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「ごめん、まだ体を変化させることに慣れてなくて…… ちょっとこのままでいい? 慣れたらすぐに別の姿に変化させるからさ」
「それはいいけど…… 本当にすごいね。 まるで双子の兄弟ができたみたい」
頬に触れる由希の手が冷たいと付喪神は身を震わせた。 くすりと笑う付喪神につられて由希もくしゃと顔を歪ませて笑う。 その姿を何度も手を閉じたり開いたりしながら見つめている辰美の姿がある。
時折、こくりと唾を飲みこんでは息を吐きだす。
そんな姿に気がつかない二人はすごいと二人で盛り上がっていた。
「これからどうするの? 」
由希の問いかけに付喪神はうんと唸り声をもらして首をかしげる。
「どうすればいいんだろ…… 初めてこの姿になったばかりだからどうすればいいのかもわからなくて」
「じゃあ施設に入ったほうが妥当じゃない? 」
辰美の問いかけにああと由希は手を叩いた。
意味がわからない二人の言葉にどういうことだと付喪神は問う。
「最近では人や付喪神はとても珍しいものとなってるんだ。 妖怪や妖たちに捕まるとろくなことにならないということで保護施設が少し前に出来上がってそこに集まっているときく」
「僕も墨や百目鬼さんがいなかったらその保護施設にいっていたと思う」
「そんなところがあるのか! それならそこにしばらく身をよせようかな」
「うん、そこだったら政府が指定する施設だからうかつには妖怪たちは手をだせないし」
辰美の言葉に納得した付喪神はそこに行くと決めた。 己の膝を叩いて立ち上がった付喪神は扉に手をかけたところで二人のほうへ振り返る。
「そこってどうやっていくんだ? 」
「そういえば僕も知らない…… 」
二人してうんうんと唸り声をもらす。
「俺が連れていこうか? 」
辰美の言葉に付喪神は瞳を輝かせた。 辰美の目の前までくると腕を強く握りしめて、辰美を見上げる。 その姿に辰美は思わず唇を舐めそうになり、すぐにそぶりを隠した。
「ありがたい! ぜひともお願い! 」
「じゃあ行こうか。 早いほうがいいし」
付喪神の腕を辰美は引いていく。 ぎゅうと強く握られた辰美の手のひらに付喪神は顔を歪めるもすぐにそのあとを追った。
「気をつけてね」
由希に手を振った二人は外へと出ていった。
「ここからいくと近道だから」
辰美の目の前に赤い炎の輪が宙に浮かび上がった。 サーカスのライオンがくぐる炎の輪のような形をしたそれを辰美は指さす。
「え、これ熱くないのか? 」
「大丈夫だよ、俺がつくったんだから」
辰美の言葉にうんと声をもらしつつ、付喪神は輪の中に入っていく。 それを見送った辰美は己も輪の中へと身をくぐらせる。 その口元に笑みを浮かべながら。