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「なにをしやがる、このくそ猫が!! 」
怒り心頭といった男が店の中に大股で入ってくるとそばに置いていたバケツを蹴飛ばした。
壁に当たり、大きな音をたてると何事と大之助がやってくる。
怒っている男とレジの近くに腰を下ろす由希とその上にいる黒猫。 なにがあったのか察した大之助だったが興味がないと由希のそばにお菓子の入った容器を置いた。
「これも出来たから並べておいて。 少しくらいなら食べてもいいから」
「あ、本当ですか? やった」
男のことはそっちのけで話す2人にしびれを切らせた男がずかずかと無遠慮に入ってくる。
「無視すんなや! いいから来い!」
由希の腕をつかもうとした男だったが、大之助の右足と黒猫の左足が男の腹部に食いこむ。
男がなにかを言う前に入口の外へと旅立っていった。
「うるさいんだけど」
由希の頭を撫でた大之助は店の外へといくと、ゆっくり入口を閉める。
どかっばきっぐしゃ、ばきり。
そんな音が耳に入ると由希は体をぶるりと震わせた。
何事もなくかえってきた大之助はでさぁと話の先を続けた。
「そういえば百目鬼から連絡があったんだけど、今日は由希を泊めてほしいって言われたんだけど」
「あ、百目鬼さん来るのかな? なにも着替えとか持ってきてないけど」
「俺の服でいいんじゃない? 大和の服もあるから好きなの着てもらって構わないし」
「ありがとうございます、じゃあ泊まろっと。 黒猫と一緒に寝ようかな」
由希の言葉に黒猫はにゃーと甘い声をもらして、由希に体を擦りつけた。