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「昂輝さんって何歳なんですか? 」

 由希の問いかけに昂輝は己の指を何度もおりながらいくつだったかと数えてうんと一人でうなずく。

「たしか六十を超えたはず…… 大和に比べたら年は取ってるけど、それでも若いほうだけどな」

「てっきり大和さんと同じ年かと思いました」

「ま、半分は人の血が混じっているとはいえ犬神だからな。 そもそも妖怪たちは見た目はほとんど関係ない。 その一番わかりやすいのが黒猫だろ? あいつは大之助さんの祖父のころからと考えたら何百と生きているが、あの容姿だ」

 昂輝の言葉に最もと由希は心の中で納得をするように手を打つ由希の姿に昂輝はくつくつと笑い声をもらした。 初めてみる昂輝の笑い顔に由希はとても惹かれた。

 怒っているか不機嫌そうな表情しか見たことない由希にとってはとても新鮮で、とてもきれいに見えた。 まっすぐに見つめる由希の視線に気がついた昂輝は口を何度も開いては閉じてを繰り返して頬を真っ赤に染め、由希の顔を押した。

「そんなに見んな」

「すみません、昂輝さんが笑った姿を始めてみたから」

 由希の頭を叩いた昂輝は浴室からでると、そそくさと風呂場からでていく。

 置いていかれた由希は頭だけをお湯で洗い流して昂輝のもとへ。 すでに衣服を着ていた昂輝に置いていかれないように由希は服を着ると居間へ戻った。

「そういえば由希も来るか? 」

 台所にあったお菓子を少しだけつまみ食いしようかと考えていた由希の背中に昂輝は声をかけた。 声をかけられたことで思わず声をもらした由希の姿に昂輝はまた笑う。

「なに勝手に食べてんの」

 大之助の声も聞こえて由希はあっと声をもらす前に大之助に捕まった。 お仕置きと称してくすぐられて腹をよじらせる由希の姿を面白いと笑う昂輝にやれやれと大之助は由希を解放する。

「大之助さん、由希も連れて行っていいですか? 」

 昂輝の言葉に大之助はふうんと答えただけで由希を肩に抱えた。 

「別にいいけど、とりあえず墨には報告しておこうかな」

 はい、と昂輝に由希を手渡した大之助は電話をするために席を外した。 息継ぎを繰り返す由希の姿にいたずら心をくすぐられた昂輝はゆっくりと由希を下におろす。

「さて」

 そんな声と指を動かす昂輝の姿。 始まった第二回戦に由希が悲鳴をあげた。

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