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「どういうことですか」
己に体を擦りよせてくる人の姿に気分を良くした男はその頭をゆっくりと撫でた。 それが気持ちがいいのか男に顔を近づけて、もっとと由希は次をねだる。
その姿に舌を打った辰美は由希を男から引き剥がすと由希の目を手のひらで覆った。
「ちょっとちょっかいをかけてみたくなって、してみた」
悪い悪いと男は笑った。
その姿にため息をこぼした昂輝は男の頭をぱしりといい音で叩く。 男と引き離されたことによる不機嫌になった由希は辰美の胸を強く押す。 嫌だと声をもらした幼馴染の姿に落ち着けと声をかけたが納得のいかない由希。
「俺は筆の付喪神でな。 名前のわかるやつをちょっとの間だけ操ることができるのさ」
不満の表情を浮かべた由希は辰美を押しのけて男を抱きしめた。 男は己の唇をなでながら由希へと視線を送り、ちゅっと音を鳴らす。
吸い寄せられるようにそこへと口づけた由希の姿に舌を打った。
「ふざけるな! 」
男から由希を引き剥がした辰美は由希をつれて外へとでていく。
「あー…… まずかったか」
「まあな」
男の問いかけに昂輝は呆れたように答えた。
「放せって」
由希の問いかけを無視して辰美はその腕を引いていく。
男と引き剥がされたばかりか、無理矢理つれていこうとしている辰美の姿に由希はいらだっていた。 つかまれた腕は離されることは叶わず。 ただ力で引きずられるだけ。
周りでは何事だと好奇な目を向ける者たち。
引きずられているのが人だとわかるとおこぼれを預かろうとついてくる者たちをにらみつけて辰美はおっぱらう。
「僕はあの人のところに戻るから、離してってば」
「うるさい」
辰美の瞳が赤く染まった。
辰美が指を上から下におろすと空間が引き裂かれる。 そこへと由希を押しこんだ。 ほかに誰も入ってこられないように身をすべりこませた辰美はさっさとその空間を閉じる。
「由希、口を開け」
「なんでそんなこと」
由希をその場に倒した辰美は開かれた口に己を合わせる。 逃げようと肩を叩く由希の腕を頭上で抑えつけて深く口づける。 息苦しさに身を揺する由希から一度口を離すと、由希は激しく咳きこんだ。