたい。