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皆さんに楽しんでいただければ幸いです♪
「真木さんから離れろ!」
僕は勇気を振り絞って真木さんと、“仲間”達との間に割り込んだ。
目の前の“天使”達は不愉快そうに顔を歪めて僕の事を見ている。
「テメェ……まさか自分の目的を忘れてる訳じゃねぇよな?」
その内の一人が声を荒げて聞いてくる。
正直怖かった。
でもそれ以上に、この“仲間”達が真木さんに近づこうとしたのが嫌だった。
何よりも―――嫌だったのだ。
だから僕は逃げ出したい気持ちを抑えて、真木さんの前に立つ。
「俺達を裏切るとは良い度胸してるじゃねぇか! ちょっとこいや!」
“仲間”の一人、名前すらまだ覚えていない、が顔を真っ赤にして怒鳴る。
周りの全員もそれに合わせるように僕に罵倒を浴びせて、僕を両脇から抱え込む。
「遊園地は楽しかったかよ!? 俺達が地獄の遊園地に連れて行ってやらぁ!」
そして飛翔する。
僕は抵抗しなかった。
抵抗した所で多勢に無勢、余計に逆恨みが酷くなるだけだ。
―――それに真木さんや幸さんに迷惑が掛かってしまう。
「グレイ! どこ行くの!?」
「真木さん……さようなら……」
僕はそれだけを言い残して、この地上“人間界”から消え去った。
その後にどんな“奇跡”が起こるかなんてしるよしもないで。
――――――――――――
私がやっと観覧車から降りた時にはもう既に事が終わった後のようだった。
観覧車の前にあるベンチに、まるで魂が抜けたかのように脱力した真木の姿がある。
でもそこにグレイはいない。
グレイは私に目的を話してくれた。
でも真木は殺されていない。
ならきっと、グレイは目的より私達を優先したという事なんだろう。
私はその事がとても嬉しかった。
「真木……?」
当面の問題はこの状態に陥った真木をどのようにして抑えつけるかだ。
私は今までにこの状態の真木を一回だけ見た事がある。
この状態の真木は誰に何を話されようが反応しない。
ただ自分の世界にだけ没頭する。
―――相手を助ける為の行動を必死に考えているのだ。
あの時、私の家に電話をして迎えを呼んだ時も同じだった。
私がどれだけ罵倒しても、暴力を振るっても反応がなく。
けれど知らない訳では無かった、全てが終わり、再び真木と笑えるようになった時、真木は冗談めかしに笑って、罵倒した事も暴力を振るった事も許してくれたのだ。
そう、何もかも自分が悪いということにして、私に幸せになる選択だけを残したのだ。
「サッチーがもしも私と一緒にいて幸せなら、私の罪を許してください」
あの時私に向けられた視線は、私がお父様に対して婚約破棄を訴えた時の決意の目より決意に満ちていた。
相手の幸せの為には、自分からあらゆるものをなくして、相手を優先し続ける、真木はそういう性格なのだ。
グレイの事はわからない。
でも、グレイは自分を“天使”だと言った。
ならグレイは今“天界”とやらのところにいるはずだ。
そう、人間では絶対に踏み入れないという領域に彼はいるのだ。
だけどそれがどうした? たかが隔絶されているという理由のみで、真木が止まるとでも思ったのか?
それは悲しいことだ、真木は諦めない。
それが相手の幸福に繋がるという結果が目に見えて分かっていることを真木が諦める訳がないのだ。
私は電話で何人かこっちにくるように要請する。
真木を運ぶのは私の体では労力がありすぎるから、運ぶ人を用意しただけだ。
真木はお父様にも気に入って貰ってるから、真木に対しては私は自分の家を存分に使う事にしている。
それで何も起こらないと知っているからだ。
私は真木の何も見ていないのに、開いた瞼を落とす。
「一体どんな馬鹿な事を考えているのかな? 今度もきっと、私を助けてくれたあの時のようにグレイを助けてくれるのかな?」
私は自然と顔が綻びます。
それはそう、成長に連れて変わっていく心と体なのに、真木はずっとそのまま、私を救ってくれた時のままでいてくれているのですから。