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【第1話】魔神王

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この夢の設定をもう少し知りたかったので、イケメン執事ブライト君に色々と質問をぶつけてみた





名前:カイゼル・ウォーカー・イシュターク


年齢:10427歳・独身


職業:魔神王


特技:何でも出来る


趣味:読書・執筆活動





職業が魔神王って事はさておき…



歳が10427歳・独身って、まさか童貞って事はないだろうな?



だけどもし童貞なら、特技:何でも出来るって所にも納得がいく



魔法使いも真っ青になる童貞歴だ



そりゃ、何でも出来る様になるわ



10427年間独身で、趣味が読書・執筆活動とか、因みにこの世界には星とか宇宙とか言う概念はない様だ



この世界は、天上界・人間界・魔界の3つの世界に別れており



天上界には神や天使、人間界には人間と亜人、魔界には魔人と魔獣が住んでいるらしい



天上界は基本的に人間界や魔界には不干渉で、人間界が魔界に現在侵攻中との事



3年前に人間界に現れた勇者が『魔人・魔獣を滅ぼし、地上に恒久的な平和を!』と言い出し、パーティーメンバーと魔界に侵攻を開始



つい先頃勇者達は魔王を倒し、今は所属する国の軍隊と一緒に魔獣の掃討作戦を行なっている最中との事



結論、物凄いファンタジーな夢の設定だった



「つまり、俺はRPGで言う所の魔王を倒した後に現れる裏ステージのラスボスみたいな感じか」


そう言えば昔やったRPGは、通常ストーリーの攻略よりも、裏ステージの方が攻略に時間がかかったな…



「あーるぴーじー??らすぼす??…それが何かはわかりませんが、魔神王様こそ魔界全ての王にございまする!」



どうやら俺はこの夢の中では勇者の最後の敵の様だ



そして、勇者が魔王を倒したって事は…



「もうじき勇者達がここに攻めてくると言う訳ね」



夢の中とはいえ、中々めんどくさい



携帯小説の中に出てくる王道系イケメン勇者だったらどうしよう



夢の中だし、顔面ボコボコにしても許されるよね?



「いえ、それはあり得ません」


「何で?魔王倒したんだろ?」



ブライト君、君の言ってる意味がわからん



「人間界で言われている魔王など、第1階層の管理者でしかありませんから」


「は?」



意味がよくわからなかったので、ブライト君にもう少し詳しく話を聞くと魔界は複数の階層から出来ているのだそうだ





最深部層:魔神王の居城←今ココ


第6階層:魔龍族の居住階層


第5階層:魔導族の居住階層


第4階層:魔海族の居住階層


第3階層:魔獣族の居住階層


第2階層:魔人族の居住階層


第1階層:各階層の環境では生きられない魔人・魔獣の居住階層





この様に全部で7つの階層に別れており、第2~6階層には各部族を纏める王がいるとの事だ



ただ、第2~6階層の魔人や魔獣の中には、その階層の自然環境の中では生きられない者もおり、そういった者が第1階層で生きており



人間界で『魔王』と呼ばれる魔人は、その第1階層を管理している責任者に過ぎず、魔界全体から見れば弱者の部類に入るとの事



「つまり、勇者達が倒したのは他の階層じゃ生きられない弱い魔人や魔獣のトップって事か?」


「左様でございます。第1階層の管理者も他の階層に行けば恐らく1日と持たず死んでしまうでしょう。」



むしろ第2階層以下はどんな過酷な環境なのか少し気になる



「話が少し長くなってしまいましたが、それ故に第1階層の管理者を討伐された所で、魔界の運営には然程影響はございません!」



自信満々に言い切るブライト君



あれ?でも、待てよ…



「でも、第2~6階層の環境じゃ生きていけない魔人や魔獣もいるんだろ?第1階層も必要じゃないのか?」



王道系イケメン勇者なら『くっ、許せ…』とか言いながらズバズバ殺していきそう



「当然第1階層でしか生きられない魔人や魔獣がいる以上、第1階層の奪還は行われるでしょう。第2階層を束ねる《魔人王》が、第2階層の魔人の中から次の管理者を選定している筈です」



そりゃ当然奪還はするよなぁ…



あれ、でも待てよ?



「次の管理者は第2階層から選ぶのか?第1階層からではなく?」

「はい。第1階層で1番強かったのが前管理者ですからね。次の管理者を第1階層から選んでも奪還は難しいでしょうから」



なるほど、そう言われてみればそうか



「因みに前管理者に比べたら、次の管理者の強さってどんなもんなんだ?」


「恐らく10倍以上は強いでしょうね」



強さのインフレが凄まじいな



漫画によくある話だが、あんまり敵を強くし過ぎちゃうと際限がなくなって、ストーリーが面白くなくなっちゃうんだぞ



「第1階層の管理者の任命権は《魔人王》にあります。勇者達に倒される様な管理者を選んだ責任は取らなければなりません」


部下の失敗は上司の責任か…



うちの居酒屋の店長は、バイトの失敗を自分の部下の社員に擦り付けてたな



よくよく考えたらクズみたいな店長だ



おっと、ついつい愚痴が出てしまった



夢の中でまで愚痴とか働き過ぎでストレス溜まってるのかな



「故に《魔人王》の直属の部下を第1階層の管理者に任命し、奪還にあたる流れになるでしょう。もしかしたら《魔人王》が直接奪還に乗り出すかも知れません」


「因みに《魔人王》の強さは前管理者に比べたらどの位?」


「100倍は強いでしょうね」



どう考えても勇者に勝ち目ないだろ、それは



「ふと思ったんだが、何で勇者達は魔界に侵攻してくるんだ?」


やっぱり第1階層の魔人や魔獣が街とか襲ったりしたのかねぇ…



「人間界はそもそも資源が乏しく、魔界から略奪でもしないと成り立たない世界なんです」



え?



「人間界で安定して採掘出来る鉱物資源は鉄しかなく、人間界で流通している金・銀・銅の大半は過去に魔界の鉱山から略奪した物です」



はい?



「国宝級の武器や防具の作成に利用される“アダマンタイト”と言われる魔鉱石は人間界では一切取れず、これも過去に魔界の鉱山から略奪された物を利用して作られています」



おいおい…



「因みに、今から約1000年程前に人間界史上最強と言われている勇者が第2階層まで侵攻して来まして、その時に略奪されたオリハルコンによって作られた武器・防具は、今でも勇者専用の装備として使われています」



勇者って言うより盗賊や山賊の方がお似合いじゃねぇか



「略奪された物は鉱山資源ばかりではありません。魔獣や魔草ですら略奪されております」



人間界と魔界の歴史は…



数十年に1度現れる勇者とその仲間達による魔界の第1階層への侵攻・管理者討伐→魔界の資源の略奪

魔人による第1階層の奪還・新たな管理者を配置

勇者とその仲間達による魔界の第1階層への侵攻・管理者討伐→魔界の資源の略奪

これの繰り返しらしい



人間界が危機的な資源不足に陥った時には決まって勇者が現れるらしい



なんて都合の良い存在なんだ、勇者



「魔界と人間界の歴史は大体わかった」



夢の中の勇者とそのパーティーメンバーは悪人ばかりの様だ



「さっきの話で気になったのは、第2階層まで侵攻したって言う史上最強の勇者の事だ」


「あぁ、彼ですか…当時の第1階層の管理者を討伐後、何度か第2階層にある迷宮にまで侵攻して来ましてね?その迷宮にあった“オリハルコン”や“アダマンタイト”を結構な量持ち帰って行きましたよ」



まぁ、RPGの勇者も泥棒も真っ青な事を平気でするしな



人の家のタンスや棚を勝手に開けてお金やアイテム持って行くなんて、普通に考えたら泥棒である



「因みにその勇者の末路は?」


「第2階層の迷宮に何度も侵攻された当時の《魔人王》の逆鱗に触れ、《魔人王》自ら迷宮に出向いて勇者をなぶり殺しにしてましたね」



勇者と言う名の泥棒さん、どんまい



「その後、当時の《魔人王》により第1階層の奪還の責任者に任じられたのが、若かりし頃の今の《魔人王》です」


「へぇ~!」


「奪還完了後、正式に第1階層の管理者に任じられた今の《魔人王》は、歴代最長となる400年間、勇者の魔界侵攻を食い止めました」



今の《魔人王》凄いじゃん



「その功績で前《魔人王》から副官に指名され、第2階層に戻り、つい70年程前に《魔人王》を引き継ぎ、今は第2階層を治めております」


なるほどね



「ブライト君、長々と説明ありがとう。《魔人王》もそうだが、各階層の王がどんな奴等か1度会ってみたいものだな」



もう夢を見始めて結構な時間がたった



会う前に目も覚めるだろう



「では、2週間後に全階層の王に召集をかけます。《魔人王》からは第1階層の奪還計画の進捗状況を聞きたいですし、何より魔神王様が記憶を無くされた事を各階層の王にはお伝えしなければいけませんからね」


「それは伝えても問題ないのか?」


「魔神王様への忠誠心は、各階層の王全員計り知れないものがありますのでご安心を!むしろ伝えなかった方が後々問題になりそうです」


「そうか、ではブライト君頼んだぞ!」


「はっ!」



そう言って部屋を出ていくブライト君



全くよく出来た夢だよ、この夢は…



そんな事を思いながらベッドから抜け出し、部屋を探索する



「痛っ!」



ベッドの角に足をぶつけてしまった様だ



………え、痛い?




夢の筈だ、なのに今の痛みでも目が覚めない



「ぇ、ちょっと待って、もしかしてこれ…」



夢だ夢だと思ってたけど…



「…現実?」


そう思った瞬間、部屋の中にある鏡を見る



そこには見慣れた自分の顔は写っていなかった



「…誰だよ、このイケメンは?」



鏡の中に写るのはブライト君よりもイケメン…な俺?



「こんだけイケメンならファンタジーな世界で生きてくのもありだな…」



うん



「って、んな訳あるかぁぁぁぁぁぁ!」

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