独占欲or保護欲?
終わりを告げるチャイムが学校中に鳴り響いた。
それと同時に終わったと安堵の息をもらす生徒たちの声が由希の耳に入ってくる。 由希自身も口にはださずともやっと学校が終わったと肩の力を抜いた。
今日は辰美とたまにはどこかにでかけようとかと予定をたてている。
カラオケかゲームセンターか。 それとも体を動かすためにスポーツセンターか。
最近はアルバイトばかりしていたせいか、辰美に遊びたいと言われたのはついこないだのこと。 由希としては辰美をないがしろにしていたつもりはなかったのだが。
「最近、由希と遊べていなくてさみしい」
唯一の親友である辰美にそう言われて由希はこれはしまったと困った表情を浮かべた。
じゃあ今度遊ぼうと約束して、この日を迎えている。
「由希、どこにいこうか」
荷物をまとめていた由希のところに満面の笑みを浮かべた辰美が寄ってきた。
いつの間にか片付けを終えたのか、すでにまとめた荷物をまとめた鞄を持ってきていた辰美の姿に早いなと思わずぼやいた。
「カラオケ…… は前にえらい目にあったからなぁ。 どうしよう」
前に店員に襲われたことを思い出した由希は思わず体を震わせた。
うんうんと考える由希の姿に辰美はくすくすと笑う。 なに? と聞いても辰美は別にと返すだけで答えは返ってこない。
その代わりに由希の頭を優しくなでる手が伸びてくる。
「歩きながら考えようか」
辰美の提案に由希はうなずいた。
鞄を抱えてさぁ学校をでようとした由希たちだったが、廊下から響いてくる声に動きが止まった。 なんとなく争っているような声が響いている。
なにを争っているのか、わからない由希たちは顔を見合わせた。
「この声って大和さんと昂輝さんかな…… 」
「なんとなく、こっちに来ている気がするけど」
辰美の考えは当たった。
扉が壊れるのではないかというほど激しく開かれた扉の先に立っていたのは生徒会長とその親友。 言い合いをしながら由希たちのところへとやってくる。
一体なにごとだろうか?
由希が問う前に腕を強く引かれて昂輝の胸の中へと飛びこんだ。
「いい加減しつけぇ! てめぇは俺の親か! 」
「だから! 一人だと危ないと心配しているんだ! この前みたいになにかあったらどうするんだ! 」
「あの…… 」
由希を挟んでわめきあう二匹の獣。
内容からして一人で帰ろうとした昂輝を大和が止めているというところ。 一人で帰る、だめだ、と言い合いをしているところにつかまってしまったのだ。
「じゃあ由希たちと帰りゃいいだろ! 早く生徒会にいけ! 」
「お前を家に送り届けてまた戻ってくればいいから、帰るぞ」
どちらも一歩も引かない。