常闇の森へ続く道
常闇の森に続く、細い細い一本道
森の獣たちも寝静まる、新月の真夜中にそのまま闇に溶け込めそうな真っ黒なローブを身に纏った一人の男が歩いていた。
「今宵もまた、見つかりませんでしたねぇ・・・一体何処にあるのやら」
男は、ため息と共にその場に座り込み、がっくりと項垂れた。
「そんな所に座り込んで!もう、汚れちゃうじゃない!一体誰が洗濯すると思ってるの!」
男の腹の辺りから、怒りに満ちた妙齢の女性の声が静かな闇夜に響き渡る。
「一体誰がって・・・レティに指示された、僕が洗濯するんですよね。・・・・・・いつもの如く」
バサリと男のローブが翻り、その間から全長30cm程のビスクドールが転がり出てきた。闇夜にも鮮やかな純白のドレスを着た、金髪碧眼の美しい人形。むくりと起き上がると、仁王立ちになり、小さな右手に持った扇子を男にびしりと向け、ニッコリと微笑んだ。
「何か問題でもありまして?さすがの私でも、この姿では洗濯など出来ませんことよ?」
トドメと言わんばかりに、更にニッコリと微笑み、ちょこんと首を傾げて男を見上げた。
その愛らしい姿を男は何とも言い難い表情で見つめ、更に深いため息をつくと目の前に仁王立ちになっているビスクドールをひょいと持ち上げ、己の肩に優しく座らせた。
「そうですね、僕が悪かったです。レティのその姿では、洗濯なんて出来ませんよね」
男は素直に謝ると、悲しそうな表情になり優しい手つきで、己の肩に座らせた美しいビスクドールの頭を撫でた。
ビスクドールも男の手の優しさにそっと目を閉じ、スリッと猫のように擦り寄った。
「私も悪かったわ。ごめんなさい、ラル」
小さな声で、囁くように謝るビスクドールを更に優しい手つきで撫でると、男はゆっくりと立ち上がった。
「さて、今宵はここまでにして、家に帰りますかね」
ニコッと笑みを浮かべ、優しい目でビスクドールを見つめる。ビスクドールもそれに答えるようにふわりと笑みを浮かべると、こくりと頷いて同意を示す。
「ラル、私たちの家に帰りましょう」
男はゆっくりと常闇の森に向かって歩き出す。美しいビスクドールをその肩に乗せて・・・
その姿を夜空に浮かぶ星たちだけが見ていた。
初めて投稿してみました。なんとなく、急に書きたくなったお話です。至らなさが満載ですが、読んで下さった皆様に感謝です。