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16 けいえいしゃ は にげだした!



 ――ちょうどあの時期も、辛い寒季(ふゆ)の頃だった。



 日の殆どを眠って過ごし、尚且つ薬と栄養は欠かさず摂取する。


 そうでもしなければ体力が持たず、衰え弱って死にゆく他ないと、旅の医者に言われた頃のこと。


 ウィンドのもとを離れたくないと必死にぐずるルリの力はか弱くて、振り解くのは酷く容易で。


 薬が尽きたルリの命を繋ぎ留めるため、ウィンドはルリを置いて1人戦いに乗り出した。


 徐々に酷くなる容態。

 迫る寒季。

 報酬はあっても、薬もなければ環境も悪い。


 何度も手を汚した。多くの人間に恨まれた。

 だから一か所に留まることなど出来なかった。


 だが。ウィンドはあの日誓った。


『今日からキミは、私の娘だ』


 屋敷を飛び出した時には、既に好いた女は土の下。

 もう二度と、墓に参ることも許されないだろうと分かっていた。

 あの地を訪れることも、故郷に帰ることも捨て去った。


 ただ、忘れ形見が幸せに生きてくれることだけを願い、ウィンドは鉄鐗を振るい続けた。


 だというのに。


 ルリの命は、もって1年だと宣告された。


 ――たとえ。


 そう、たとえ1年だとしても。その1年の為に、全てを尽くそう。

 1年を、1年と1日にするために。ウィンド・アースノートの誓いは、固かった。


 歯を食いしばり、寒空の下で生温かい血を浴びた。それが少しだけ自らの寒さを緩和させた。

 人の生き血を寿命に変える己には良い皮肉だった。


 その日襲った商隊は、ここ数年で躍進した王都でも指折りの商会のもの。


 金も相当にあるのだろう。彼らを邪魔に思った富豪から受けた依頼は、ウィンドの心を動かして余りあった。

 薬が手に入るかどうかは分からない。けれど、金さえあればまた別の町へ。


 そう、鬼気迫る勢いで鉄鐗を振るった恐るべき殺し屋は。


 商隊を率いていた少女と出会う。


『なにを出せば助けてくれる?』

『――悪いが』

『欲しいものは何だってあげる。あんたの力は相当でしょ? 貴方の一番欲しいものを言いなさい。それと引き換えに、あたしに付きなさい』


 護衛の殆どが死に絶えた。

 標的の商会幹部がこんな幼子とは思わなかったが、なるほど。堂々としたものだった。

 一番欲しいものと引き換えに、自らの命を。


 そこまで言うのだ。もう限界だった。縋りたかった。


『娘の』

『……死者蘇生?』


 明らかに逃げ出す構えを見せた彼女に、首を振る。


『……命を、救えるのなら』


 そう告げたウィンドに、彼女はそっと唇を撫でて。


『状況は』

『余命1年と』

『容態を言いなさい。1人の医者を信じるなんて愚か者のすることよ』


 ぴしゃりと。命の危険があるにもかかわらず、彼女は気丈にそう言った。


 ぽつぽつと、続きを告げるウィンド。

 それが時間稼ぎであることを、彼は分かっていた。

 次第に自らを取り囲む気配を感じ取っていたし、何よりそれを彼女は待っていたようだった。

 けれど。それでも。彼女の瞳は、嘘を言っているようには見えなかった。


『――なんだ。シオット病じゃん』

『……は?』


 ふ、と。周囲の気配が止んだ。

 面倒臭そうに彼女は告げて、ウィンドに目配せする。

 ついてこいと言わんばかりのその堂々とした背中は、小さくも頼もしかった。


 彼女のテントの隅に、小さな薬瓶が置かれていた。それこそ、ウィンドの人差し指とそう変わらないほどの大きさの。


『この薬以外では治せない。でも、あるんだもの。あたしに付くわよね?』

『……これ、幾らするんだ?』

『700万ガルド』

『っ……』


 こんな小瓶が。

 

『あげるわよ』

『え……?』

『信用出来ないなら、あたしを人質にでも何でもして娘のところに行きなさい。生き残るためなら何だってするわ』

『……良い、のか?』

『はぁ?』


 面倒臭い、とばかりに髪を払ったその少女は告げる。



『これであんたが買えるんでしょ? 安いものよ』



 彼女は、物で人間を雇った程度にしか思わなかったのだろう。


 ウィンド・アースノートにとって、それがどれほどの福音であったかを、きっと彼女は気づけぬままだ。


 ――その日からしばらくして、ルリは病から解放された。
















 ――オルバ商会本部。


「会長。ルリのこと、本当に感謝しております」

「は? なに急に。あともう会長じゃないんだけど」


 ゆっくりと目を覚ましたウィンドは、部屋の暗さから既に夜であることを察した。

 首を動かす気力くらいはある。馴染みのある小さな気配の方へと目をやれば、ソファに腰かけて燭台を頼りにペンを走らせていた。


 こちらの方を見向きもせず。目が覚めたことを喜ぶこともなく。

 ただ当たり前のように、彼女は告げた。


「はは。そうでしたな、パスタ殿」

「何が面白いわけ? ……名前か。意外と気に入ってるんだけど。パスタ」


 ウィンドはからからと笑う。

 パスタはフードを被ったまま、おそらくは仕事を続けている。

 籍が無くなったとしても、下々から罵られても、変わらず商会の為に利益を上げ続ける彼女の姿は、あの日と何も変わらない。


「――夢を見ましてな。会長と初めて会った日のことを思い出しておりました」

「あんたが美化するのは勝手だけど、ろくな記憶じゃないから」

「そう仰らずに。……といっても、会長の方が覚えているのでしょうが」

「あたしには、忘れるっていう感覚が分からないわ」


 鼻で笑って、彼女はスクロールをテーブルの端へと追いやった。

 インクが乾くまでの間に、別の仕事をとばかりに新たなスクロールへ手を伸ばす。


 パスタ――ベアトリクス・M・オルバは、一度見たものを忘れない。


 ありとあらゆる数字を記憶し、その比較に時間を掛けることもない。


 だからこそ、フウタに背負われながら進む道中で、皇国商隊の買い上げ金額にも言及が出来た。


 そしてもちろん、その記憶力はエピソードにも適用されるわけで。


「あたしにとっては何とか命を拾ったっていう話以外の何物でもないわよ」

「ですがあの時の交渉が無ければ、今頃は」

「――あれは誰にでも出来るわけじゃない。あんたには交渉の余地があるって分かったからよ」

「はっはっは。なるほど。流石は"経営者"と?」

「まあ、そういうことね。……"経営者"なんて、ろくな"職業"じゃないけどね」

「……ふむ」


 吐き捨てるようなパスタの台詞。


「自分1人じゃ何も出来ない。出来るのは、人を利用することだけ。競争相手も多いし、珍しい"職業"でもない。生き残るためには、確かな実力と才能が要る」

「はっは。パスタ殿は、自らをよく分かっておられるからこそ、有能な"経営者"足り得るのですな」

「今そんな話してないから」


 面倒臭くなったパスタは、ようやく顔を上げた。

 そして、優しい表情のウィンドを一瞥するなり、煩わし気にスクロールへと視線を戻しながら、告げる。


「あんた、少し太ったわね」

「これは手厳しい。確かにあの頃はろくな食事も出来ませんでしたから」

「……満足な食事を取れば太れるっていうのも羨ましい話よ」

「はっはっは、会長のお姿は殆ど変わっておりませんな」

「分解して売り捌いてやろうかしら」

「おお、おっかない」


 ウィンドの元気そうな声は、決して空元気のそれではない。しっかり眠ったことで、ある程度体力は回復出来たのだろう。

 大きな怪我が無かったことが幸いした。肉体の疲労、特に筋肉には大きなダメージがあることだろうが、後遺症が残らないことを祈るばかり。


「――ルリは、おかげで生きております」

「まだ続けるの? この話。んなこと言われたって、まあ生きてるわね、って感想が出るだけなんだけど」

「ルリはパスタ殿を怖がっているものですから、私から言わねばと」

「怖がってるなら、うちの娘を怯えさせるなとか言えば良いんじゃないの、親バカなんだし」

「いやあ。とてもそんなことは出来ませんよ」


 ルリの身の保障と称して、彼女が行ったのは薬の斡旋だけではなかった。"侍従"を付け、"教師"を付け、暇を見ては彼女自身もルリのところへ行っていた。

 最近は殆ど顔を見せていなかったようだが、あの嫌われようでは仕方ない。


「ルリにあれだけ手を尽くしてくれていることが、私にとっては商会に尽くす理由になるのですよ」

「はっ。あんたがいつ死ぬか分かんないからでしょ」

「……ええ」


 今日のことをなじられているのだと、ウィンドは笑って頷いた。

 ただ、今日のことだけではないことも伝わった。


 職業柄、いつ死ぬか分からない。

 ウィンドの死に、覚悟を決めさせることは出来ない。

 ぽっとウィンドが死んでしまった時、ルリはどうなるのか。


 彼女は、それを見越している。


「ありがとう」

「礼は受け取らないわ。あんたが働かなくなったらルリは放り出す。あんたが有能だから面倒見てるに過ぎないって肝に銘じなさい」

「ええ、もちろんです」

「所詮は金の関係よ。変に情を持つから今回みたいなことになるんでしょうが」

「……はい」


 金の関係。

 その通りだ。結局のところ、パスタとウィンドは雇用の関係でしかない。

 それはウィンドに限らない。

 彼女は決して、金以外の関係を結ぼうとはしなかった。


 まるで、どこかの王女が行う、"契約"のように。


「失礼します」


 と、そこでノックの音。

 相変わらずスクロールから顔を上げないパスタに代わり、ウィンドは軽く応じた。


「プリム・ランカスタ様がお見えです」

「ふむ。何だろう。お通しください」

「はい」


 プリムという名前を聞いて、面倒臭そうにパスタは表情を歪めたが、そこはそれ。

 パスタは名義上、もうここの家主ではないのだ。

 ウィンドが招きいれるというのなら、別にそれはそれでいい。

 フードを被って、仕事の続きに手を付ける。


「やほ、ウィンドさん。遊びに来たよ」

「これはどうも」


 扉を開いて真っ直ぐベッドの方へと向かうのは、黒く靡くツインテール。

 すらりと高い身長と女性らしい体型は、商品の服を着せて見世物にするにはちょうどいいかとパスタは考える。

 ――それには少々、胸と尻が大きすぎる気もしなくもないが。

 

 適当におだてて商売道具に出来ないか、などと考えているパスタが居ることなど気にもせず、プリムはベッドのサイドに置いてあった椅子に腰かけた。


「起きれる?」

「ええ。支障は全く……っー!」

「あー、完全に疲れだねえ。歳は取りたくないなー」

「はっはっは。正面から言われると、中々堪えますな」


 あちこちの筋が痛むのか、表情を歪ませながらも上体を起こすウィンド。

 すると、彼のベッドの上にそっと置かれる、金属製の箱。


「これは?」

「今日はリヒターくんちでパーティでさ。ルリちゃんも来てるんだけど」

「ええ、存じておりますよ」

「こんなにおいしい料理、パパにも食べて欲しいって。私は郵便役なのさ」

「――」


 驚いたように、目を丸くするウィンド。

 プリムと、弁当箱の間を行き来する視線は、次第に眦を下げていく。


「そう、ですか」

「そうそう。ルリちゃんはローストしたお肉がお気に入りだったね。贅沢ものめ」

「――はは。昔はあまり食べられなかったものですから」


 パカリ。蓋を開けば、色彩豊かな料理がぎっしり。

 弁当のセンスというのは一朝一夕に身に付くものではないから、おそらくルリが詰めたものではないのだろうが。

 それでも、ルリの好きそうな料理が幾つも入っているところを見ると、ある程度彼女が入れたい料理を選んでくれたのだろう。


「ルリちゃん小食だったの? ダメだよ、育ち盛りなんだから。今のうちから、いっぱい食べられるようにしておかないとね」

「……ええ。そうですね。いっぱい食べられるようにしなければ」

「今日は結構食べてたよ。私も負けてられないね!」

「……そうですか。しっかり食べられていましたか」

「うん」


 ウィンドの台詞に宿る想いは、決してプリムに届くことはない。

 けれど、何も知らない彼女が語る言葉こそ真実だ。


 ルリちゃんは結構食べてたし、育ち盛りなんだから、いっぱい食べられるようにしておかないといけない。


 それが全てだ。


 手渡されたカトラリーで、ひとくち。


「……美味い」

「そりゃねー。天下のクリンブルーム家で不味いものなんか出せぬわーって、誰かさんが言ってたし」

「美味しいものを、ルリはいっぱい食べられているのですね」

「? うん、そう言ったよ? ……何の疑いが!?」

「いや、疑いなどでは。ただ、そう。嬉しくてね」


 呟くように、彼は言った。


 ルリにとっての6年を思えば、今の環境がどれほど幸せなことだろう。


 彼女が今こうして生きていられているのは、大勢の人々のお陰だ。

 そして。忘れてはならない。自分が彼女を養うべく、生きているからだ。


「これからも、頑張らねばなりませんな」

「お、用心棒の仕事だね。私も何かあれば付き合うよ」

「それは是非とも。宜しければ、手合わせでも」

「いーねー。あ、そろそろリヒターくんにも、鈍器相手の立ち回りをしっかりやらせないと」

「ざ、財務卿とやり合うのですか?」

「うん、殺す気でやっていいよ!」


 楽しそうに、天真爛漫にプリムは言う。

 そこにあるのは、みんなにもっと強くなって欲しいという純粋な望みと。――殺す気でやり合った2人の間で事故が起きそうになったとしても、自分なら止められるという強い自信だった。


「はっ。舐めるな小娘」

「あははっ。早く治せよおっさん!」


 笑い合う2人。

 その姿をフード越しに見やったパスタは、つまらなそうにもう一度視線を落とす。


 武人というのは単純で良い。

 敵対していた癖に、気付いた時には御覧の有り様だ。

 そしてまた、何の理由もなく殺し合うのだろう。


 パフォーマンスとして人の心に響かせるならまだ金にもなりそうだが、あいにくと自分はそんなおままごとに興味はない。


 せめて観客の前でやれ、などと思いながらパスタは――先ほどから進めていた作業――今回の事件の下手人を割り出した。


「なるほど、つまり……」


 そう、言いかけた時だった。




 部屋全体を襲う、痛烈な地響き。


 


「っ!?」


 邪魔なフードを取って、周囲を見渡すパスタ。


「こ、れは」


 警戒し、痛みを無視してベッド脇の鉄鐗を握るウィンド。


「――南の方だね。どんどん近づいてくる。来るよ。警備何してんの」


 目を閉じ、十字鎗を展開したプリムはそう告げる。


「警備は万全のはずよ! 今日も十数人は捕えたわ! よほどの化け物でもない限り――」

「――じゃあその余程の化け物ってことだよ。……来る!」



 小間使いのように控えていた少女が実はパスタ――ベアトリクスであったことに、少し驚くプリムであったがそこはそれ。


 小さなことに気取られている場合ではないと、十字鎗を構えて扉の方に向ける。


 その間にも、3回、4回と大きな揺れが部屋を――屋敷を揺るがす。


 ウィンドは立ち上がった。

 ゆらりとよろけながらも、おそらく狙われているのは己であろうと。

 そんな彼を庇うように、プリムは立つ。


 同時、視界を白く染め上げる破砕音。


 扉を打ち砕き、壁を粉々にした一撃は、今までで最も大きく部屋に響いた。

 飛来した瓦礫を打ち払うプリム。その先に現れるシルエットに彼女は目を眇めた。


「――右奥の部屋ってのは、ここで合ってるよな? 右ってのは、モチすけがフォークを持つ方の手だ。……あれ? 俺から見たら逆だな? ん?」

「やぁ、見たことのある顔じゃないか――イズナ」

「お? 俺の名を呼ぶやつぁ誰だ?」


 荒々しく背に流れるは、乾いた血のような色の長髪。


 その野生を思わせる獰猛な表情と、中背ながら筋肉質な身体つき。

 何より、片手に弄ぶ巨大な槌斧が、彼という男のトレードマーク。


「ウィンド・アースノートは女だったのか?」

「んなわけないでしょ。私のこと忘れたわけ?」

「お? おー! プリム! プリムじゃねえか!! こんなところで会うとは奇遇だな!」


 相対する2人。


「悪いことは言わないから引いてくれない?」

「いや、ダメだな。俺にはウィンド・アースノートがどんなヤツかは分からんが、この屋敷に居るってことは聞いてるんだ」

「……それで?」

「誰がそいつかはモチすけが後で見て分かるだろ。だから俺は」


 どん、と槌斧を地面に叩きつけ、言い放つ。


「ここに居る奴ら全員、ぶっ殺すだけだ」

「相変わらず馬鹿すぎる……」

「俺は馬鹿じゃねえ。だから、1人も逃がさねえ」


 そう言い放つ青年――イズナ。


 パスタは、小さく呟いた。


「……交渉は無理ね」


 この手の人間は、やる気になっている時に理性的な判断を求めることは出来ない。少しでも理解が追い付かないことを言われた瞬間、とりあえず最初からの目的を果たそうと動くだろう。

 馬鹿に付ける薬はないのだ。


 この場には、プリムとウィンド。

 プリムはともかく、ウィンドは――。


 その瞬間、彼女の判断は早かった。


「――きゃー、助けてー!」

「あ、ちょ、ベアトリクス!!!」


 悲鳴を上げて、なりふり構わず逃走した。


「信じらんない、ウィンドさんがこんな状況なのに逃げ出すなんて! 切り捨てるってこと!?」


 叫ぶプリムなど知ったことかとばかりに遁走する彼女だが、当然その速度は鈍足も良いところ。

 イズナが見逃すはずもない。すぐに彼女の前に立ちはだかる。


「――おい女」

「あ、あたし、こことは関係ない娼婦なんですぅ!」

「しょっ……」


 イズナの顔が赤くなった。

 そして、奥にいるおっさんを見て、寸胴鍋女を見て、おっさんを見て、おっさんに言う。


「お前正気か?」

「……人の好みに口を出すおつもりで?」

「えぇ……? まあ、いいや。俺も馬鹿じゃねえ。武人の心得もねえ、ベアトリクスって呼ばれたことも分かった。商会とも関係ねえなら、可哀想だから見逃してやる」

「ありがとうございますぅ!」


 ぺこぺこ頭を下げて、ベアトリクスは今度こそイズナの横を抜けて駆け出した。


 その光景を、憎しみの混じった瞳で見つめていたプリムは呟く。


「……いいの?」


 問いの先はウィンド。

 彼女の逃走を幇助するようなウィンドの言葉に対するそれに、彼は首を振った。


「ええ。会長は最善を取ったまで。――ここに居ては邪魔なだけだと」

「そんなに信じられるような人間とは、とても思えないけど」


 まあいいや、とプリムはウィンドの前に立つ。


「逃げられるタイミングがあったら、ウィンドさんも逃げて。――肉親の死ってのは、つらいんだよ」

「はい」


 ウィンドはろくに動けない。

 戦力としてはとても期待できない。

 だが、それはそれで、プリムにとっては悪い話ではなかった。


「この街に来て……私はかなり強くなったよ」


 す、と十字鎗をイズナに向ける。


「へぇ。そいつぁ楽しみだ。俺も最近は全力でぶつかれる相手が居なくてよぉ」


 槌斧を振るい、彼は笑う。



「――元【天下八閃】陸之太刀。常山十字の輝夜姫」

「――元【天下八閃】伍之太刀。爆砕金時」



 ぐ、と構えられるは闘いの剣。



「いざ」

「勝負だコラァ!!!」



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また言える場所がないのでここで、レビューせんきゅー!!!

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