あれ、コレ、詰んでね……?
俺は、
「では、また、いずれ。
現界なら、そうそう奴らも仕掛けてはこないと思いますが……御用がある際は、
いや、もう、呼ぶことはないです。
しかし、なにが起きてるんだ。
大通りに出て、駅前を歩きながら、俺は思考を巡らせる。
なぜ、俺が生きている。
間違いなく、俺は、爆発に巻き込まれて死んだ。避けようがなかった。死の瞬間、巡った走馬灯は、俺が『神』とランク付けした百合作品たちだった。
疑いようもなく、アレは、ひとりの百合好きの死だったのだ。
俺は、自動ドアを抜けて書店に入る。
それに、俺の魔力量が
なにが原因で、俺は生き返り、教主様と呼ばれ、魔力量が増えることになったのか。
書店から出た俺は、駅前のベンチに座り込む。
グズグズしている暇はない。一刻も早く、その原因を突き止めなければ。
焦燥感を覚えながら、俺は、購入してきた『た○えとどかぬ糸だとしても(4)』のページをめくり続ける。
クソッ……俺の身体は、どうなっちまったんだよ……!!
早くこの原因を調べなければと、俺は焦りを覚えながら書店に戻って『た○えとどかぬ糸だとしても(5)』を買ってくる。
ちくしょう……俺の身体よりも、この続きの方が気になる……!!
ベンチで読み終えた俺は、
1時間後。
俺は、ニコニコとしながら頷いた。
百合は、いずれ癌にも
連戦で疲れ果てた身体が、百合を欲していたのか……完全に
しかし、この世界の本屋は最高だな。
百合の美しさを再確認した代償として、俺は電車賃を失ってしまっていた。
ずっと、ベッドで眠りっぱなしで身体も
「え?」
凄まじい勢いで景色が流れ去って、驚愕で止まる。
振り向いて。
俺が走った跡を
おいおい、嘘だろ……魔力なんて、まともに
走るのは危険だと判断して、俺は、学園まで歩いていくことにする。
その道中で、偶然、スノウとすれ違った。
「よう、スノウ。
買い物? 今日の晩御飯、俺の分もある?」
「違いますよ、行方不明になった貴方の捜索に決まってるでしょ。晩御飯のことなんて、この二週間、まともに考えられてませんから。寝不足でお肌のコンディションは最悪、あのバカ主人、今頃、どこをほっつき歩いてるんだか」
その言葉通り、スノウの目の下には
「まぁ、あの人が死ぬわけがありませんが……」
腫れ上がった両目を擦って、彼女は鼻声でささやく。
「え? あれ、二週間も
「はぁ、なにをそんなに脳天気な。
まぁ、そういうわけで、私は忙しいので夕飯は自分で作ってください。さよなら」
「ん? もう、俺、見つかったんだから良いんじゃないの?
まぁ、いいや、おつかれ。また、後でな」
俺は、スノウと別れて――背後から、ドロップキックを
「とても痛い!!(感想)」
ずさぁっと、俺は、景気よく地面を滑る。
あれよあれよと、ひっくり返されて、スノウは俺の腹の上に馬乗りになった。両目を見開いた彼女は、俺の胸ぐらを掴んで引っ張る。
「生きてるなら、連絡くらいよこせっ!! ふざけんなふざけんな!! 死ね、死ね、死ねッ!!」
「すいませんすいません、
ぽこぽこ、殴られて。
彼女は、
「ふざけんなぁ……しね……しねぇ……!!」
「いや、本当は、死んでる筈なんだけどね……すいません、死に損ないまして……申し訳ない……」
「ふざけんな!! 死ぬなっ!! でも、死ね!!
死ぬな(ドンッ)死ね(カッ)死ね(カッ)死ぬな(ドンッ)!!」
理不尽の極みで、フルコンボだドン!!
数十分後。
ようやく、スノウは落ち着きを取り戻し、俺たちは並んで公園のベンチに腰掛ける。
「…………」
「あの……服の
「……離したら、またどこかに行くでしょ」
「行かない行かない。久しぶりのドクター○ッパーで、身体が耐えられずに即死しなければ、問題なく戻ってくるから」
「飲むな、そんなもん!!」
「えっ……正論、やめて……?」
ずびずび、鼻をすすりながら、スノウは俺の
仕方なく、従者同伴で自販機に向かう。
「スノウ、なに飲む?」
「……お茶」
「OK(ドクター○ッパー、連打)」
「いや、私、お茶って言いましたよね?」
受け取り口に出てきたドクター○ッパーを視て、俺は
「ば、バカな、俺の身体はどうしちまったんだ……他人にドクター○ッパーを押し付けるような人間である筈がないのに……怪我が原因か……?」
「はぁ、なら、それはご主人さまの分で。
次こそ、お茶、押してください」
「OK(ドクター○ッパー、連打)」
「ぶっ殺しますよ?」
よくよく考えてみれば、俺はスコア0なので、ドクター○ッパーしか買うことが出来なかった。
なので、コレは俺の責任ではなく、政府による圧政の一端と言えよう。
まぁ、一口飲めば、スノウもドクター○ッパーしか飲めない身体になるだろうし……なにも問題ないかな^^
俺たちは、飲み物片手に並んで座る。
「それで?」
「うん?」
「レクリエーション合宿で、なにがあったんですか?」
隠すわけにもいかないだろう。
俺が道連れ覚悟で爆死を選んだことは伏せて、俺は、スノウに
「また、新しい女が増えたんですか……」
「嘘でしょ? 俺の命
「冗談です。
まずは、今後の方針を立てる必要がありますね。正直、こんなにあっさりと帰ってくるとは思わなかったので、頭の中がスクランブル状態ですが……なるべく、レイ様たちには、ショックを与えないような形で再会しましょう」
「え? なんで? 普通に『帰ってきたよ~』で良いんじゃないの?」
スノウは、深い溜め息を
「御主人様は、いつも、見通しが甘すぎます。砂糖、吐きますよ。歯、溶け落ちちゃいますよ。女子たちが群がるわけですよ」
「だって、そんな、遊び人の男が二週間消えただけだろ? 女のところで、遊び
「もしかして、客観視の機能が
スノウは、言い聞かせるように説明を始める。
どうやら、レイは、俺が消えた原因は三条家にあると考えたらしい。
氷の仮面をかぶった彼女は、正統後継者としての地位をフル活用して、否定する三条家の面々を追い詰めていき、分家の連中は恐怖で夜も眠れない
「もう、アレは、ヤクザ同士の抗争ですよ。
この二週間、私は、目も口も笑ってないレイ様の横で、人間の醜さと薄汚さ、そして権力の恐ろしさを
予想外の事態に凍りついた俺は、続いて、耳を疑うような話を聞かされる。
「それに、ラピス様は、
「は? なんで?」
「ヒイロ様が行方不明になったからに決まってるでしょ。
日本にいれば、ヒイロ様のことを思い出すから、もう
あれ……俺がいない間に、月檻と進展してるかなとか思ってたけど……想像以上に、やばい事態になってない……?
ゆっくりと、冷や汗が、俺の額を垂れ落ちてゆく。
「で?
「ふたりでタッグを組んで、魔神教の日本支部を片っ端から
あ、アカン……気軽に死んだら、想像以上にやばいことになってる……し、シナリオがメタメタにぶっ壊されて原型がない……は、早く修正しなければ、百合どころじゃなくなる……なんで、たかがヒイロが、そこまで重要な地位を
「す、スノウさん、ご相談が」
「無理ですよ。
貴方が生存している証拠を彼女たちに突きつけて、それから失踪するつもりでしょう? 私は御主人様に付いていくつもりなので、別にソレはソレで構いませんが、彼女たちだってこの世の果てまで探しに来ますよ」
僕はね、百合の味方になりたかったんだ(辞世の句)。
絶望した俺は、無言で立ち上がる。
「どこへ?」
「と、トイレ……」
俺は、スノウから離れて、公園の噴水に腰掛ける。
「…………」
たすけて(四文字
ど、どうすれば良い……レイたちに俺が生きていることを普通に伝えれば……本当に取り返しがつかなくなる気がする……謎の好感度UPが起こるような気が……俺の自殺や失踪が、シナリオの流れをめちゃくちゃにする可能性があるとすれば、気軽にその選択肢を選ぶわけにもいかなくなった……。
逃げられない。
かと言って、正面から立ち向かうわけにもいかない。
コレは、もう、詰ん――
「お困りのようだね、三条燈色くん」
勢いよく、顔を上げる。
ベージュ色のトレンチコートが、風で揺れて。
「僕ならば、この
俺が殺した
「どうす――」
「死ね(
「だろうね(直撃)」
九鬼正宗を額に受けて、アルスハリヤは後ろに倒れた。