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「じゃあもし大和さんが刻印を刻んだ場合、どんな感じになるのかなぁ」
「たぶんだけど、カラスだから黒い翼とかが浮かびそうじゃない? 首じゃなくて肩とか二の腕とか、もしくは背中とかについていると思うけども」
辰美の問いかけに昂輝の頬は次第に頬が赤く染まっていく。
己の首をなでて、後頭部に指を這わせる。 二人から顔を背けて先に歩いていった。 図星だったのだろうかと二人で顔を見合わせてその背中を追う。
「どこに行きますか? 」
「…… ゲーセン」
それだけをつぶやくと頬をほんのりと赤く染めたままの昂輝は由希の腕をひく。
その姿にため息をこぼした辰美は二人についていく。 今日は二人きりで出かける予定だったのに、と心の中で舌を打ちつつ追いかけた。
「よう、昂輝じゃないか」
ゲームセンター。
慣れたように店の中に入り、吸いこまれるように格闘ゲームの椅子に座った昂輝に一人の男が声をかけてくる。 腰まで届くような長い黒の髪に、墨を塗りたくったようなまっ黒の着物。
辰美よりも頭ひとつ分も大きい男は昂輝に手を振ると、当たり前のように隣に腰をおろした。
その姿におうとだけ返事をした昂輝はお金を投入した。
「そっちは誰だ? 」
どうしたものかと辰美と顔を見合わせた由希に男は視線を送った。 ちらりと舌を覗かせた男の舌が二つに分かれている。 それぞれ意思をもったようにちろりちろりと動き回る舌たちに由希は思わず辰美の二の腕をつかんだ。
「驚かせて悪い。 昂輝とたまにここで会ってはゲームをしているんだ。 名前は? 」
男はにたりと笑みを浮かべた。 なんたが気持ちが悪い。
笑い、名を誘導する。 信用してもいいものだろうか?
「僕は、由希といいます」
名を名乗ったとき、そうかと男は笑った。
と同時に男の右手に一本の黒い筆が現れる。 男はそれで宙に由希の名を記す。
目を細めた辰美が由希を懐にしまいこむのと男が由希の名を呼ぶのは同時だった。
「あっ」
昂輝が声を漏らした。
「由希、おいで」
男が由希を手招きする。 辰美が意味もわからず首をかしげるも由希はただ一言だけはい、と返事をかえす。
己をしまいこむ辰美の腕を振り払った由希。 驚いた辰美をよそに由希は男の手に引かれてその懐へと体を預ける。 うっとりとした表情を浮かべて男の頬に口づけた。