前へ次へ
12/30

12

皆さんに楽しんでいただければ幸いです♪

 もう幸さんの目は景色を見てなかった。

 その目に映るのは僕だけ。

 僕だけを真っ直ぐに見つめていた。


「私はグレイが天使だとか悪魔だとかどうでもいいんだよ……でも一つだけ、真木に目をつけられたからには一つだけ聞いておかなくちゃならない事があるの。

 ――――グレイ、君は真木をどうするつもりだった?」


 僕はその言葉に背筋がひやりとしたのが分かった。

 コレが悪寒というものなんだろう。


 幸さんに敵意はない。

 あくまで確認はする、そういう雰囲気が出ている。

 もし、選択を誤れば、僕は……――――。



――――――――――――


 観覧車って遅いんだな~……。


 私はそんな事を考えながら、一人でベンチに座って買ってきたアイスを食べていた。

 でもどうしてスー○ーカップがないんだろう?


 そんな私に大きな影が降り注いだ。


「これがあいつの獲物だよな?」


 影がそう呟いたのと同時、私は瞬時に上を見上げる。

 そこにいたのは、純白の翼を広げ、空に浮いている青年三人組だった。

 それもちょっと柄の悪い。


「どちら様ですか……」


 至って平静を装って聞く。

 目の前のモノを何かと、理解しようとも出来ない。


「獲物に名乗る気もない」


 三人のうちの一人がそう言う。

 その隣の一番大きな羽を持つ青年が、


「お前、あいつの目的知ってて匿ってんのか?」


 そう問うた。

 あれ? 目的って観光じゃなかったっけ?


 そんな事を考える暇も与えないとでも言いたげに、同じ青年が真木の目の前に降り立った。

 いやいやいや! 近すぎるから!? せめてもうちょっと離れてよ!

 そう考える私に、青年は告げる。

 それは、私とグレイを引き裂くであろう一言だった。


「あいつの目的はなぁ……――――!」


――――――――――――


「僕は……真木さんを……」


 ダメだ……言葉が続かない……これ以上は、言えそうにない……!


「グレイ? 別に責めてる訳じゃないの、それが何であれ、私は知っておきたいの、だから話して?」


 幸さんの言葉に嘘はないだろう。

 でも、僕は自分でそれを言うのが酷く躊躇われた。


「僕は……」


 罪の意識は完全に消える訳はない。

 それは永遠に(ずっと)僕の心をくすぶるだろう。

 でも、これだけは、これだけは口にしてはいけない気がした。

 例えそれが自分に優しさを向けてくれる人であっても……。

 いや、優しさを向けてくれる人であるからこそ、僕はその事を話したくはない。


「一回でいいの、此処は高所での個室だよ、誰にも聞かれない、だからお願い」


 幸さんはそう言ってくれるけど、僕はどうしてもその言いたくないと思った。

 だから、出来るだけ、それはもう、幸さんとの距離でも聞こえないような声で言った。


「僕は……真木さんを……――――殺そうとしました」


 それは罪の意識を深く感じる言葉だった。

 もう後戻りは出来ないだろう。

 その時、ふと見た外に不吉をみた。

 その瞬間、僕は動く事を躊躇わなかった。

前へ次へ目次